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18話゜本気の夏祭り計画!

「ひどいっすよ、センパイ。それに鈴本さんも」

 俺と鈴本さんは今、高梨に怒られている。

「なんで俺を置いていくんすか」

「起こしたんだぞ? 起こしたんだけど、お前が起きなかっただけだ」

「あぁ、祐の言う通りだ。髪の毛を引っ張ったり、軽くビンタしてみたり、俺の足の匂い嗅がせたり色々したのに起きなかったんだ」

「ちょっ!? 鈴本さん何してるんすか!? オェェ」

 鼻を抑え、目を大きく開き吐いた。それはもう滝のように。


「じょーだんだよ、冗談。俺はそんな事しない」

「あぁ……良かったっす……吐き損じゃないすか」

 吐き損とはなんだろうか。それに冗談ではなく本当だ。もっと言うならばおならも高梨の顔の前でしていた。

 まぁ、言わない方がいいだろう。


 しばらく言い訳タイムやらしていると、少しイライラしている様子の守山さんが入ってくる。

「お前らな……時間は守れって言ってるよな?」

 あっ……そういえば30分後に本堂の入口に来るようにと何度も言われていた。

 すっかりそんなことを忘れていたと言えば、怒って何をされるかわからない。ここは嘘をつこう。

「すみません! 鈴本さんが、『俺の嫁を見てほしいんだっ!』ってしつこいせいで……」

 すまん、鈴本さん。

「はっ!? 俺はそんなことっ……!」

「そうなんすよ、俺とセンパイは早く行こうとしてたのにずっと食い止めて来たんすよ」

 高梨はケロッと俺の嘘に乗っかった。

「はぁ……まぁいい。とりあえずこい、私は先に行っている。場所はわかるよな?」

「えぇ、さっき案内してもらったんで。すぐ行きます」

 珍しく怒らない。実家でお寺というせいか少し落ち着いている気がする。

すぐ行くといいつつ、それから15分間。1度言い訳に使った嫁の話から話題が広がり、本当に鈴本さんの嫁(二次元)を見せられ熱く語り続けた。

乗り気じゃなかった俺と高梨は半ば強引に話を止めると、早く行こう。と鈴本さんを引っ張り出した。

「ちょっ! まだ、俺の話!」

「はーいはい。後で聞きますよ。ね、センパイ」

「あぁ、聞いてあげますから。行きましょ」



 所々腐敗している長い木の廊下を渡る。右側を見ると日本庭園と言ったところだろうか、石に囲まれている小さな池、大きな松の木が池の左右にそびえ立っている。

 しばらく見とれていると、柱に顔を思いっきりぶつけた。

 ゴンッという鈍い音がしてそのままかがみ込む。

「ってぇい!」

 思わず変な声に出してしまう。

「プッ…なにしてんすか、センパイ」

「よそ見してるからだぞ祐……フッ」

 二人とも俺が痛い思いをしたというのに、今にも吹き出してしまいそうになっている。


「笑うな!」

「まだ……笑ってませんよ……まだ……フフっ」

「失礼だぞ、高梨くん。確かに面白いが」

 笑ってませんと言いつつも、我慢の限界が来たのか口を抑え、目を背ける。

 鈴本さんもフォローしたのかと思いきや、下唇を噛み笑いをこらえている。

 何事もなかったかのように俺は「早く行くぞ」と先頭を切って本堂へスタスタと向かう。

 だが遂に限界が来たのだろうか、二人とも同時に吹き出した。


「なんで笑うんだ!」

「いや……だって……てぇいっ! ってなんすか」

 腹を抱え涙を流しながら馬鹿にしてるように笑う。

 正直ムカつく。

「うるせっ! 早く行かないと怒られるぞ!」

 2人に笑われた俺は少し恥ずかしくなってしまい、ちょっと顔が熱い。そんな状況を悟られぬよう顔を見せない。

 俺の後ろをついてくるふたりはまだ笑っている。何がそんなにおかしい。

 そうこうしてるうちに本堂へついた。


 ついさっき見たばかりだがやはり、大きい。古いはずなのにその古さを感じない。内装も畳が一面に敷かれ、真ん中には大きな仏像が飾ってある。

 金ピカでずっと見てると目がチカチカしてしまいそうだ。

 俺の事を嘲笑っていた高梨と鈴本さんもその光景に思わず見とれている。

「すげぇ……」

 周りに聞こえるか聞こえないかのボリュームで呟く。

「やっと来たか。遅いぞ、お前ら」

 声のする方を見ると、そこには紫色の落ち着いた着物を着ている守山さんが立っていた。

 あまりにも新鮮すぎて一瞬誰かと思った。


「似合ってますね、その着物」

「そうか? 私はあまり好きじゃないんだけどな、親が着ろとうるさいもんで。まぁ、ありがとな」

 ちょっと照れくさそうにしている。

 この姿だけ見ると少し綺麗なんだよな.......。

「しずかさん。めっちゃキレイっすよ!」

「あぁ……」

 鈴本さんは鼻の下が伸び、守山さんの着物姿に心を奪われ見とれている。

 あぁ、こりゃあ完全に落ちたわ。

「まぁ……その、あれだ。目的を言うぞ」

 褒められることに慣れていないのがどことなく分かる。

 いつもよりもぎこちない。

 ゴホンっと1度咳払いをすると、先程から言っていた今回の目的を発表する。


「えー、この村で毎年行われる夏祭りを盛り上げるため、来てくれてとてもありがたい」

 半強制的に連れてこられましたけどね。

「何故みんなを呼んだか。それはなにか作品に活かせることがあるかもしれない。そう思ったところだ」

 はて、本当にこの経験が活かされることがあるのかは定かではないが。

「そしてお前達にはこの祭りに大勢の人が来るよういいプランを立ててほしい」

「いい……プラン?」

「あぁ。若いからこそできることがあると私は思う。その作家らしい柔軟な発想で最高の祭りにして欲しいんだ! いいか?」

 この祭りを盛り上げたいという熱意がすごく伝わる。

 もうここに来た時点で断ることも出来ないし、ちょっと楽しそうでもある。


 夏祭り本番まであと4日。この短期間で俺たちに何が出来るか、どこまで出来るかそれは分からない。

 だが、やらないよりはやった方がマシだ。その気持ちは高梨も鈴本さんも同じなようで、やる気に満ち溢れている。



 久しぶりに本気出してやろうじゃないか!

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