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33.家族と、結婚式と

 パーティーが終わった後、一泊お屋敷に滞在して、私達は家に戻ってきました。お母様とお父様とばあやにパーティーの出来事を話して、そしてロンダの結婚について話していました。


「じゃあ…ミューゼル卿と結婚した後に旅立つってことなの?」

「うん。ヨーゼフ……と、一緒に行きたいし。でも、結婚もせずに行くのはお母様を心配させるからって」

「そう…」


 お母様がそっとロンダを抱きしめます。


「あなたが選んだ道ならそれでいい。ロンダには随分と私の理想を押し付けてしまったから…幸せになるならそれでいいわ」

「お母様…」

「でも…寂しくなるわね…」

「っ……」


 お母様のロンダを抱きしめる力が強まります。


「寂しいよおぉぉぉ! そんな二人もお嫁に行くなんて聞いてないよぉぉぉ!」


 お父様が号泣しだします。

 それにお母様は先程までもしんみりとした顔ではなく、キッとお父様を睨み付けます。


「ええぃ、うるさい! 娘の幸せのために我慢なさい!」

「そんなぁぁぁ! 冷たい! カーリー!」

「娘との抱擁を邪魔しないでください! 雰囲気ぶち壊しです! 縛りますよ!」

「冷たい! 冷たい! …でも、そんなとこも好き」

「……マリア、縄を」

「はい、奥様」

「ひどぃぃぃ!」


 あ、お父様がす巻きにされて、転がっていきます。大丈夫でしょうか。それを見届けて、お母様は盛大にため息をつきました。


「ねぇ、お母様。私達がいなくなったら、このおうちはどうなるの? お父様のいる本宅に戻るの?」

「いいえ。ここに残ります。今さら王都の本宅になんて行けません。ここはあなた達との思い出があります。どこへも行けないわ」

「でも、お母様…寂しくない?」


 そう言うと、お母様が目を細め私達の頭を撫でました。


「大丈夫よ。心配しないで」

「でも…」

「それなら、僕がこっちに来るよ!」


 縄脱けしたお父様がこちらに来ます。


「元々、カーリーの弟のリム君の子供が僕の仕事を手伝ってくれていてね。なかなか筋がいい子だから、ロンダの旅立ちをきっかけに向こうでの仕事はほぼ任せようと思ってるんだ~。だから、帰ってくるよ」


 にこっと笑ったお父様にホッとしているとお母様が鬼の形相です。


「なんですか、その話! 初めて聞きましたよ!」

「うん。今、言った」

「……マリア」

「はい、奥様」


 あ、また縛られました。そして転がされます。本当に大丈夫でしょうか…


「お父様が帰ってくるそうなので、私の心配はいらないわ。それよりも、ロンダの結婚式はいつにしましょうか。というかミューゼル子爵にもご挨拶に伺わないと」

「それなら、ヨーゼフ……が、ミランダと一緒にやったらどうかって」


 え!? ロンダと一緒に。

 なんて素敵な提案でしょう!


「ロンダと一緒にやれるなんて嬉しい!」

「でも、それは、神の加護にそぐわないんじゃ…」

「どうなんだろ。ヨーゼフ……がアルファ様に掛け合って陛下に言ってくださるそうだから、なんとかなるかも?」

「そんな呑気な…」

「でも、そうなったら本当に素敵よ! ロンダと一緒なんて、最高の一日になるわ!」


 興奮さめやらぬまま言うと、ロンダが微笑みます。


「私もそうなったら嬉しい」


 それに微笑み合いました。


 こうして、結婚式の準備はつつがなく進んで言ったのです。



 ◇◇◇



 結婚式の準備を進めている中、私はテントにこもってあるものを作ってました。それはこの地方にまつわるお守りです。小さな腕輪のようなもので、子供でも作れる簡単なものです。


 ですが…

 私ったら、本当に裁縫はダメです。

 不器用すぎます…


 なんで紐がぐちゃぐちゃになるんでしょう…これで、もう10本も無駄にしてる…


「はぁ…」


 ため息をついた後、ふとアルファ様の肖像画が目に入りました。

 それにふっと力が抜けます。


「…そうですね。ロンダのために頑張ります」


 これから旅立つロンダのために、旅の無事を願って。私はアルファ様の肖像画に見守られながら、せっせとお守り作りをしていました。



 ◇◇◇



 そして式当日―――


 私とロンダは同じ衣装に身を包み控え室にいました。なんと、お城の教会で式を挙げることになったんです!


 経緯は教えてくれなかったのですが、”陛下と皇后陛下のご好意だ”とアルファ様はおっしゃってました。きっと、お二人が尽力してくださったに違いありません。感謝です。


「ミランダ、綺麗ね」

「ロンダも」


 向かい合わせになるとまるで鏡のような私達。


「どうしよう、幸せすぎて…」

「こら、泣かないの。しょうがないわね…泣き虫な所は変わらないんだから」


 ロンダが目を細めて私の肩を抱きます。


「まさかこんな風になるなんて思わなかったな…」


 ロンダの言葉に顔をあげます。ロンダは懐かしむような眼差しで昔のことを話し出しました。


「ちょっと、身代わりをしてもらっていた時のことを思い出したの。あの時、駆け落ちなんてバカな真似しなくてよかったなって…」

「ロンダ…」

「ミランダとこうやって一緒に結婚式を挙げられる。こんな日がくるなんて夢でも思わなかったわ…」


 そう言われて私もすでに遠い記憶になってしまった身代わりのことを思い出します。


 テントにこもって冒険の本を読んでいたあの頃、まさか愛する人ができて、結婚するとは思ってもみませんでした。


「ロンダのおかげよ」

「え?」

「ロンダが身代わりなんて言い出したから全ては始まったわ。ロンダが築いてくれた未来なのよ」


 ふわりと花が開くように笑います。


「ありがとう、ロンダ。私、とっても幸せよ」

「っ…」


 今度はロンダが目頭に涙を溜めていました。


「やだ。もう! 化粧が落ちちゃうじゃない!」

「ふふふっ」


 その時、ノックがされて「準備はできましたか?」と言われました。私達は手を繋いで歩き出します。


「ミランダの好きな物語風に言ったら、今日の結婚式は堂々のフィナーレ!って感じかしら」


 ロンダの言葉に笑って首を振ります。


「違うわ。新しい幕開けよ」


「だって、これからも私達の素敵な日々は続いていくんですもの」


 そう言うとロンダは「そうね」と微笑みます。


「急がないと。旦那様達が首をながーくして待ってるわよ」

「ふふっ、そうね」


 私達は笑い合いながら、式場へと向かいました。



 ◇◇◇



「ひっく…えぐっ…えぐ」

「もうお父様、そんなに泣いたら服が涙でびしょ濡れよ?」

「だあってぇ…ロンダぁぁぁ」

「お父様、ハンカチで拭いましょ」

「ありがどう、ミランダぁぁぁ」


 教会に入る前の扉の前でお父様が号泣しているので入るに入れません。


「ほら、鼻をかんでください」

「うん…チーン!」

「ほら、お父様、行きますよ」

「うん…二人とも幸せになるんだよぉぉ!」


 また泣き出してしまったお父様に私達は困ったように笑って、扉が開かれました。


 祭壇の前にはアルファ様とヨーゼフ様がいらっしゃいます。二人ともお父様の様子に気づいたようでギョッとした顔をしています。

 お母様が親族席に居て、かなり怒った顔をしています。

 それがいつもの光景なので、私はくすっと笑ってしまいました。


 一歩、また一歩とアルファ様に近づきます。優しい顔で待つアルファ様に込み上げてくるものがありました。


 この人と出逢って、トキメキを知りました。

 この人と出逢って、恋を知りました。

 この人と出逢って、恋の苦しさを知りました。

 この人と出逢って、一歩踏み出す勇気が持てました。


 この人と出逢って、強くなろうとしました。

 この人と出逢って、自分の弱さを知りました。


 この人と出逢って、二人で乗り越える力を持てました。


 そして…


 この人と出逢って、愛を知りました。



 全てアルファ様に教えてもらったことばかりです。その感謝を込めて私は神に誓います。



 ――この人と一生、添い遂げることを。



 お父様の手から離れ、アルファ様の手を取ります。指輪の交換がされ、ベールをまくられます。幸せそうなアルファ様の顔に私は微笑んで目を瞑りました。



 永遠の愛を誓うキスは神父様が呆れて咳払いをするほど、情熱的でした。



 ◇◇◇



 教会から出ると、顔見知りの方々がライスシャワーと共に出迎えてくれます。


「おめでとうございます!ミランダちゃん、ロンダちゃん!」


 エミリアちゃんとバロック様の姿が見えました。二人で仲睦まじく並ぶ姿に微笑みました。そして、飛び交うライスシャワーとおめでとうのアーチの中を私達はゆっくり進みました。


 祝福のシャワーの中、私達四人は、幸福の笑みを浮かべていました。



最終回のような雰囲気ですが、まだ続きます。

エピローグがあります。


あと、お察しの方もいると思いますが、誓いのキスが長かったのはアルファの感情が爆発したせいです。

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