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勇者の幼馴染み

作者: むぅたろう
掲載日:2021/05/19

「勇者様、御迎えに上がりました。」


王都からやってきたキラキラしい一団は一人の青年を半ば強制的に連行していった。

青年の名はアルス。

片田舎にある辺鄙でときどきモンスターは出たりするが、基本的にはのどかな村に住む私の幼馴染みだ。


「ニナ、帰ってきたら伝えたいことがあるんだ。待っていてくれ。」


何のことだかよくわからない、などととぼける気はない。わたしはこくりとうなずき、彼を見送った。



それから暫くの時が経ち、彼が魔王を打ち倒したとの報せが村に入った。近々ここにも立ち寄るとの通達とともに。


「ニナ!」


爽やかな笑みを浮かべてこちらに手を振るアルス。少し精悍さがまし、英雄たる貫禄も感じられる。

成長したなぁと感慨深くなりながら手を振り替えそうと手をあげかけてフリーズする。

めっちゃ睨まれてる。


誰にって?


彼の後ろにいる多種多様の美女たちにだよ!


清廉系でボンキュな金髪美女に、エルフなツルペタロリ、ダークエルフなやっぱりボンキュなクール系女戦士、中肉中背なくの一さんに、猫耳のついた子やらなんやら、他にもおとこのこ★の夢を詰め込んだようなおんなのこ☆が大勢…な?すっげぇDARO?


「ニナ、どうしたの、俺だよ?」


わたしは見なかったことにして回れ右してダッシュで離脱したかったが奴のひと言で逃げ出せなくなった。まぁ、そもそも周辺に私以外の人はいないので無理なのだが。

内心ため息を盛大に吐きつつ跪く。


「勇者アルス様、お久しぶりです。」


それを見たアルスは苦笑する。…イケメンは苦笑でもイケてるな。


「そんな堅苦しくしなくていいんだよ?前みたいに話そうよ。」

「はい、わかりました。…私に何か用があるの?」

「うん。ほら、村を出る前に大切な話があるっていったでしょう?その事でさ…」


…うん。多分告白かプロポーズなんだろうなとおもいこんでたんだけどさ。違うんだろうな。

ちらりと彼の後ろのビジョーズを見る。やっぱり睨んでるよ。

とりあえず促してみる。


「それで、話って?」

「うん。…薄々気づいてたと思うけど、俺、ニナを愛してます。」


…は?


「あなたが、私を?」

「そうだっていったけど?」


きょとんとしてるけどこっちがきょとんだよ?


「だって、後ろの女性方は?」

「彼女たちは一緒に魔王を倒した大事な仲間だよ。」


へぇ~そうなんだ~。じゃねぇよ!

じゃぁなんでビジョーズの視線が更にきつくなってんのさ。皆様の視線が確実に彼女が彼氏の浮気相手みるような目付きじゃん!


「…恋人はいないの?」

「恋人?あぁみんな俺の恋人だよ?」


みんな俺の恋人だよ?みんなおれのこいびとだよ…だよ…(フェードアウト


…はい、アウト。わたしの心情的にアウト。

私たちが住むこの国、ナーザというのだけれど、ここではハーレム制は合法です。


ですが。


基本は一夫一妻です。

この村でもみんな一夫一妻です。

つまりこの村で育ったわたしの常識では一夫一妻が基本的ですので!


「そういうことならごめんなさい。」

「どうして?ニナは特別だから第一夫人にってかんがえてるのに!」

「一般の凡人のわたしには勿体ないお話ですし、お断りさせていただきます。それでは…」

「ちょっとお待ちなさい!」


ぺこりと頭を下げて立ち去ろうとすると、ビジョーズがざわめき、待ったをかけた。

ふりむくと、代表であろう金髪美女がいきりたっている。

ちょ、勇者一行が一般人に殺気むけてはいかんでしょうに!


「…何か?」

「アルス様がこうしてわざわざ出向いてくださったというのにその態度は何ですの!?」

「いえ、わたくしめには過ぎたお話でしたので辞退させていただいた次第ですが。」


せっかく穏便に身を引こうとしているのに何が不満なのだろうか。


「わたくしたちだって貴方みたいな何もできない平民を正妻にするなんて反対しましたわ?

でもアルス様がどうしてもとおっしゃるから話し合って合意したというのに!」


いや、そっちの事情なんぞ知らんし。寧ろ合意すんなし。

是非とも私の居る場所から遠く離れた地で存分にイチャコラしてくださいませ。


そんな内心を微塵も表に出さず、悲しげに俯いて応える。

わたしは女優…わたしは女優…。(自己催眠)


「勇者様とあなた方との戦いの中で築かれた絆は深いものでしょう。わたしには到底理解できないほどに…。わたしはきっとその絆に嫉妬してしまいます。ですから、お断りさせていただきます。」


たった数言のこの台詞で金髪美女以下ビジョーズは憤りの表情から同情的な表情になっている。

え、チョロくないです…?

いや、きっと私の下手くそな演技にノってくれてるだけだ。…多分。


話は変わるが、わたしの気持ちはアルスがビジョーズを従えてきた時点で萎えている。

挙句の果てに「みんな恋人」宣言。百年の恋もさめるというものだ。


「それならば仕方ありませんわね。アルス様参りましょう。」


因みにアルスはわたしの拒否の言葉の時から茫然自失している。彼は抵抗もなくビジョーズに連れられて去っていった。

断られたのがそんなにショックだったのだろうか。

というか、あの状況で何故断られないと思っていたのだろう。

幼馴染といえる程に同じ時を過ごしていたというのに、わたしの性質を忘れてしまうくらい濃い旅路だったんだろうね。

 冒頭で暫くの間っていったけれども、大体一年間くらい。その大凡一年間でナニをしたらあんだけの女性たちに出会えるのよ。しかもハーレムって。

たった一年、されど一年。そういえば「男子三日会わざれば刮目して見よ」って言葉があったね、うん。

人って、あっという間に変るんですね…。


しかしまぁ。


「待たされた挙句これかい。」


だがしかし幸いなことにまだ、なんとかまだ、行き遅れという年齢でもない。

こんな辺鄙な村では出会いなど限られているし、旅にでもでるかなぁ。


え?一介の村娘が冒険者に成れるわけないだろうって?

いやね?そうでもないんですよ、これが。

前述にあるように、ここはモンスターが出る村である。

「高レベル」の。

流石に村の周辺は中級レベルくらいまでしか出ない。でも、少し森の中に入り込んだら上級がちょいちょい出る。

そんなところだから村人もみんなある程度は強い。10歳くらいのちみっこでも下級モンスターはヤれます。近くの森に遊びに行って「スライムでたから倒して魔石球飛ばしして遊んできた~!」なんてざらにある話。

木こりのおいちゃんや、狩人のあんちゃんとなれば上級まで対応できるというスペックの高さです。はい。

ぶっちゃけ、アルスが選ばれたのは「勇者」という「素養」があったからに過ぎないのだ。

いや、もしかしたらあの年齢の子たちの中で顔面偏差値が高い少年だったから…かも?


…話がそれまくったが、そんな地域の森の中に入って一人で活動できるわたし。

はい、ご想像通り。めっちゃ強いです。(雑)

以前村に冒険者ギルドというものに所属しているAランクの冒険者が来たことがある。その人に太鼓判を押されましたともさ。


森で暮らす術は両親から得た。というか強制的にやらされた。

物心ついたときから父から狩猟、採取、剣術、体術をまなび、母には家事に料理、さらに読み書き計算や魔術なども学んだ。

それを聞いた冒険者さんはとても驚いていた。一般の平民はそこまでやらないし、もとよりそんな知識もないそうだ。うちの親何もんだよ。

あ、村の人たちに冒険者に驚かれた話をしたら「え、今さら?」とか「あの二人だったら当たり前でしょ?」とか言われた。ついでに両親のルーツについて聞いてみたらみんな揃って冷や汗かいて明後日の方向を向いて言葉を濁したり急に用事を思い出したりして蜘蛛の子を散らすように逃げられた。

うちの親、何なんだよっ…!


全く余談だが、両親はわたしの成人祝い(この村では15歳で成人になる)の場で「世界が俺たちをよんでるんだ!」との宣言を残して旅立っている。今私は18歳だから3年ほど前のことだ。

いや、連日こそこそごそごそなんかやってんなーと思ってたけど、私のお祝いの為だろうなって思って黙ってたのよ。

まさか荷造りとは思わないでしょ。

唖然としていてツッコミも入れる間もなく出てったよ。

時々使い魔づてで手紙や生活費やらが届くので元気にすごしているのは分かっているので別にいいのだけれど。

こう、別にいいとか思えるわたしも大概おかしいのだろうな…。

閑話休題。


世界は広い。冒険者として小金を稼いでひとり身でいても良し、どっかに転がっている恋の種を拾いにいくも良し。

両親との連絡は使い魔でとれるし、今住んでいる家については隣人に管理をお願いするので問題はないし。


「さて、どこに行こうかな?」


勿論、あの方たちがいらっしゃる王都は除外確定ですがね。





拙く雑な物語ですが、お読みくださった方々に感謝です。

諸先生方の影響をかなーり受けているので、どこかで読んだような内容だなーと思われたとしたら、逆に嬉しいかもです。(←ヲィ


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