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短編集

霊の恋と肉の恋

作者: 三郷 柳


 なぜ、処女であることを否定されなければならないのか。

 経験がないことが私の欠点であるかのように、そう思わせたのは何人もの男たち。

「君もその中の一人だね」

 そう言うと、

「いや、でもさ。触られるのも嫌なんでしょ? でも彼氏が欲しいって正直無理じゃん?」

 男の人はそう答える。

 まるで私が異物であるかのように扱う。私が間違えているかのような物言いをする。


 私が恋の話をすると、男は性の話をする。

 どうしても分からないのだ。セックスを否定しているわけではない。けれどそれは、恋愛の先にあるものだと思うのだ。セックスできないから恋愛もできないという彼らの理論は破綻しているように思われる。時間をかけて、心を許した後ではダメだというのか。今すぐに体を繋げたいという考えは、肉欲であって恋愛ではない。

 ロマンチック・ラブ・イデオロギーなのだろうか。恋は綺麗なものであると思い込んでいるのだろうか。「これだから処女は」と言われるだろうか。

 男たちに処女であることを笑われ、性的な話をされる度に、私は女という入れ物に閉じ込められているような感覚になるのだ。自分が支配されるだけの存在に成り下がったような、自由を奪われたような感覚。女であるということをまざまざと思い知らされる。私という個人が、性的対象にされた瞬間に女の中に閉じ込められるのだ。私は殺されて、女という記号にされてしまう気がしてならないのだ。

 私が性関係を恐れているのは、自己が強すぎるからなのだろう。私という人間でいるために、性別はそれほど重要ではない。私は今のままで、処女である今のままで個の人間として存在し得る。性別を取っ払ったとしても、人を愛せるのではないだろうか。私は、自分が女であることを否定しない。けれど、誰かの手で女にされることは耐え難いのだ。セックスは「お前は女だ」と押し付けられる行為のように思える。それがどうしようもなく怖いのだ。私を奪われるような気がして怖い。

 恋の捉え方がきっと違ったんだろう。私は清いものだと思っている。彼らは体の関係とイコールだと言う。どちらも間違えてはいないのだと思うし、正解もないと思う。

 だからきっと、何歳の処女であろうと好奇の目で見られる謂れはないし恥じるものではない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。 戯言としてお目汚しをお許しください。 私は、恋愛という対人コミュニケーションはグラデーションで、「片方の極致が性行為」という立場です。 なので、男×女でも男×男でも女×女でも…
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