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22.旅立ちへのカウントダウン【婚約編end】

だいぶ、間が空きました、すみません…

 家に戻ってきた私は、やはり戻ってきたお母様とロンダにアルファ様との結婚の話を伝えました。

 二人ともとても喜んでくれて…涙ながらにロンダにおめでとうと言われた時は、私も涙がこぼれました。


 そして、今日はヨーゼフ様を交えて結婚のご報告と感謝を伝えるために集まりました。ロンダに聞いたところ、アルファ様の所へ行けるとアドバイスをくださったのは、ヨーゼフ様だと聞いたからです。


「色々とありがとうございました」

「そんな、かしこまんないでよ。俺はただアドバイスしただけだって」


 ヨーゼフ様はそう言ってくださいますが、肖像画といい、行くこといい、本当に助けられてばかりです。


「ヨーゼフ様のアドバイスがなければ、アルファ様とも会えませんでしたし、それに…」

「結婚の話もずっと後だったかな?」


 ズバリ言われて頬に熱が集まります。こくんと頷くと、ヨーゼフ様がにこりと笑いました。


「おさまるところにキレイにおさまったって感じだね。よかった、よかった」


 その言葉があたたくて、私も自然と笑うことができました。


「ところで、ミランダちゃん」

「はい」

「キスは上手くできた?」

「……?」


 ヨーゼフ様の言葉の意味が分からなくてキョトンとしてしまいます。たっぷり時間をかけてヨーゼフ様の言葉を反芻します。

 キスは上手くできた?

 キスは上手くできた?

 キスは…って、ヨーゼフ様はキスのことで困っていた私をご存じなのね!?


 わぁぁぁ…どうしましょう! なんてお答えすれば、いいのかしら…できましたよとか? …ええ!? そんな、恥ずかしい!


「何を聞いてるんですか!?」

「えー、だって気になるでしょ? 俺のアドバイスがきいたのか。ぶどうで練習したんでしょ?」


 ぶどうで練習…はっ。それもヨーゼフ様のアドバイスだったのですね。それはすごいありがたいアドバイスでした。

 と、いうことはヨーゼフ様はキスの先生になるのかしら? 先生だったら、きちんとご報告しないと!

 私は意を決して、ヨーゼフ様を見つめます。


「できました!」


 その一言にロンダは固まり、ヨーゼフ様は口笛を吹きます。


「その…口を開いたら、舌が入ってきて…でも! ぶどうだと思えばどうにか舌を返すことができました! それにアルファ様にもキスが上手だと言われましたし、たくさんキスをして頂きました!」


 そこまで言い切って、はたと我に返ります。

 きぁぁぁ! 私ったらなんてことを!!

 恥ずかしいことをベラベラ喋ってしまった羞恥心で顔がとんでもなく熱いです。


 でも、変です。

 報告したのに、二人の様子が変な気がします。ロンダは真っ赤になって肩を震わせているし、ヨーゼフ様も口元を押さえてどことなくお顔が赤いような。


「やっば。すごいムラムラしてきた。ロンダちゃん、俺達もしよう、今すぐ」

「自重してください!!」


 その後、ヨーゼフ様とロンダがなにやら攻防戦を繰り広げて、うやむやなままにお茶の時間は終わっていきました。



 ーーーー



「まったく、ヨーゼフ様ったら、本当に!」


 キスをせがまれたロンダは、最終的にはヨーゼフ様を張り倒してそのまま歩き出しました。私は慌ててロンダを追います。ブツブツと文句を言うロンダに私はずっと思っていた疑問を口にします。


「ロンダはヨーゼフ様のことを好きではないの?」

「はい!?」


 変な声を出してロンダは立ち止まります。その顔は驚きつつもどこか赤くて、照れているだなってすぐ分かりました。


「ヨーゼフ様といるとロンダは楽しそうだから。そうなのかなって思ったの」

「振り回されているだけよ。いっつも、いーっつも、人のことをからかって! 本当に腹が立つ!」


 そう言ったロンダの顔は怒っているようでどこか寂しそうでした。そんな顔、してほしくないな…


「ロンダはヨーゼフ様が好きなのね」

「へ!? 私は! 別に! そんな!!」


 真っ赤になって否定するロンダが可愛らしくて、くすりと笑ってしまう。それにロンダはムッとした表情を見せました。


「なんかミランダ、変わったわ」

「え?」

「根本的なところは変わらないんだけど…そうね。強くなった気がする」


 強く?

 その言葉の意味を考えていると、ロンダは切ない瞳で私を見つめます。


「一人で会いに行っちゃうし、もうお姉ちゃんは必要ないかな」


 必要ない?

 それって…


 ロンダはそう言うといつもの明るい笑顔で言いました。


「ねぇ、ミランダ。私、ミランダが結婚したら、旅に出ようと思う。夢だった火をはく竜を探しに行くわ!」


 キラキラと眩しい笑顔。いつも憧れていた笑顔でロンダは別れを言う。私は言われた意味が分からなくて、固まってしまった。

 旅に…それって…


「お母様とパーティーのお手伝いをして思ったの。ああいう華やかな場所も素敵だとは思うけど、私には合わないわ。私はね、自分の足で自分の人生を切り開いていきたいの」


「世界を見て回りたい。前にミランダが『信じた方が世界が素敵に見えるもの』って言っていたみたいに、きっと世界は素敵なことであふれているわ!」


「だからね、私は自分で見て回りたい。そして、ミランダにも見てほしい。私が回った世界のことを。そのために絵に描いてくるわね!お母様にはもうお話したわ。だから…だから…」


「泣かないで、ミランダ…」


 私はロンダの姿が見えませんでした。次から次へと涙があふれて止まらなかったからです。

 ロンダの旅立ちを応援したい。夢を応援したい。大好きなロンダのことを誰よりも応援したい。なのに…涙があふれてとまらない。


「大丈夫。今すぐ別れるわけじゃないから…」

「ごめんなさいっ…私…」


 ロンダは泣きじゃくる私をそっと抱きよせました。


「私達はそれぞれの道を歩き出すわ。ミランダはアルファ様と結婚して、私は旅に出る。だから…」


「これからゆっくり、別れの準備をしていきましょう」


 別れの準備…

 そうか。そうだわ。

 ずっと覚悟していたじゃない。アルファ様と出会う前からずっとずっと…

 ロンダが旅立ってしまうその日を。

 でも、それがこんなに苦しいものだなんて、私は想像できていなかった。


「大好きよ、ミランダ。大好き」


 抱きしめる手が強まる。ロンダの声が涙声に変わる。


「私も…! ロンダが…大…好きっ…」


 吐き出すように言った言葉はかすれいて上手く言葉にならなった。それが今の私ができる精一杯。


 ごめんなさい、ロンダ。

 私、もっと強くなるから。

 笑ってロンダの旅立ちを見届けるようになるから。


 だから、今はごめんなさい…


 ロンダの体を抱きしめながら、私は繰り返し繰り返し心の中で謝り続けました。


 そして、アルファ様の言葉をふと思い出しました。


『結婚すれば、私の領地に行かなければならない。君は大切な両親や姉と別れることになる』


 アルファ様、ごめんなさい。私はちっとも分かっていませんでした。アルファ様の言葉が。アルファ様のお心が。


 でも、嘆いたところで、先に進むしかありません。


 だから、私はもっと強く。

 強くなろうと決意したのです。



 next…結婚準備編




婚約編が長くなったので一旦切ろうと思います。次は結婚するまでの準備編です。

また、書きためたら戻ってきます!

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