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15話゜やはり俺は書いているのが好きなんだ

 夏実に告白をされてから日が経ち、7月半ばに入り、ついに夏本番を迎えた。

 いくら夏だとしても、暑すぎる……

 梅雨も終わったが、じめっとした日が続いている。


 教室はエアコンがついているけれど、設定温度28度では物足りない。

 節電のためなのは知ってるが、もう少し低く設定してくれてもいいだろ……


 きっとクラスのいや、学校中のみんなもそう思っているはずだ。

 しかも俺の席は窓側の端のせいで、エアコンが当たらない場所だし、直射日光で左頬が焼けるように熱く痛い。


 ただじっと座っているだけなのに、汗が溢れ出る。

 ワイシャツの第2ボタンを外し、下敷きを取り出し、服の中に空気を送り込む。

 最初は汗をかいていたところに冷たい空気が入るので涼しかったが、しばらく続けていると涼しさが感じなくなったと同時に、腕が疲れてしまった。



 周りを見るとみんな同じことをしている。中にはシャツを脱いで、半袖の体操着になっている人もいる。

 この中授業に取り組むのは無理だと思い、俺は先生にトイレに行ってきますと伝えたが、トイレには行かず自販機で冷たいお気に入りのアイスココアを買うと、よく執筆をする時に使っている部室へ行く。



 この部屋のエアコンはついていないけど、その代わり扇風機が付いている。

 それに、ちょっと日陰になっているため他の部屋に比べるとちょっと涼しいのだ。


 特に何もすることがないので、扇風機を自分の目の前で止め、アイスココアをごくごくと飲む。

 授業が終わるまでは、まだ後30分ある。その間スマホを取り出し、小説にいかせるメモを取る。


 静かな空間でぼんやりとしていると、湧き水のように溢れ出てくるのだ。

 それとともに、既に書いてある話や、メモの改善点も思い浮かんだりする。


 んー……やっぱ暑い……そのせいかあまりいい案浮かばねぇな。

 なんもすることないな……





 んっ……ふぁぁ……やべ、寝ちまった!!


 よだれを拭き取り時計を探す。俺から見てすぐ目の前にあるが、寝ぼけてたのだ。

「あっ、やっちまった……」

 出た声は小さなその言葉だけだった。本当にやばいと思った時はこうなる。


 そういうわけで時刻は13時10分。俺が来たのは2時間目の時、10時20分ぐらいだった。かれこれ3時間ほど寝てたことになる。

 さすがに寝すぎじゃないか?


 とりあえず早く教室に戻らないと、やばいと思った俺は、考えた結果体調を崩したフリをすることに決めた。

「具合が悪くてちょっと涼しんでいましたー」的なことで誤魔化せば大丈夫だろう。

 そして俺は何事も無かったかのように、自分の机に座ると寝たフリをする。


 いつもなら若林と会話をしているところだが、部活の遠征で今週一週間は特欠だ。

 夏実とは最初こそは、お互い変に意識して話しかけずらかったが、いまは今まで通り普通に接している。



 ************


「襟元、正直にいえば怒らない。本当に具合悪かったのか?」

「すみません……嘘です」

 俺は生徒指導行きへとなった。流石におかしいと思われたのだろう。


「はぁ……遅刻がなくなったと思えばサボりか? かろうじて出席日数は足りてるからいいけどなぁ……これから大切な時期たんだ、分かってるよな?」

「はい、重々承知です」

「お前はなんだ、進学するのか? それとも就職なのか?」

「このままラノベ作家……ですかね」

「俺には人の将来に首を突っ込む権利はない。だが作家はそんなに甘い職業じゃない」

 何故か妙に説得力ある言葉に感じる。


 甘い業界では無いのはもちろん知っている。現役のラノベ作家として経験しているし、そんなのは沢山見ている。

 何度も賞に落ち、消えていく者。作品がヒットしたのはいいものの、その後のプレッシャーに押しつぶされ辞めた者。書籍化はしたが、全く売れずこれまた辞める者。そんな人達がごまんといるのがこの業界だ。


 そこそこ売れて、そこそこ期待される。そのぐらいがちょうどいいってのもある。


「そんなことは知ってます! でもこれは俺が決めたことなんです! 中学生の頃、先生には絶対にやめろと何度も言われ、しまいには原稿を破かれ捨てられたんです」

 面倒いと思っていても、投げ捨ててしまう時があっても、やはり俺は書いているのが好きなんだ。


 俺はそう思い背もたれに穴があいて、綿がでている1人掛け用ソファーから勢いよく立ち上がり、会議などで使われる折りたたみ式のテーブルを、思いっきり両手を開いた状態で叩きつける。


 突然の事で驚いたのか、鬼塚(おにつか)先生は呆然としている。


「あっ…その、すみません」

「いや、大丈夫だ。そっか、お前は本気でこのままでありたいんだな?」

「はい! もちろん厳しいのは知ってます、現に今もそうです。締め切りは守れませんし、投げ捨てる時もあります。けれど、自分にはこれがあってる気がするんです」

「それならこれだけは言っておく、何かしらの資格は取っておけ、そうすればいざとなったら自分のためになる」

「分かりました」

「じゃ帰れ、今回は厳重注意だ。次はないぞ」

「はい……すみませんでした」

 失礼しましたとお辞儀をして扉を閉める。


 はぁ……やっぱ緊張するな、慣れてるはずなのにおかしい。

 いや、慣れてる方がおかしいか。



 1度帰ろうかと思ったが、まだ外は暑く涼しくなったら帰ろうと思い部室へ行き、音楽を聴きながらWeb小説を読む。


 この作家さんの話すげぇ面白いんだよなー、しかも俺と同じ年齢らしいし、なんで人気でないのか不思議だ。

 いつか会ってみたいなーと思いながら読んでいると、これまたあっという間に時間が過ぎてしまい、急いで鍵を閉め学校を出る。


 もう17時を過ぎているというのに、空はまだ明るくまだ涼しくはない。

「なんでこんな暑いんだよ、アイス買って帰ろ」


 近くのコンビニに寄り、ソーダ味の棒アイスを買うと溶けて垂れてしまう前に食べ家に帰った。

久しぶりの更新となりました。


今後ともぜひ応援してくださると嬉しいです!

また、ご感想などもよかったらお願いします!

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