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異世界ササキ商店

【異世界】転売屋騒動~

作者: 山田 勝

「ハンス、お前を追放する。理由は、言わなくてもわかっているな?」


「こちらから願い下げです。ふん!」


「三ヶ月だが、退職金をやる。これで、村にでも帰るんだな!」


「はい、はい」


 僕は、ハンス、僕には秘密がある。僕は天才だ。村(32世帯)で一番頭が良いと言われている。二桁の足し算引き算は空で出来る。と言うことは指を使わずに計算出来ると言うことだ。今は掛算に挑戦中だ!

 冒険をしたくて、平民の読み書き計算の私塾を辞め冒険者になった。リーダーめ。ハーレムパーティーを作るために、僕を追い出しやがって後悔するぞ!


「ねえ、リーダー、ハンス君大丈夫かな?」


「リサ、間違いは誰でもある。あいつの場合、謝らないし、改善しないから、生死にかかわる冒険者には不向きだろ。この前もナイフのサビを指摘したら、サビても効果は変わりません。僕は手入れしませんとほざいていただろう!」


「まあ、ハンス君、絶対にこうだと決めたら、自分の意見を変えないからね」

「それに俺たちも人の心配している場合じゃ無いぞ」

「「「はい、リーダー」」」




 ☆☆☆☆冒険者ギルド受付


「ああ~~僕、[瞬殺のナイフ]を追放になっちゃいました~」


 こうやって、ワザと大声で言えば、他のパーティーの人達からスカウト来るぞ!


「はい、手続き終わりました」


「!!え、それだけ、他にパーティーを推薦してくれないの?」


「当分はソロですね。自分で探して下さい。はい、次の方、トーマスさん」


「あの、俺、パーティーをクビになりまして」


「!!!」


「おい、いつも最適解の答えをリーダに助言するポーター兼軍師トーマスがクビになっただと、俺たちのパーティーに来てくれ!」

「いや、うちに!」

「皆さん、待って下さい。受付を通して下さい!是非、紹介したいパーティーがあります!」


(何だ、何だ、あんな冴えない外見の奴が、引っ張りだこだと!)


「いや、俺、ナンバーツータイプだから、リーダーと揉めやすいし、しかも、リーダーがわかりやすいタイプ(バカ)で力を発揮するから、わかりやすくて豪胆なリーダーを探している・・」


「「「トーマスさん。そんなことを言わずにうちに」」」


(チッ俺の方が優秀なのに、皆わかっていないな~)


 そんな時だった。僕に転機が訪れた。




 ☆☆☆☆☆市場


 ワイワイワイワイガヤガヤガヤ


「うん?何だ?人だかりがしているぞ」


「皆様~~異世界の新商品なのですー[そろばん]という新しい計算器なので~す」


「何だ、奇妙な形だな。どうやって使うの」


「はい、あそこの天幕の前で、手を振っている方が異世界から来られたアザミさんなのです。講習をしてくれます。気にいってから、お買い上げ下さって結構なのです。これは三桁、四桁・・なんと!六桁それ以上の計算もできるのです!」


「「「何、それはすごい是非試したい」」」



「は~い、お試ししたい方はこちらに、私はアザミです。異世界から来ました。ドワーフの名工ワシムさんが作った一級品ですよ!」


「おお、黒目に黒髪、異世界人だ!」

「可愛いな」

「どれ、そろそろ店の規模が大きくなって細かい計算をしなくてはいけなくなったから、試してみるか」



 何?値段は大銅貨5枚(5000円)か、あの女、黒目黒髪だな。いるんだよな。たまたま黒髪黒目で生まれて、自分を、異世界人と思い込んでいる奴が~

 でも、金は退職金があるから、買って、後で不良品として賠償金を取ればいい。

 何て僕は頭が良いのだ。


「君、一つくれ」


「はい!お買い上げ有難うなのでーす!講習は・・」

「いや、いい。僕は天才だから、すぐに使い方わかるよ」

「えっ」





 ・・・数日後

 ち、やっぱり使い方わからないじゃない。欠陥品だ!返品してやる!


 ワイワイガヤガヤ


(何だ、人だかりが出来ている。皆も返品で来ているのか!よ~し)


「なあ、[そろばん]売ってくれ!商会長からせっつかれている。うちでも計算器あるが、あれほど、コンパクトになっているものは無いって」


「ちょっと、私は貴族学園の生徒会経理よ。ワザワザ評判を聞きつけて、辺境まで来たのに、お願いー!」


「皆様、申訳ありません。初期ロット品の販売は完売です。ご注文したい方は、こちらにお名前を記入お願いします!」


 そこで、僕は名案を思いついた。しょぼくれている貴族学園のお姉ちゃんに売ったら、金貨一枚(10万円)になった。

 ハハハハ、僕の時代が来たよ。



 ☆☆☆一月後ササキ商会借店舗


「大変だーアザミさん。ロザリーちゃん。ワシが作ったそろばんを知らない奴が勝手に売っているぞ!」


 ええ、ドワーフのワシムさんが一生懸命作ったそろばんが、誰かに勝手に売られている?


 私は、アザミ、転生者だ。ある国でクラスごと召喚転移され、私は勇者の資格無しとのことで放逐され、逃げてここまで来たの。

 ここで、やっと、孤児のロザリーちゃんを雇い。ドワーフのワシムさんに信用してもらって、事業を軌道に乗せることが出来たのに・・ウヌヌ、とにかく行ってみましょう!


 ワイワイガヤガヤ


「は~い、今、評判のそろばんでーす。金貨一枚からのオークション始めます!」


 シーーーーン


「背に腹は変えられない。金貨一枚!」

「私は金貨一枚と銀貨一枚!」


 ええー、そんな20倍以上で売られている。

「文句言ってやる。トンカチでぶったたく!」

「酷いのです。あんまりなのです。一人5個まで限定で売っていたのに・・文句言うのですーー」


「まあ、待ちなさい。こんな奴に文句を言っても無駄よ。私に考えがある!」


 私はすぐにこの場で、ワシムさんに増産を依頼し。

 吟遊詩人ギルトに向かい仕事を依頼した。



 ・・・

「さあ、さあ、残り一個だよ。金貨二枚から~。うん?何?」


 ポロン、ポロン~ポロロロ~~ン♪

「ササキ商会の~そろばんは~~再販決定しました!~これもみなさまのおかげです~販売は一週間後、予約制で~す」


「な、なんだと、じゃあオークション参加やめよう」

「ああ、金貨二枚なんで馬鹿らしいぜ!」


 酷い!商売の邪魔をしやがって、吟遊詩人に再販の宣伝をさせてやがる。


 こうなったら、買ってやる!

「貴方、市場で勝手に転売していた人ね。販売お断りよ!」


 え、僕はダメなの?差別だ。僕は事業主だぞ!

 こうなったら、子供を使って


「ええ、あなた、いくつ?正直に言ったらアメ上げるから、誰に頼まれたか言ってごらん」


「う~とね。あそこの角に隠れて見ている。あの小憎らしい顔したお兄ちゃんに串焼きを買ってやるからと言われて」

「じゃあ、売れないわね」

「はい、正直者にご褒美のアメなのです!」

「お姉ちゃんありがとう!もう変な人から頼みごとをされても断る~あのお兄ちゃんにお金を返してくる~」


 ・・・

 畜生、大人に頼むと金を払わなくてはいけない!そしたら、儲けが少なくなるが仕方ない。

 僕は冒険者ギルトに買い物代行の依頼を出し。F級冒険者を沢山雇い、買い集めた。

 よし、オークションだ!


「さあ、さあ、今、評判のそろばんだよー金貨一枚から~」


 シーーーーーーン


 あれ、誰も手を挙げない。どうして?


「あれ、もう、他の商会も販売し出したよ」


「何だってーこの前の儲けを全部出して、依頼料も払ったのに!売れなければ利益が出ない!大損だーー」



 ・・・・

 フフフフ、そろばんは特許を取っている。特許料を払えば他の商会も作れるのよ。

 そして、この世界の特許は怖いのよ。何故なら、後ろに貴族が付いている。

 私は辺境伯様に、売上げの一部を払って後ろ盾になってもらっているのよ

 さて、あの少年はどうなるかな。



「誰かーーー原価でいいから、そろばんを買って下さい!お願いします!」

 ハンスは一生懸命大声を出して売ろうとするが、人混みをかき分け騎士達がハンスの周りに集まってきた。

 顔に傷があるものや、後ろに大剣を背負っている者。何か怖そうだ。


「おい、坊主、辺境伯様の紋章が書かれているそろばんを勝手に高額で転売したな~」

「ちょっと面貸せ」


「ヒィ、僕は悪いことをしていない!」


「そうか、じゃあ、商人の鑑札を出せや!」


 別件で連れて行かれ、鑑札無しの商業行為による罰金刑を科せられ。騎士達による恫喝により、ハンスは、もう、高額転売はしませんと誓約魔法まで掛けられた。

 やったら、首が物理的に飛ぶ厳しい制約付きだ。

 誓約魔法代金も請求され、罰金でハンスは儲けを全て吐き出してしまった。


「何で僕の天才的なヒラメキを誰も評価してくれないんだ-」


 ・・そうだ!高額転売じゃなければ良いんだ!

 買い物代行をしよう。レア品の買物代行をすれば客は付くはず!それに高い報酬をもらえるぞ!


 ハンスは商業ギルトに張り紙を出した。[買い物代行をします!レア品対応可!ハンス]


 客はすぐに現れたが、


「君に出来るのか?ドラゴンの鱗を100枚ほど用意してくれたまえ。お金?基本仕入れてからの払うのが筋だが・・信用が出来てから前金で渡そうぞ」


 ハンスは金がなくても、売っている所を見つければ、その場でお金をもらって買えば良いと思い。一生懸命にドラゴンの鱗を探したが、どこにも売っていない。

 そう、レア品は出回っていないからこそレアなのだ。


「ううう、ドラゴンの鱗用意できませんでした」


「ああ、別に違約金は払わなくてもいいぞ。冒険者に討伐を依頼したからな。もしかして、と思って頼んだだけだ」


 ハンスはチャンスを逃したことに気が付かない。


 チ、無理か。なら、市場で日常品の買物代行の営業だ!


「日用品の買い物代行しまーす。どうかハンスにご用命を!」


 ・・・

「大変なのです!ハンス君が、買い物代行を始めたのです!また、騒動が起きます!」


「大丈夫よ。ロザリーちゃん。あのね。あの方法だと、冒険者で薬草を採る方がお金は儲かるわ。

 この世界は人との結びつきが強いのよ。買い物に行けなくて困っている人がいたら、周りに助ける優しい人が必ず一人はいるの。それにレア品なんてものはハンス君じゃ無理だわ。

 レア品を買い物代行できるのなら、それは才能よ。代行ではなく自分で商売できるわ。私は無理だから、こうして異世界の商品を皆で作って売っているのよ」


「そうなのですか?」


 ハンス君は、一回の成功体験から抜け出せない働き者のバカね。可哀想だけど、働き者のバカは害悪にしかならないからぬっ殺せという格言もあると聞いたわ。


 さあ、私も人のことを心配している場合じゃない!

 次!次よ



「異世界の遊戯ものを試しに作ってみたのよ。ロザリーちゃん。孤児の子に連絡をとって、これで遊んで楽しいかアンケートとってもらいたいの。おやつ付きよ」


「なんですか?」


「これは大陸共通語カルタと言って、読み上げたことわざと対応する札をとる遊びよ。勉強にもなるの」


「楽しそうなのです!」


 異世界人の商人アザミは、孤児を優先して雇用する方針をとったと伝えられている。









最後までお読み頂き有難うございます。

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