死語
「だから刑事さん、俺、麻衣子を殺したんですって」
「あんたさぁ、さっきから何を根拠に言ってるわけ?」
「何回も喋ってるじゃないっすか。昨夜、俺と麻衣子は飲んでたんです……そりゃあ楽しい夜でしたよ。アイツが結婚するなんてほざくまでは……」
「それで、酔った勢いで殺っちまった、と?」
「そうに違いないはずです」
「はず? おいおい……記憶ないのか」
「しこたま飲んでたもんで……まぁ彼女は素面でしたけど」
「で、今日は会ってないのか」
「そりゃあ会ってませんよ、殺したんですから。会社にだって行けやしない」
「他の社員は何て?」
「何も触れてきやしませんよ。まぁ、たまに変なことぬかす奴がいましたがね」
「変なこと?」
「そう……ありがとう、って」
「ありがとう?」
「えぇ、どうせ殺してくれてありがとうって意味でしょう。彼女、相当な嫌われキャラでしたから」
「結婚、素面、ありがとう………あぁそういうことか。社員はほんとにあんたにありがとう、って言ってたのか?」
「えぇ」
「それ、英語じゃなかったか?」
「英語?」
「そう………サンキュー(産休)って……」
「くそっ、何が産休だ」男は冷蔵庫を蹴った。
中では冷たくなった麻衣子の肢体がゴロリと転がった。