赤髪の魔女
一人街を彷徨う事数時間、フーベルトはある女性と出会った。
彼女は燃えるように赤い髪を束ね、黒いコートを身にまとっていた。
彼女もまたノヴァンゲルド出身であり、人前では常に深くフードを被っていた。
フーベルトはすぐに彼女が魔女だと察した。
度重なる魔物と人間の戦争の後、国家規模の魔女狩りが発生し、彼女もまたその標的だったからだ。
「だから貴方は顔を隠すのか」フーベルトはすぐに理解すると同時に、彼自身魔女狩りには抵抗がある事を伝えた。
ノヴァンゲルドには魔女が多く、フーベルトはそんな魔女達と育ったからだ。
彼女はフーベルトを隠れ家へと誘った。
彼女の名はケルトといった。
フーベルトがある女性を探しているというと、彼女はその女性、イェネックを知っていると答えた。
ケルトは伝統的な錬金術で薬草を調合し、薬を生成する事で利益を得ていた。
イェネックもまた魔女であり、錬金術師だった。
彼女達はそれが理由でお互いの事を知っていたが、ケルトは何故彼女が失踪したのかは知らなかった。
彼女はフーベルトにある薬を渡すと、これが「秋ツバキ」という薬である事を伝えた。
どうやらこれを飲む事でケルトのイェネックについての記憶を共有する事が可能だが、失敗した場合街中に響き渡る叫び声をあげる事になるらしい。
フーベルトは覚悟を決めると、その苦い一滴を喉奥に垂らした。
彼は次第に目眩を起こすと同時に、イェネックの声が聞こえると報告した。
どうやら成功のようだ。