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窓
女教師「ちょっと土手君、ずっと黙ってちゃ先生わからないでしょ。安心して、今日家庭訪問で話してくれたこと、先生誰にもいわないから」
生徒「……」
女教師「あのね土手君、このまま引きこもったままでも、今はいいのよ。でもね、いずれは社会に出ないといけない。働かなきゃならないの。そのとき困るのは土手君、あなた自身なのよ。社会は常に闘いの中、誰も手を差し伸べてはくれないわ。だからお願い、まずは先生に窓を開けて」
生徒「……ぼく、ダメ息子なんです」
女教師「どういうこと?」
生徒「父にいわれたんです。お前はタチの悪いダメ息子だ、と。だからぼく、ダメなんです」
女教師「そんなことはないわ。まだこれからよ。自分で自分の価値を下げちゃダメ。あなたは若い。たとえ今がダメでも、何度だって立ち上がれるチャンスはあるわ。そして人は大きくなるのよ。窓を開けるのはその第一歩なのよ」
生徒「でも、自信……ないです……」
女教師「お願い、先生を信じて」
生徒「……わかりました」
女教師「ありがとう。土手君……」
そういって女教師は童貞の社会の窓を開けた。