第七話 天使
小説を読んで頂きありがとうございます。
「あ、あの、突然お声がけしてすみません。少し気になることがあって、それが聞きたくてその、つい声をかけてしまったというかその、ほ、本当にすみません…。」
桜崎はるはそう言ってモジモジと視線を下にしながらチラチラとこちらを見ていた。
(あぁアニメでもこういう感じだったよな、桜崎はるといえば。昨日は混乱があったからまだ相手を気にすることなくちゃんと話せてたのかな?)
などとアニメでの彼女を知る光希はどうしてこうなったのか思考しながら今はどうでもいいことを思い出していた。
「…えっとぉ、確か同じクラスの桜崎さんよね?3年A組の?私は同じクラスの新木朱美。それで、話ってなにかな?よかったら遅刻しちゃいけないし歩きながら話さない?横の弟が昨日遅刻して怒られたばかりだから危ないのよね。」
そう言って光希の頭を撫でてくる朱美に
「別に危なくはないし、後この歳になって頭撫でるのやめてくれない」
と少し恥ずかしがりながら文句を言う。
そんなやり取りをしてる2人を見ながら「昨日遅刻を…」と呟き、何かを考え始めた桜崎はるは意を決したかのような顔をして光希に言った。
「あなたが昨日私を助けてくれた騎士様ですか?」
その言葉に本人である光希は固まり、朱美は「騎士様?」と頭を傾げて桜崎春を見つめた
「えっと、その騎士様ってのはよくわからないんだけど、僕とどこかで会いましたか?自分ではお会いした覚えがなくて。」
外行きの対応をして少し新鮮そうな顔をする朱美姉を無視し、桜崎はるに対応すると彼女は少しの間あわあわとした後、制服の裾をギュッと握ると意を結したかのような顔をして俺に向かってこう言った。
「私が昨日、危ない目にあった時に助けに来てくれたのはあなたではありませんか?昨日遅刻したと先程あなたのお姉さんが言っていましたし。えっと、他にも何よりあの方、騎士様と同じ雰囲気をしていますし。その、あの、ち、違ったのでしゃうっ。うっ、しょうか?」
そう言って俯いてしまった桜崎はるはううっと少し顔を赤くしながらこちらに目を向けて違うのか?という顔をしていた。
そんな様子を見て俺はそこまで確証を得られてないことにホッとし、そういえばこういうドジな感じが人気を得ていたキャラだったなと思い出していた。
するとさっきまで黙っていた朱美姉が「…ぃ。」となにか呟き「えっ?」と思い、なんて言った?と聞こうと朱美姉の方を見ると朱美姉は桜崎はるに近づき前に立ったと思ったらそのままギュッと抱きついた。
「可愛い!桜崎さん超可愛い!」
「ふぇ?ふぇぇぇ!!」
桜崎はるのドジな部分が朱美姉の琴線に触れたのか、「可愛い!」と言っては桜崎はるに夢中になっていた。可愛いと言われた本人は、いままでこんなに近い距離で他人と触れ合ったことがなかったため「ふぇぇ〜」とどうすればいいかわからないという様子で朱美姉に好きにされていた。
(この2人は本来の物語でも仲が良かったもんな。そりゃあこうやって朱美姉が桜崎はるをすぐに気に入ってもおかしくはないか。けど、なんで俺をピンポイントであの時助けた騎士だと思ったんだろう?顔も隠れてたし声もくぐもっていたはずだしなぁ?)
そう思って悩んでいると無機質な女性の声で「それは、彼女が天使のカケラをその身に秘めているからです。」とどこからか声がした。その声のしたと思われる方向へと顔を向けると、そこには不思議な雰囲気を纏い綺麗なクリーム色をした小さめの鳩が塀に止まっていた。
「えっ?」と光希は戸惑って周りを見回していると、その鳩が話しかけてきた。
「彼女はその身に天使のカケラを持って生まれた稀有な存在です。そのためにあの時あの悪魔に狙われたのでしょう。同じく天使のカケラを持っているあなたの姉のように。」
話しかけてきたのが鳩だということに驚きつつも何故かその鳩のから感じる雰囲気が一度どこかで会ったことのあるような気がして、光希はその感じを思い出そうとしていた。
「あなたがどこかで会ったような気がするであればそれは、私が昨日あなたと会ったからですよ。新木光希。私は昨日あなたに力を授けた天使です。」
その不思議な雰囲気を纏った鳩は、あの時力を与えてくれた天使だった。
次話もよろしくお願いいたします。
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