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朝目覚めたら『のじゃロリ』になっておったのじゃがっ!?  作者: クレイジーパンダ
一章『のじゃロリになってしまった件』
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のじゃロリ、親バカに恨まれる


「あらあら、まあまあ……天音ちゃん、また背が伸びたかしら?」



 『天音ちゃん』と呼びかけながらも、宵山茜音の視線は完全にこちらを向いていた。

 その目に宿るのは、強い憎悪。いや……『嫉妬心』だろうか。とにかく、僕に対して強い敵意を抱いていることだけは確実だ。


 どんな方法を使ってもいいから、彼女の視線から逃れたいと思った。

 その願いを叶えてくれたのは、天音であった。



「成長期ならばとうに終わりましたよ、母様」


「あらあら……」



 宵山茜音から僕に注がれる視線を遮るように、間に立ちはだかる天音。依然として強い敵意はひしひしと感じるが、それでも、直接的な視線がなくなっただけでも幾分かはましになった。



「それから……私の友に嫉妬するのはやめてください。助力までしてもらっているのです」


「……仕方ないわねぇ。天音ちゃんがそう言うなら……」



 『仕方ない』。その一言で、彼女は敵意を収めた。ひりひりと肌を刺すような痛みを覚えるほどのものだったが、それもこの一瞬で消え去った。


 解き放たれた僕は、思わずその場で深呼吸をした。また戦も始まっていないというのに、僕一人だけが奇妙な汗をかいていた。



 天音や、黒霧風雅。彼らとはまた系統の異なる気配だった。

 初対面時の天音は、僕に敵意こそ抱いていたものの、それは『警戒心』に近しいものだった。

 以前遭遇した黒霧風雅は、殺気を放ってはいたが、『殺意』ではなかった。どちらかと言えば『好奇心』に近いものだったと思う。僕を品定めするのが目的であったためだ。


 だが、彼女は……宵山茜音は違う。僕に対して明確かつ純粋な『敵意』を向けており、そこに『憎悪』や『嫉妬心』といった負の感情まで込められていたように思える。

 この姿になってから、初めて受けた類のものだ。天音が守ってくれなければ、すぐにでもこの部屋を出ていただろう。



——宵山茜音。宵山家の現当主であり、当主であるにも関わらず、現在は矢光市内にある別邸にて暮らしている。詳しい理由は知らされていないが……『宵山家の風習』だとは聞いている。



 それだけならまだよかった。問題は、そこに『極度の親バカ』というステータスが加わる点にある。

 親バカといえば、それ自体が悪いものだというわけではない。言い換えれば、『子供思いの素晴らしい親』だということだ。


 だが、彼女の場合……僕に向けてくる敵意が、その良心的な親の範疇を超えている。

 何せ、視線に込められていた負の感情は全て、『天音と仲良くしていた僕に対する憎しみや嫉妬心』に由来するものだから。



 そんな僕らの様子を見て、天音は呆れたようにため息をこぼしていた。



「全く……母様もいい加減、娘離れしてください。下の者にも示しがつきません」


「む、娘離れ……? 私が……?」


「何故、世界の終わりでも見たような顔をするんですか……」



 宵山家では、昔からこういったやりとりが当然のように繰り広げられているそうだ。ここ最近では、僕が現れたことによって、天音から宵山茜音へと渡る話の殆どが僕の話題で構成されるようになり、そのせいで僕への嫉妬心が募っているらしい。


……いや、冷静に考えると、天音はそんなにも僕のことばかり話しているのか? 事務的な連絡なのか、それとも、僕が思っている以上に僕のことを大切な友人として扱ってくれているのか。



 それからも、ああだこうだという論争が繰り広げられ、割り込む隙もなくただ呆然とそれを眺めていたのだが……その論争は、突如現れた執事によって中断された。




「宵山家の皆様、篠宮様。全ての用意が整いました。三〇分後に開戦いたします」



 無表情な執事はそれだけ言うと、すぐに部屋から立ち去ってしまった。


 あと三〇分で、戦が始まる。

 今になって、手が震え始めた。不安か、それとも武者震いか。出来れば、後者であってほしい。


 この三〇分間は、最後の作戦会議のために用意された時間だ。そして、このタイミングで漸く、今回用意された戦場の全容が明らかとなる。転移のタイミングでの差別化を無くすための措置だ。


 室内に設置されていた小型のモニターが、触れてもいないのに点灯する。表示されていたのは、上空から戦場を撮影した、いわば全体図だ。



 一言で言い表すならば……『廃墟』。テレビではよく見るような、崩落した建物や色彩が失われた街並みが広がっていた。


 三枝家はわざわざこんなものを用意したのか。技術力にも財力にも驚きだが……何より驚いたのは、その広さだ。

 上空からの全体図では正確な大きさまでは分からない。だが、少なくとも、一般人の走る速度では一時間程度で全て見て回れるほどの規模ではない。

 一体どこに、こんな敷地があるというのか。三枝家の領地となるこの場所は、一体、どこにあるのか。



 そして、その廃墟群の中には、幾つかのアルファベットが割り振られていた。Aから始まりHまでの八つ。廃墟を中心で分割したとすると、その線を挟んで四つずつ配置されている。


 このアルファベットの位置に、今回の戦で使用される『聖石』が配置されている。


 今回の『聖石占有戦』は一〇対一〇で行われる比較的小規模なもので、各地に配置された聖石を陣取りゲームの要領で奪い合うものとなる。

 聖石には二種類あり、四つのうち三つが『小聖石』、一つが『大聖石』と呼ばれる。それぞれに点数が割り振られており、小聖石は一つ当たり二点、大聖石は五点だ。


 開戦時、各陣営は戦場の両端に配置された大聖石と、その直近にある小聖石を一つ陣営のものとして所持した状態だ。点数で言えば、七点。

 ここから、『三時間』の制限時間の間に、残る四つの小聖石や相手陣営の聖石を占拠、占有し、戦が終了した段階でより持ち点が多かった陣営の勝利となる。


 ルール自体は至ってシンプルなものだ。これが一般人による『ただの陣取りゲーム』であったなら。



「作戦は既に伝えてある通りです。……が、写真もあることですし、より確実なものとしておきましょう」


「うむ」



 こちらの作戦はこのゲームのルール同様、至ってシンプルなものだ。黒霧家に勝てるよう、こちらの少ない戦力でも実現可能で効果の高い作戦を練ってきた。


 モニターに表示された全体図を見ながら、天音が、最後の作戦会議を始める。もうじき、開戦だ。

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