表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ枠の転生貧乏貴族、武姫を継承し最強へ至る  作者: 蒼田
第1章: あったか家族と転生者の少年
16/82

第16話 病に苦しむ人々を救え! 2 火竜草

 僕の隣を風刃が通り過ぎる。

 正面からソニックタイガーが牙で噛みついて来る。

 それを横に避けて切り上げる。

 しかしソニックタイガーが急加速してマジックソードが空を切った。


「一撃で仕留めるつもりだったんだけど」


 体勢を整え直しつつ相手を観察。

 相手はソニックタイガー。風属性魔法を使う俊敏(しゅんびん)性に優れた魔物だ。

 攻撃方法は単純で中級魔法の風刃(ウィンドカッター)風弾(ウィンドショット)、あとは爪による攻撃や牙での噛みつき等々。

 討伐難易度は高いけれどそこまで苦労するほどの魔物ではない。


「っと」


 ソニックタイガーが急加速して噛みついて来る。

 それを避けるとこちらを見ずに風弾(ウィンドショット)を放ってくる。

 器用だな、と思いつつも体勢を整える間に魔法で牽制してくるのでちょっとやりづらい。


 今この個体に手間取っているのはこの個体がさっきも使った急加速と急停止のせい。

 モーションに入らずいきなり来られると対処が遅れる。

 けれどそろそろ慣れてきた。


 マジックソードを構え直す。

 と同時に正面まで移動する。


「! 」


 咄嗟に風弾(ウィンドショット)を打ってくる。

 けれどそれを回避して、マジックソードを切り上げた。


 ズシャァァァァァァァ!!!


「よし」


 ソニックタイガーが後退し「ドン! 」と倒れる。

 瞳の色が消えたのを確認してアリスを呼んだ。


「素早い虎さんだったのです」

「ここまで来ると一体一体のレベルが高くなってるな。もう少し気を付けて行かないとね」

「油断大敵だ! っていつもフレイナが言っているのです! 」


 アリスがフレイナの声真似をしながら言う。

 それにくすっと笑いソニックタイガーの素材を()ぐ。

 高くなる魔物レベルに気を引き締めながらもイカリタケ山を目指した。


 大森林奥地から更に進みイカリタケ山の(ふもと)に着いた。

 早速登山の準備に取り掛かる。


 荒山と呼ばれているけど、イカリタケ山を登る事自体はそこまで難易度は高くないと思う。

 イカリタケ山は大森林が広がっているせいで人の手が入っていないことが予想される。

 それにより足元も悪く危険度は高い。

 けど僕達はそれを無視して空中に足場を作って移動できるから問題ない。


 足場や魔物よりも問題は山頂にいるフレイムドラゴンだ。

 倒すことができるのなら特に問題にはならない。

 しかし今回は倒さないで進まないといけない。

 倒さず、そして薬草だけ採って帰る。

 中々難易度の高い薬草採取だ。


「さ。行こう」


 尻込みしていても仕方ない。

 アリスを連れて山を登る。

 途中魔物が襲ってきたけどサクサク倒しながらさらに先へ。

 そして山頂に着いた。


「ゴー――ゴー――」


 熱気と共に大きな音が聞こえてきた。


「眠ってるな」

「ドラゴンさんはおねんねしているです」

「好都合だな。早く火竜草を採って帰ろう」


 ドラゴンに気付かれないように周囲を探す。

 全身赤い装甲のような鱗に覆われたフレイムドラゴン。

 巨大な一対の翼は今にも飛び立ちそう。

 あのマグマは自分が敷き詰めたのかな?

 マグマをベッドのように使ってぐっすりと寝ている。


「あれはスライムか」


 フレイムドラゴンが寝ている所にうねうねと動く赤い魔物を発見。

 恐らくマグマスライムと呼ばれる種類だろう。

 このスライムは耐火性に(ひい)でた魔物で高位の火属性魔法を使うとか。


「あっちは蜘蛛さんです」


 火竜草を探しているとアリスが声を上げる。

 指さす方を見るとそこには巨大な蜘蛛がいた。

 色は黒。体には赤いラインが入っておりその大きさは大体僕の下半身ほど。

 蜘蛛が自分が作った糸の上を歩いている。


「フレイムスパイダー? いやあの大きさはフレイムデビルスパイダー? 」


 フレイムスパイダーはこんなにも大きくない。

 と言うよりも本によると普通の蜘蛛程度の大きさのはずだ。

 ならその亜種か上位種になる。

 見え隠れする特徴的な角のような模様と、きらりと光る銀色の爪を見る限りフレイムデビルスパイダーだと思う。


 どれも厄介な魔物だ。

 正直大森林の魔物が雑魚に見える程。

 改めてここだけ異常なのがよくわかる。


「倒していくです? 」

「いや戦闘でフレイムドラゴンを起こしたくない。出来るだけ気配を消して火竜草を採ろう」


 アリスが頷き火竜草を探す。

 しかし見つからない。

 マグマが冷えてできた岩石の上に生えると聞いたから少し離れた所から探しているんだけどないね。


「お兄ちゃん」


 アリスが何か見つけたようだ。

 彼女が指さす方を見ると巨大な岩石の上に多くの赤い植物が生えていた。


 ――火竜草だ。


 しかしこれはまずいな。


「なんで魔物がいる所に生えてるんだよ」


 普通は外敵がいない所に生えるのが植物のセオリーだろ。

 火竜草の近くにはフレイムデビルスパイダーの糸が張り巡らされている。


 フレイムデビルスパイダーと戦闘になりかねない。出来ればこの火竜草は採りたくないね。

 他に生えている所が無いか周りを見る。しかし見つける事が出来なかった。


「仕方ない。採るか」

「はいなのです! 」


 しかしどうやって採るか……。

 直接採りに行くのは無しだな。

 マジックハンドを使ってとるのはどうだ? いや大きさを調節できるとはいえ僕の今の技術じゃ細かなコントロールが難しい。糸に引っかかるのが目に見えている。

 糸を観察する。

 すると少し広めの空間を見つけた。


「アリス。ちょっと頼めるか? 」

「何をすればいいのです? 」

「あそこの空間を開ける事は出来るか? 」

「出来るのです」


 よし。なら何とかなりそうだ。

 アリスに目配せして空間を開けてもらう。

 ゆっくりと手を突っ込み糸に絡んでいないか確認する。

 大丈夫そうだ。

 ゆっくり。ゆっくりと手を伸ばす。

 そして、火竜草をつか――。


「!!! 」


 手!!! てぇぇぇぇぇぇ!!!


 手の上にフレイムデビルスパイダーの子供が乗った。冷や汗がドバっと流れる。

 手の甲でフレイムデビルスパイダーがガサゴソと動いる。

 こ、これはまずい。


 早く、早くどっかに行ってぇぇぇぇぇ!!!


「なっ!!! 」

「わわわ?! 」


 さらにもう一体?!

 まずい。これはまずい。


 幾ら子供とは言えフレイムデビルスパイダー。つまり魔物だ。

 今は攻撃してくる様子がないけど攻撃して来たらすぐに反撃して即離脱しないと。

 反撃と撤退の準備をしながらどっかに行ってくれるのを待つ。

 緊張の時間が続いたけれどフレイムデビルスパイダーの子供はどこかに行ってくれた。


 そして僕達は火竜草の採取を完了した。


 ★


「これであってるわよぉ」


 火竜草を採取し即座にアリスの力を使って館に戻る。

 マリーの部屋に行き火竜草を渡すと早速薬を作ってくれるとの事。

 僕達が帰ってくるのを準備をしながら待っていたようでマリーの部屋には必要なものがすでに置かれていた。


「魔力水に体力草に……」


 マリーが薬草を処理して鍋に入れて行く。

 彼女は魔法だけでなく錬金術も習得しているのは知っている。だけど薬学にも精通しているとは頼もしいね。

 おっと邪魔をしてはいけない。

 火事だけは注意してねとマリーに言い、僕は外に出た。


 一階でアリスとフレイナがリバーシをしているのを見ているとマリーの声が聞こえて来た。


「できたわよぉ」

「もう完成したの? 」

「ええ。といっても素材を集めるのが難しいだけで薬を作ること自体はあまり難しくないの」

「そうか。でもありがとうマリー」

「構わないわぁ。アルちゃんが喜んでくれたのならそれで」


 本当にありがたい。

 しかしここで立ち止まっているわけにはいかない。今も苦しんでいる人達がいるんだ。

 マリーに頼み薬を小瓶に分けてもらう。

 アリスを連れて村へ向かおうとするとマリーが声をかけてきた。


「わたしも行って良いかしら? 」

「今回の功労者はマリーだし、僕は構わないけど……。どうしたの? 」

「ちょっと村長さんと取引がしたいことがあってね」

「商会の新商品? 」


 マリーが頷く。

 断る理由もないのでマリーも連れて行くことに。

 そしてアリスの力で僕達は村へ向かった。

ここまで読んで如何でしたでしょうか。


少しでも面白く感じていただけたらブックマークへの登録や、


広告下にある【★】の評価ボタンをチェックしていただければ幸いです。


こちらは【★】から【★★★★★】の五段階


思う★の数をポチッとしていただけたら、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ