第二十話 大罪の種
小説を読んで頂きありがとうございます。
光希や朱美達がそれぞれ自分に力を与えた存在とトレーニングしたり出会っていたりしていた時、未だ放置されている大罪の種は順調に成長しつつあった。
『暴食』の種
とある学校の教室で地味目なメガネをかけたショートカットの女子生徒を囲む様にして、髪の毛を茶色に染めた女子生徒を中心にその女子生徒を詰問していた。
「あんた、あたし言ったよね?宿題代わりにしておいてって。なんでできないわけ?」
「…っ、そ、それは、私1人じゃみんなの分をする時間なんてなくて、それで全部できなくて…。」
「あ"ぁ"っ!!何言ってんの?できないなんていわせねぇよ?やれっていったらやるんだよ。他のことよりも優先してな!」
「そ、それは無理だよ…。私も働かないと、お母さんが大変で…。」
「…ちっ。わかってねぇな。」
そう言って茶髪の女子生徒は地味な女子生徒の髪を無造作に掴むと近くの壁へとその女子生徒を叩きつけた。
「あんたはねぇ、あたし達のいうことを聞く以外に優先することなんてねぇんだよ。いいから早く宿題やっとけよ。けっ、金がないから代わりに宿題にしてやったのに、なんもできねぇのかよ。金無しの無能が。」
そう言って茶髪の女子生徒と周りの取り巻き達は、地味な女子生徒を放置してその場を去っていった。
取り残された女子生徒は茶髪の女子生徒達がいなくなってしばらくして静かに泣いていた。
『暴食』の呪い
暴食の種による呪い。
周りの人達からの『喰われる対象』つまり『食い物』扱いされて利用される様にする呪い。周りから『食い物』にされ、その際に生まれる負の感情が種のエネルギーとなり育っていく。心の弱いものや優しいものほど狙われやすくなる。
ルシフェルにより2番目に植え付けられた大罪の種で、徐々に周りへと影響を与え今に至る。周りにいる暗い心を持っている人間を刺激して呪いの持ち主に負の感情を持つように仕向けさせるので、初めから暗い感情を持っていないものや呪いの対象者に対して友情や愛情などの正の感情を持つものには効果は出ない。
『傲慢』の種
「黄之瀬様!どうか!どうか、我が社を見捨てないで頂きたい!長年御社に尽くしてきた我が社にどうかチャンスを!どうか!お願いいたします!今御社との契約を切られると、社員に払うべき給料も払えません!どうか猶予を頂きたい!」
とある会社のオフィスで町工場の社長が大手メーカー黄之瀬グループの代表取締役『黄之瀬順一』に頭を下げて懇願していた。
「どうか!どうか、今の発注分だけの契約でもいいのです!どうかよろしくお願いいたします!」
「……ふむ。」
町工場の社長がずっと頭を下げ続けようやく黄之瀬順一が言葉を発した。
「御社とは長い付き合いで、確かに今回の契約を破棄するという連絡は急であったろう。」
「…っ、では!」
「だが、私の予測した計算では御社とこのまま契約を続けると我が社にマイナスが出てしまうという結果が出た。そのためいますぐにでも御社とは契約を破棄し、我が社に有益を与える他のものと契約をした方が賢いと思わんかね?調べたところ、御社では最近赤字が膨れ上がってきている様ではないか。新規事業に手を出して失敗し、多額の借金を背負ったと。私はその様に不安要素を持つ会社と長く付き合うよりは切り離した方がいいと判断しただけだがね。」
「そっ、それは、その通りでございます…。ですが!次の1回だけ!次の注文までで構いませんので!どうか我が社の製品を買って頂けないでしょうか!このままでは、我が社の社員達の家族が生きていけなくなります!どうか!どうか!」
「うちにその様な無駄なものに使う金はない。帰ってもらおう。」
「なっ!どうか!お願いいたします!このままでは社員は!家族は生きていけません!どうか!お願いいたします!どうか!」
そう言って黄之瀬順一へと叫ぶ社長は近くの警備員に抑えられ、そのままオフィスから追い出されていった。
そんな町工場の社長を黄之瀬順一はまるで理解し難いものを見る様な目でその様子を見ていた。
「ふん、私の思い通りにいかないものや無駄に不安要素をつくるものはいらないのだよ。全て私の考えた通りにいけばうまくいくのだ。それを邪魔するような存在はすぐに切り捨てるべきだろう。」
そう言って社内にある自室へとその場を後にし、その日は他にも同じように赤字を出した会社との契約を破棄し、仕事ができない社員をクビにしていった。
最初の方は社員達も赤字を出した会社やミスをした社員だから仕方がないと思っていたのだが、数多くの会社や人が次々と処断されるようになり次第に次は自分ではないかとみんな恐怖するようになった。
その日以降、黄之瀬グループでは失敗を恐れ1度でも失敗を犯した者へは重い罰か、クビが宣告されるようになった。それにより社内が常にピリピリした空気になり社員は重圧に耐えなければならなくなっていった。だが会社の売れ行きは右肩上がりとなり代表取締役の判断は正しかったと世間でも言われ、誰も大きな声で文句を言うことはできなくなっていった。
だがそれ以降も日に日に会社での失敗は厳しく取り締られ、代表取締役黄之瀬順一は人の心を持たない悪魔だと社内や周りの会社関係者から陰で言われるようになった。
『傲慢』の呪い
自分の考えは全て正しいと思い他の意見は何も聞かないようになっていく。それがエスカレートして最後には自分のいうことこそが正しいと思い、自分以外のものは言うことを聞かなければ必要ないと思うようになる呪い。
ルシフェルにより1番初めに植え付けられた大罪の種で、初めは人との関係を大事にしていた人物だったが呪いにより人格が変化していった。今では例え愛していた家族であろうと自分のいうことを聞かなければ不必要だと思うほどに人格は変化してしまった。
今も成長し続けている大罪の種は悪魔の力となる負のエネルギーをたくさん蓄え続けている。
大罪の種を植え付けたルシフェルはそのエネルギーを少しずつ吸収して力を回復しつつある。
光希達とルシフェルの戦いは少しずつ近づきつつあった。
小説を読んで頂きありがとうございました。
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