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第38話

更新が遅くなって申し訳ありませんでした……!


次の日も、そのまた次の日も。私達は魔物蔓延る森を進んで行く。


日が昇る頃に目覚め、軽めの朝食を摂って馬形埴輪に跨る。休憩を挟みながら移動し、太陽が沈んだら家形埴輪を展開。ダンスの練習をして、夕食を食べて眠る。


そんな一日を三回も繰り返していれば、色々な事に慣れてくる。


例えば、馬での移動。乗馬の際に疲れにくい姿勢とか、休憩の時に有効なストレッチやマッサージとか。


あとは


「いち、に、さん………うん、お上手ですよ」


先輩とのダンスも、それなりに慣れてきたと思う。


まぁ前にも言った通り、一連の流れをただひたすら体に叩き込んだだけの、ダンスと呼べるか分からないものだけど。


でも、初日に比べると淀む事なく滑らかに動けている気がする。


右、左、クルリと一回転して、また右、左。


(そして、こうして………これで終わり)


最初から最後まで。ダンスの流れを一通り終えて、ふぅと息を吐く。


ちゃんと最後まで踊る事ができたのは私がコツを掴めて来たというのもあるが、一番の要因はノワール先輩のリードがとても上手だからだろう。


柔らかく、優しく。けれど確かに私の体を支え、間違えそうになった時はさり気なくフォローしてくれている。


影のようだ、と思った。


決して華やかではないけれど、当たり前のようにそこに居て、寄り添ってくれる影。


「だいぶ上達して来ましたね、ティアさん。このまま練習を重ねれば、夜会までには十分通用するレベルになると思いますよ」


「あ、ありがとうございます。……でも、これじゃあ先輩としか踊れないけど、いいんですか?」


パーティにおけるダンスの知識とか礼儀については、以前とある国へ任務に向かった際、同行していたフェノンさんから教えてもらった。


一番最初のダンスは婚約者や配偶者と。もし決まった相手がいない場合は、一緒に入場したパートナーと踊るのが基本。


同じ人とは一曲まで、婚約者となら二曲目を踊ってもいい。最初のダンスを終えたなら、気になる異性や憧れの人にダンスを申し込み、オーケーならば踊ることができる。


いつぞや、ブラッド団長は私に対して「夜会当日はノワールと踊るだけでいい」と言った。


この発言からして、夜会では団長がサーリャさんを、先輩が私をエスコートする事になるのだろう。


言い寄ってくる男は適当にあしらっていい、と言われたが、ヴィゴーレ国で任務をする以上、国の貴族達とは有効的な関係を築いておいた方がいいのではないだろうか。


折角誘ってくれる人全員を断っていては、私──というより“赤のギルド”の印象が悪くなり、任務遂行に支障をきたすかもしれないし。


「大丈夫です。他の男と踊る必要なんてありません」


すっぱり、きっぱり、にっこり。


そんな擬音が似合う様子で、ノワール先輩は言い切った。


「確かに、ティアさんの火傷を見てダンスを申し込んでくる人は多いとは思います。でも、ブラッド君も言ってた通り、誰ともしっかり踊れるようになるには時間が足りません。

 俺とはなめらかに踊れるのに、他の人とはぎこちなく踊ってしまったら、逆に彼等の反感を買ってしまうかもしれませんし」


確かに。相手はこちらの事情なんて知らないのだから、『俺とのダンスが不服で、わざと下手に踊ってるんじゃないか!』と思われるかもしれない。


「なので、ダンスを申し込んでくる人達はしっかりとお断りしましょうね。脚の火傷が痛む、と言っておけばヴィゴーレ国の人達は無理強いできないでしょう。それに、…………」


「………先輩?」


「いえ、それにホラ、確かにティアさんはモテるでしょうけど、多分サーリャさんの方が人気出ると思います。ダンスの申し込みも、あっちの方が多いかと」


「な、成る程……」


サーリャさんは魔物を軽くあしらえる程の実力を持っているし、何よりヒノモトの軍神であるタケミカヅチの巫女だ。


強さ=美しさであるヴィゴーレ国において、これほどまでに(うつくし)い女性は他にいないだろう。


「はい。それに、もしあまりにも多くの男性が言い寄って来たら、俺の隠密魔術で隠れちゃえばいいんです。

 そうすれば、ダンスを申し込む事もできませんし」


「そう、ですね。もし手に負えなかったら、その時は先輩にお願いします」






「皆、食べながら聞いてくれ」


ダンスの練習を終え、入浴を済ませた後の夕食にて。ブラッド団長が口を開いた。


ちなみに今日のメニューはヂョンファ料理の古老肉(クーラオロウ)。ゲンダイニッポン風に言うなら、酢豚という名前らしい。


油で揚げた肉と野菜に、とろみのついた甘酸っぱいソースがかけられており、白米との相性は抜群だ。


「予定日より一日早くはあるが、このまま行けば明日の昼過ぎから夕方頃には王都の門へ到着するだろう」


ブラッド団長の言葉に耳を傾けながら、チラリと、食事の為に小さく畳まれ机の端に置かれた地図へ視線を向ける。


私達の足跡を辿るように地図に引かれた黒い線は、あと少しで王都に届く程に伸びていた。団長の言う通り、明日には到着するだろう。


ケノラナから王都までは五日と言っていたが、安定してトップスピードを出せる馬形埴輪のおかげだろうか、少し予定が前倒しになったらしい。


「以前ミーティングで話した、入都受領印のことは覚えているか」


「はい。王都で自由に動くにはそれが必要、なんですよね?」


ノワール先輩の言葉に、団長が「あぁ」頷く。


説明によると、ヴィゴーレ国の王都に住む人達は皆、王族・貴族・平民問わずに市民証明の腕輪を付けているらしい。


入都受領印とは、簡単に言えば外部の人に貸し出す為の市民証明の腕輪。


これを装着せずに王都内を歩いた場合、正式な手続きをしなかった不法入都者か人間に擬態した魔物とみなされ、厳罰な処分が下されるとの事だ。


「成る程、外敵を一目で識別する為の物なんですね」


「それともうひとつ、これは強さの階級分けにも使われている。何度も言っている通り、ヴィゴーレ国は強い者が美しいとされる国だが……疑問に思わなかったか?

 戦闘力なんて曖昧なものを、どうやって美醜の指標にしているのかと」


「言われてみれば、そうね。純粋な腕力や魔力ならともかく、例えば隠密からの奇襲や毒等の技術も加味するとなると、多角的な評価は中々難しいわ」


「あぁ。故にヴィゴーレ国は、市民証明腕輪の色や装飾でその者の(うつくし)さを表している。冒険者ギルドのランク付けのようなものだ」


外部の者が入都する際には、市民証明の腕輪を受け取る必要がある。


腕輪の色は、装着している人の強さを示す。


……うん、成る程。団長が言わんとしてる事が読めてきた。


「話が長いですよ、ブラッド君。つまり、入都する際に俺達の美しさ(・・・)がどの程度なのか、証明する必要があるという事でしょう?」


「あぁ、その通りだ。魔物と戦わされるか騎士との模擬戦か……詳細は分からんが、何かしらの戦闘行為をする事になるだろう。総員、準備をしておいてくれ」


戦闘行為。その言葉を聞いて、思わず体が強張った。


己の特異属性魔法の性質が判明したとはいえ、基本的に私は戦闘に向いていない。


消滅魔術は確かに強力だが、夜にならなければ強力な効果を発揮しないし、そもそも実戦慣れしてない私では瞬殺される未来しか見えないんだけど……。


そんな私の様子見て内心を察したのか、ブラッド団長が「安心しろ」と声を投げてきた。


「これはあくまで目に見えない分を測る為のものだ。ティアの美しさは目に見える状態だからな、フードを外して素顔を見せれば問題ないだろう」




そして、次の日。


ブラッド団長の予測通り、昼過ぎ頃に私達は王都門へと到着した。


ヴィゴーレ国の王都は高い壁に囲まれた城郭都市で、ケノラナで見たのと同じような巨大な壁が聳え立っている。


早朝に使い魔による先触れを出していた為、到着時刻を大まかに予測していたのだろう。門番をしていた騎士は私達を見て「お待ちしておりました」と頭を下げる。


「“赤のギルド”の皆様ですね? どうぞこちらへ」


案内されたのはゲートハウスの内部、応接室らしき部屋。数名の騎士が、私達を出迎えた。


「ようこそ、“赤のギルド”の方々。私は王都南門の指揮官であるマーシュと申します」


「“赤のギルド”、団長のブラッドです」


他の者達よりも位の高い装飾をした騎士が、一歩前へ出て頭を下げた。ブラッド団長も普段の高圧的な喋り方を控え、“赤のギルド”として丁寧な言葉を返す。


「早速、入都受領の為に皆様の腕前を見せて頂きたいのですが、よろしいですか?」


「えぇ。ですがその前に……ティア」


ブラッド団長に名前を呼ばれた私は、小さく頷いてフードへと手を伸ばした。


この下にあるのは、火傷にまみれた私の顔。


以前であれば、人には絶対に見せないように隠していたし、こんな風に促されたって絶対にフードは外そうと思わなかった。


けれど、ここは肉体の傷が(うつくし)さの証とされるヴィゴーレ国だし、それに


───『だってこれは、ティアさんが今まで頑張って生きてきた証でしょう? 綺麗ですよ、とても』


ギルドハウスでは素顔で過ごすのが常だったからか、少しだけ怖くはあるけれど、そこまでの嫌悪は無い。


ぐっと息を止めて覚悟を決めると、私は一気にローブのフードを外した。


露わになる顔。右半分を覆う、赤黒く焼け爛れた火傷の跡。


それを見たマーシュと騎士達は瞠目し、食い入るように私の顔を見つめてくる。


「これは……」と誰かが呟いた。今まで私の素顔を見てる人が漏らした、傷の痛ましさを嘆くものではない。素晴らしい芸術品を見て思わず漏れた溜息のような、感嘆の声だ。


「なんと美しい……!」


「我が国の太陽たる女王陛下に比肩する程の美女が存在するとは……!」


「もしや今はフリーでおられますか? でしたら是非、私の婚約者になって頂きたく……」


次々と称賛の声を漏らす騎士達。慣れてない私はその熱意にすっかり縮み上がってしまい、中々反応が出来ない。


困惑していると、ぐい、と体が引かれる感覚がした。ノワール先輩が私の肩を守るように抱き寄せたのだ。


その顔は、にっこりと笑顔を浮かべているものの、どこか圧を感じる。ズモモ……と先輩から黒いオーラが漂っているのは気の所為だろうか。


そんな先輩の様子に気付いたのか、それとも部下の醜態が目に余ったのか。マーシュは大きく咳払いを零した。正気に戻った騎士達が、先程以上にしゃっきりと背筋を伸ばす。


「部下が失礼を致しました。ティア様、でしたか。その身を焼かれてもなお翳る事なき貴女様の(うつくし)き生命、しかと拝見させていただきました」


「あっ、いえいえ………?」


マーシュに丁寧に頭を下げられ、思わず萎縮してしまう。


彼は……この国の基準ではどうかは分からないが、少なくとも私の感覚からすれば整っている顔と言える部類だ。


そんなマーシュに火傷だらけの顔を「うつくしい」と言われるのは、面映いというか何というか、変な気分だった。


「見ていただいた通り、彼女の美しさは証明されているので、わざわざ腕前をお見せする必要はないかと。

 実力を示すのは、我々三人でよろしいでしょうか」


「えぇ、勿論です。では、どうぞこちらへ」




前書きでも申しましたが、一ヶ月以上更新を止めてしまい、申し訳ありませんでした。


元々遅筆である私が「そうだ、短編を書こう」と思い付きで他の執筆を始めた結果、このザマとなってしまいました。


元々プロットのみで書き溜めのない見切り発車不定期更新小説ではありますが、必ず完結までは書き上げる所存ですので、ゆっくりと更新を待って頂ければと思います。


下のURLは今回更新が遅れた原因の短編となっております。

よろしければ、是非こちらもお読み下されば幸いです。

「突然ですが、この世界を乙女ゲームに改変しました!」と宣言された

https://ncode.syosetu.com/n1672iz/

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