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運のない子
あるところに運子ちゃんという、それはそれは可愛いらしい女の子がいました。
そんな運子ちゃんには一つ、大きな悩みがありました。それは運子という名前です。
小学生はときに残酷です。
みんなが運子ちゃんをウンコ、ウンコと馬鹿にします。
中学生は身勝手です。
思春期の男の子はウンコと呼び、ませた女の子は庇いながらウンコを運子ちゃんと罵ります。
高校生は度数の高いジョークがお好きです。
女子高生は友達ごっこしながら、運子ちゃんにウンコつきおパンツをプレゼント。男子は知らん顔。
そんなこんなで運子ちゃんもついに社会人。
いい大人が名前が運子なんかで馬鹿にするわけがありません。文字通り、汚名返上です。
「はじめまして、二渡運子です。宜しくお願いします」運子ちゃんは元気溌剌にいいました。
「よろしくねー」
「かわいいー」
「元気だねー」
先輩方が盛り上げます。
「運子っていい名前ね。こっちまで運が転がって来そう」一人のお局様がいいました。
「……でも、二渡(不渡り)って不吉よね」お局様がぼそり。
どうやら社会人はお金のようです。