第17話 病に苦しむ人々を救え! 3
「おおお! 痛みが引いていく」
「す、すごい」
「俺達は奇跡を体験しているのかっ! 」
村へ行き薬が出来たことを伝える。
村長に竜熱病の患者を集めてもらい全員に薬を飲ませると一気に回復していった。
「痛みが引いたのは一時的なものよぉ。あとはこの薬を一か月くらい飲むと治るから」
マリーが今痛みが引いているのは水薬の中に入れた痛み止めの効果だという。
きちんと薬を飲むことを念押ししていると村人のボルテージが上がる。
「救世主様が連れて来たのは聖女様だったか」
「薬売りの聖女様の誕生だ……」
「なんでも救世主様は自らイカリタケ山に行ったとか」
「俺達の薬を作るためにそこまで……」
「ありがたやぁ」
救世主に聖女か。
マリーはともかく僕のガラではないね。
けれど元気が出てよかった。
そう思いながらも皆を見ていると「ぐぅーーー」と大きな音が聞こえてくる。
「マリー。ボーロでも出してあげて」
「わかったわよぉ」
「お兄ちゃんはなのをするのです? 」
「僕は何か温かくて柔らかいものでも作るよ」
痛みが引き体に活力が戻ると次に来るのは空腹だ。
米があればお粥でも作るんだけどまだ米を見つける事は出来ていない。
だから風邪の時によく食べる野菜一杯なチキンスープを用意する。
「おおお。救世主様は料理も」
「まぁ人並みには。はい」
村で用意してもらった大鍋でチキンスープを作る。
野菜の硬さはホロホロ崩れるくらいの硬さ。
シャキッと歯応えのある野菜も良いけれどこういう時は柔らかいものが良いと思うからね。
「噛んだ感触がしねぇ」
「口の中で蕩けるようだ」
「こってりしているのにあめぇ」
「野菜の甘さがスープに出てやがる」
「うめぇ! 」
喜んでもらえて何よりだ。
食べる病人を見ていると気まずそうにこちらを見る村の女性陣。
どうしたんだろう?
首をかしげていると一人こちらにやってきた。
「わ、私達にも一口頂けないでしょうか? 」
彼女達も食べたかったらしい。
スープもまだまだ余ってるし大丈夫だろう。
「もちろん構わないよ」
そう答えると一気に沸き立つ。
お椀にスープをよそう。
そんな大層な料理じゃないんだけどね。
ちょっとした行列になっているのをおかしく見ているとちゃっかり並んでいるマリーとアリス、そして村長が見えた。
「おねがいするのです! 」
アリスが元気よくお椀を出す。
その様子にほっこりしながら返してマリーのお椀にもスープをよそう。
一通り行き渡ったかなと思い一息つくとけど――。
「「「おかわり!!! 」」」
もう少し頑張ろうか。
★
食事を終えて僕達は村長の家に来ている。
片づけをしようとしたのだけど、「このくらいはさせてください」と言われたので村の人に任せた。
「救世主様と聖女様……」
「いえ救世主ではないのでその呼び方はやめていただければと」
「わたしも普通にマリーでいいわ」
お願いするけど頑なに救世主や聖女と呼ぶ。
村長曰く村を救ったからとのことらしいけどこんな恥ずかしい呼ばれ方は嫌だね。
だから必死に説得して何とか呼び方を戻してもらった。
「この度は誠にありがとうございました。医者も聖職者にも投げ出され本当にどうなるかと思いましたが助かりました」
村長が深く頭を下げる。
僕達はお礼の言葉を受け取る。
しかし医者や聖職者も投げ出した、か。
もしかして今、竜熱病はあまり罹らないのだろうか。
いやマリーの言葉によると魔物からの外傷からなる病気だ。患者がいないことは無いと思うけど……、専門じゃないからわからないね。
「さて。お礼の事なのですが……」
「お礼は依頼書の金額で良いですよ」
「いえしかしそういうわけには行きません。これだけの大病を治していただいたのです。何かしなければ末代までの恥になります」
と言われてもなぁ。
お礼と言われてもこの村に余裕があるのかどうか。
農地を見た感じ中々に厳しそうだ。
もし僕がここでお礼を受け取って困窮されたら目も当てられない。
だったら……。
「マリー。確か村長に話があるんだったよね? 」
「そうよぉ」
「話、でしょうか? 」
「これでもわたしナナホシ商会というお店の会長をしているの。そこで売るための商品開発をしているのだけど、新商品の材料をここで作ってるって聞いてね」
「なるほど。それを献上すれば……」
「違うわよぉ。これは取引。お金を払うから品物を頂戴ってことよ」
マリーの言葉に村長が全力で頷く。
これなら村の物をマリーに売ることができてお金が入る。マリーも探していた原材料を見つけることができて生産することが出来るようになる。
ちょっと汚い気がするけどどちらも損をしない取引となる。
村は今の状態から元に戻すのは少し時間がかかるとは思う。
だから復興するまでは備蓄の物を売るということになった。
病気の治療は長期になる。
最初は多めに渡しているけどそのうち無くなるだろうね。
だからマリーがこの村に品物を取りに来た時に渡すということになった。
そんなこんなでやること、決めるべき事をすべて終えることができた。
「ありがとうございました救世主様! 」
「聖女様もまた来てください! 」
「小さな救世主様も! 」
村人に手を振りながら村を出る。
村人達の僕達に対する呼び方を戻すことは出来なかったけどずっとここにいる訳にはいかない。
あとは村長に任せよう。
ともあれ僕は村を出る。
そして冒険者ギルドに報告へ行った。
★
「依頼の達成……確認しました」
受付嬢が驚きを隠せないような表情でいう。
気持ちはわからなくもない。
しかし僕が提出した村長直筆のサインが何よりの証拠だ。
「今回はマリーが知っている病気だったから何とかなりましたが、何であの依頼書を張ってたんですか? 」
どう考えても荒事が多い冒険者には不向きな依頼だ。
非常と思われるかもしれないけど受付の段階で、受付を拒否すべきだろう。
もしくは冒険者ギルドが知っている医者を紹介するか。
それに依頼書もそうだ。
あのような抽象的な依頼書を受付、張り出すのは如何なものか。
あれを見て受けようという気になるのはきっと僕達くらいだろうね。
「……冒険者の中には、少数ですが、錬金術を嗜んでいる者や薬師・神官の方もいます。今回のような依頼を引き受けてくれる冒険者もおりますので、依頼として張り出しました」
治してくれるものがいるのなら、確かに冒険者ギルドに依頼を出すのは分かるね。
今回のようなイレギュラーでなければ冒険者ギルドでも対処できるのかもしれない。
冒険者をしている神官や薬師・錬金術師というのは修業中だろうか。
少し想像を膨らませているとアリスが服を「クイクイ」っと引っ張って来た。
「お兄ちゃん。虎さんどうするのです? 」
忘れていた。
受付嬢に魔物の素材があると伝えて引き取ってもらえるか聞く。
「可能ですよ。あとその……火竜草という、薬草もあれば嬉しいのですが」
「村の人の治療用に全部使ったからもうないよ」
「そうですか……」
「因みに言っておくけどイカリタケ山に登らないようにね? 」
「そんな命知らずな事させませんよ。もし必要になればアルフレッド様に指名依頼を出します」
引き受けたくない、と言いながら話を戻してここに出していいか聞く。
大丈夫なようだ。
アリスに頼みソニックタイガーの牙と爪、尻尾と毛皮を引っ張ってきてもらった。
「「「?!!! 」」」
騒がしかった冒険者ギルドが静まり返る。
「こ、これは……」
「ソニックタイガーから採れたものだ」
「い、いえそんな……。ソニックタイガーはもっと小柄では?! 」
「体は大きかったな。まぁ流石大森林の奥地の魔物といった所だ」
ははっと笑いながら査定を頼むと受付嬢は逃げるように後ろの扉に走り込む。
「新入り凄いな!!! 」
「ソニックタイガーっていやぁ死神って言われてる魔物じゃないか! 」
「それを倒しちまうとはな」
「全く今までどこで何してたんだよ。ハハッ! 」
「見ろこの牙! 見たことのないような大きさだ」
バンバンバンと背中を叩かれる。
少し痛いけど褒められるのは素直に嬉しい。
冒険者達の手荒い賞賛を受けていると奥からアーネスト殿がやってきた。
「早速やらかしてくれたな」
夢に出そうなほどニヤァァァァと笑うアーネスト殿の顔が怖かった。
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