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短編作品

作者: 伊勢


桜の花を見てふと浮かんだ言葉を何となくで書いてみたもの。短いです。




暖かな風が吹き、命芽吹く季節がやってききた。

寒い寒い冬を乗り越えて、私たちは一斉に目を覚ます。


美しい羽を羽ばたかせ、大空を舞い躍り

清涼な川の流れに水飛沫を飛ばし泳ぐ。

爽やかな風が新緑の木の葉を揺らしてゆく。

目覚めの音を聞き、陽の光と共にゆっくりと花弁を開かせて私たちは色とりどりに咲き誇る。


時に愛らしく、馨しい香りと共に。

時に苛烈に、棘の生えたヴェールに身を包み。

時に狡猾に、その身に毒を宿して。


春の訪れ、命の目覚めと共に私達はそれぞれ息をする。

その中でも、最も美しく愛されるのはやはり『君』だろう。

可憐で愛らしい姿を咲かせ、君は多くを魅了する。

特にこの季節は、君の季節と言ってもいい程に。


私達は、常に上を見上げている。

空に向かってまっすぐと顔を上げて懸命に背伸びをする。

少しでも美しく、目立つように。

少しでも誰かに見て貰えるように。


けれど、君はいつも下を向いているね。


せっかく大きな体を持っているのに。

それが、私には少し勿体なく感じるんだ。

でも、そのお陰で君の可愛らしい顔を近くで見られるから嬉しくもあるんだ。

常に優しく慈愛に満ちた笑みを浮かべる君の姿はやはりとても美しくて…けれど少し切ない影を覗かせた。

その姿がより一層、君の魅力を引き立たせるのだ。

けれど…出来れば君にはもっと幸せそうに笑っていて欲しい。


ところで君は美しいその姿を

一体誰のために俯かせて花を咲かせているのだろう?



チラ、チラリ…


君が花弁を散らす様はいつ見ても儚く美しい。

けれど、その姿はいっそう切なさに満ちている。


私は君よりもうんと小さくて、誰にも見つけて貰えないような…寧ろいつ踏み潰されるかも分からないほどに小さくて、脆い花だけれど。

いつか、君を笑顔にできるような大輪の花を咲かせられるように立派になってみせるから。


だから…泣かないで。

そんなに悲しそうな顔をして、散って行かないでよ。


ねぇ、きっと迎えに行くから。

だから、待っていてね。


美しくも、儚く可憐な君。

地味で小さな私は、きっと君には全く釣り合わない。

それでも、君を想う気持ちだけは君の背丈よりもとても大きい自信はあるんだ。


…ねぇ、好きだよ。

君を愛してるんだ。


春がすぎて、花が散り

暑い夏がやってきて、君は新緑の衣に姿を変える。

秋にはその衣を脱ぎ捨て、寝支度を始める。

冬は静かに目を閉じて、また春には美しく咲き誇る。


いくつもの季節がめぐったとしても

私はいつまでも君のことが好きで、大好きで。

この思いは君には届かないかもしれないけれど


それでも…




花が咲き誇り、命芽吹く美しくも儚い君の季節。

私は今日も君を愛す。








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