私は猫
すごく短いですが、猫が恋をするという身分差の物語です
ハッピーエンドです。
吾輩は猫である
短い手足、長いしっぽ、真っ黒な体、金の瞳、唯一の吾輩の自慢はこのピンクの肉球である。
しかしどうした、散歩していたら迷子になったらしい・・・
うむ、困った・・・・高い塀に囲まれていかにも怖いことが起きそうだ
吾輩でもこの壁は越えられそうもない・・・
そのとき向こうからいい香りがした。なんとも甘い・・・・
ふらふらと香りに誘われて歩いていくとひょいと誰かに摘ままれた
首がぐえっとなる
するとどうしたことか、目の前に金の瞳、真っ黒な髪の美丈夫な顔があるではないか
吾輩は慌てた・・・
人間の姿で耳が生えているのは、王族だからだ。このオーラも間違いなくそれだ
もう死んだな・・・・王族の縄張りに入ってしまうとは・・・・
吾輩はまだ15である。人にもなれぬこの体はただの猫
王族以外でも人型にはなれるのだが、それは魔力が強いものであって吾輩は無理であろう・・・
15まで猫なのである。
ここはおとなしく死を待とう・・・・
しかしいい香りだったな・・・きっと食べたらおいしいに違いない・・・
その時美丈夫が声を発した
「・・・見つけた・・・俺の番だ・・・・・」
そういうと愛おしそうに抱きしめた
吾輩はよく意味が分からなかった・・・
暖かい腕の中周りがご乱心を・・・王!!そんなはずは!!と聞こえるのは気のせいであろう
香りはこの王族からしているようだった、甘い香り
ニャァオと鳴いてみる
するとベロリと顔をなめられた
なんでか震え上がった・・・
それから吾輩は王の猫となった
日中のお仕事は王のお膝で寝ること
夜は王の隣で寝ることだ。この王は寒がりらしい。ずっと吾輩を抱いて寝るのだ
そう、この王族、獣人の王様だったのだ。
吾輩も学がたりぬと恥ずかしく思った。
それから異変が起こった。苦しかった・・・熱を出した
王が毎日毎晩そばについてくれた
医者も原因がわからぬと・・・
ああ・・・もう死ぬのだと思った・・・
吾輩は贅沢だった・・・野良なのに拾ってもらい、暖かく、とても幸せだった・・・
そして、猫の分際で・・・・
王に恋をした・・・・・
その罰だ・・・一言ありがとうと伝えたい・・・
好きとは言えない・・迷惑かけるから・・でもずっとペットでいたかった・・・
それから幾日か過ぎ、吾輩は・・・真っ黒な髪と、金の瞳の女の子になっていた・・・・
王は泣いて喜んでくれた・・・・
よく生きていたと・・
でも吾輩は心配だった。
自慢の肉球がなくなってしまった
ペットとしてお膝に座ることも添い寝して温めるのも嫌がられるかもしれないと・・・
でも、王様は、この時を待っていたと喜んでくれた・・・とても可愛いと・・
今まで以上に愛おしいと・・・・
吾輩も、愛しておる・・・・
もうすぐ吾輩は王族になる。猫が初めて王族になるのだ
レアなことらしい
吾輩を毎日愛していると告げる王がひとつだけ結婚したら治してほしいことがあるそうだ
吾輩ではなく、私と言ってほしいらしい・・・・
うむ・・・精進せねばなるまい・・・・
私は猫である・・・・
今は、いとしい我が子を手に抱き、愛する夫と毎日を送る幸せな猫である