第21話 エズの町を救え! 2 大森林の魔物達
当日になり僕はアリスを連れて大森林の前に向かう。
「お、きたみたいだな」
入り口辺りに集団が見える。
近寄ると剣を持った男性が声をかけて来る。
今回同行する冒険者達だろう。
「僕が最後ですか? 」
「いや。氷炎の奴らがまだだ」
「女性は支度が遅いと聞きますがこういう時は勘弁していただきたいですね」
剣を持った男性と眼鏡のひょろっとした男性が呆れ口調で言う。
二人に苦笑いを返しながらそれぞれ自己紹介を。
「俺はCランク冒険者パーティー「七彩の剣」のリーダー「リーグルド」だ」
「私はCランク冒険者パーティー「迷宮の地図」のリーダー「ライル」と申します。今回はよろしくお願いします」
細身な剣士がリーグルドでひょろっとしている学者っぽいのがライルか。
僕とアリスも挨拶して彼らのパーティーの事を聞くことに。
ライル達五人は記録係。
探知や探索、罠解除などを得意として状況の把握に努めるとの事。
彼らは学者としても働いているみたいで、今回のように異常事態が起こると真っ先に調査に向かうらしい。
「このパーティーには戦闘職は多くありません。しかし単独でCランク冒険者並みの動きは出来ると自負しておりますので後ろの事は、お気遣い無用でございます」
ライルに続いてリーグルドが説明を始めてくれる。
リーグルド達は前衛三人で構成されたパーティー。
正直なところ挨拶されるまでリーグルドの後ろにいるマッチョがリーダーだと思ったけど違うみたい。
けれど三人とも戦い方は違い組み合わせ次第で変幻自在な動きが出来るようだ。
「ま。俺達はこんな所だ。しかし……大丈夫か? 」
「大丈夫、とは? 」
「いやさ。確かにBランク冒険者なんだろう。けど貴族の坊ちゃんが……さ」
「何を言っているのですかリーグルド。彼は単独で魔物の異常増殖を単騎で落としています。それも一つや二つではありません」
「マジか! 」
リーグルドが目を見開いて僕の方を見る。
普通に考えたらリーグルドの感性が正しい。
嘘のように聞こえる実績の方がおかしい。
「お待たせしました! 」
リーグルドとライルと話していると女性の声が聞こえてくる。
振り返ると三人の魔法使い風の女性が走ってきていた。
「氷炎です! 魔法使いパーティー「氷炎」のヒョウカと申します。この度は遅れて申しわけ――」
「全くだ」
「――謝っている途中に口を挟まないでもらえないでしょうか? リーグルド」
ヒョウカがリーグルドをギロリと睨む。
「なんだ? 俺達に下げる頭は無いってか? 」
「ライルさんも申し訳ありません」
「いえ。詳細な集合時間を設定していなかったギルマスにも非はあります。お気になさらず」
「これが大人です。リーグルド」
「このっ! 」
リーグルドが憤慨した様子で怒る。
が大きく息を吐いて森を見る。
「……こんなことをしている暇はねぇな。行こうぜ」
幸先が不安だけど気を引き締めて僕達は森の中へ入っていった。
★
「今までの非じゃないね……けどっ! 」
「ギャ! 」
シルバーウルフを蹴とばしマジックソードで切り上げて呟く。
その瞬間に迫って来る他のウルフをバックステップで避けて回転斬りで倒す。
足音がする。
まだ奥から来ている。
すぐさま木の枝に飛び乗り視覚強化でシルバーウルフの集団を発見する。
「魔弾の雨」
ドドドドドドドド!!!
木々の上に三つほど大きな魔法陣を展開させる。
シルバーウルフの群れが通ると魔弾の雨が降り注ぐ。
同時にシルバーウルフ達の悲鳴が森に響く。
森に入り本当に情報通りなのか慎重になって先手を譲っていたけど、情報通りと言うことがわかれば先手を譲る必要はない。
外に出ようとする魔物は全て倒す!
「アリス。そっちにオークの軍勢が向かってる」
アリスも探知や索敵を行える。
けれど僕やマリーの魔力感知やフレイナの気配感知には遠く及ばない。
知ったものを伝える必要がある。
だからこうして声を上げて教えている。
「わかったのですよ! 」
「手伝おうか? 」
「いえそれには及ばないのです! お兄ちゃんは他の魔物さんをお願いするのです! 」
「了解」
とはいったものの少し気になる。
彼女の力は非常に強力だ。
しかし、見た目幼い子一人に任せるというのは少し気が引けるもので。
一先ず周りに敵がいないか確認する。
森に入った頃に感じた幾つもの魔物のグループは五分の一を切っている。
よし!
少しアリスの様子を見に行くとしようか。
「おっきなヒトなのです」
僕がアリスを発見すると、十体程のオークの集団を前にいつもの様子でゆっくりと歩いていた。
オークを見上げるその様子は無邪気な女の子。
知らない人がこの様子を見ると悲鳴を上げるかもしれない。
「でもでも悪いヒトなので倒さないといけないのです! 」
「ブモ? 」
アリスが鍵を握っている。
一つじゃない。十個以上は持っているね。
オーク達はやっとアリスの存在に気が付いたのか少し混乱しているみたい。
「いつもフレイナが先手必勝って言っているのです」
何をするつもりだと構えているとアリスが手に持っている鍵が燃え始めた。
「その命に終焉を」
唱えると全て鍵が燃え尽きる。
すると「ドン!!! 」と大きな音を立ててオーク達が絶命した。
……なにこれ?
手に持っている鍵が燃えたと思ったらオーク達が死んでいる。
まさかあの鍵はオーク達の命そのものだったのか?!
一撃必殺という言葉がふさわしい技だ。
しかも相手に気付かれず発動できるというのも恐ろしい。
本当に味方でよかったとおもうね。
「あとの悪いヒトを倒すのです! 」
僕がドン引きしている間にアリスは次の標的を見つけに歩いて行く。
その後もアリス無双が続いて僕達は他のパーティーの所まで戻った。
★
アルフレッドとアリスが単独で魔物を殲滅している頃、着いて来たパーティーは迫りくる魔物達に苦戦していた。
「多すぎだ」
「リーグルド。一旦下がれ! 」
後ろから盾役の男性が声をかける。
リーグルドはその言葉と共に後ろに下がると盾役の男と場所を入れ替わる。
「次は俺だ。剛剣! 」
大剣を持つマッチョな剣士が一撃を放つとゴブリン達が消し飛んだ。
先程の技は体力を多く使うようだ。
大剣の男が息を切らす。
リーグルドは二人に声をかけて少し下がる。
「はーーーーはっは! 敵がわんじゃかいるぜ! 」
「火球。……全くヒョウカは」
「毎回だが物凄い変わりようだな。火炎刃! 」
「これだから結婚が出来ないんだよ」
「うるせぇ! そんな事関係ねぇ。今は血に汗に沸き立つ戦いを楽しむだけだろ? 」
リーグルド達が後退した奥から魔物がやってきていた。
がそれを氷炎が焼いていく。
リーグルド達もドン引きな性格の変わりよう。
氷炎というのは彼女達が火属性魔法と氷属性魔法を得意としていることから名付けられた。
しかしそのもう一つの意味を他の者は知らない。
リーダー「ヒョウカ」の二面性。
これが彼女達「氷炎」の名前の由来だった。
「さぁ熱い戦いの後はクールダウンだ。吹雪の夜」
一瞬にしてゴブリンの群れが凍り付く。
周囲の温度が一気に下がる。
この場での戦いを終えた頃、アルフレッドとアリスが到着した。
★
「これで全部みたいだな」
周囲に魔力感知を広げながら確認する。
木の上から見ても魔物の影は見えない。
魔物の殲滅は終了とみていいだろう。
「本当に倒し切るとは……」
「俺達もそろそろBランクに上がれると思ったが思い違いだったようだ」
「アルフレッドさんが消えたと思ったら周りの魔物が死んでいましたもの。正直レベルの違いを感じさせられましたね」
どう反応したらいいのかわからず「はは」と笑う。
実際彼らの前で無双していたけど、氷炎のリーダーのヒョウカもかなりヤバい雰囲気を出していたと思う。
それに記録係と言ってついて来た「迷宮の地図」も、地味だけど実力を発揮していた。
「七彩の剣」と「氷炎」の隙をつくように攻撃しようとしている敵を倒したり。
個々の癖は強いけど、もしかしてこの三つのグループは一緒に行動させるとかなり相性が良いのかもしれないね。
「ん? アルフレッド殿。あれを見てください」
魔物達の住処を探すために奥へと進む。
少し広い場所に出たと思うとライルが声をかけて来た。
「洞窟? 」
指さす方向を見るとそこには洞窟がある。
入り口が僕の身長の二、三倍はある。
かなり巨大な洞窟だ。
「アルフレッド殿。これは少し不味いかもしれません」
「どういうことだ? ライル」
「おそらくこれは――ダンジョンかと」
ここまで読んで如何でしたでしょうか。
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