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五里霧中な話
安叡二年十月十日 AM9:00
ブゥーブゥーブゥー
布団にこもって寝ぼけ眼のまま、本育人也はスマホを耳に当てた。
「はい、本育ですが」
「あ、本育さん? 今どちらです?」
電話の向こうでは、不思議にも社内の慌ただしい音が聞こえる。
「あれ? 今日、体育の日じゃなかったっけ?」
「何ですかそれ、いつもの昭和ギャグですか? そういうのいいですから、早く出勤してください」
「あ、そうか。ミレニアムから第二月曜日か……」
「キミ、馬鹿も休み休みに言え」
突如、電話の声が上司へと変わった。
「え、あ……」
「五輪のせいで、今年は早まっただろ。下らんことを抜かさず、早く来い」
「あ、五輪夢中(五里霧中)でした……」
ツゥーツゥーツゥー