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四季彩宝石箱  作者: 泉柳ミカサ
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パパイヤホン

その日、たまたまイヤホンを取り間違えた。

しかも、父親のだった。

私の父親は、毎日開店前のパチンコ屋にいそいそと並ぶ、体たらくな人間だ。そして愛用のイヤホンで競馬の中継を聴くのだ。昔はもっとカッコ良かったのに、ほんと最悪な父親だ。私はそんな父親が大っ嫌いだった。

しかし、私も私で音楽中毒だった。音楽が聴けないと尋常じゃないほど苛つく。理由もなしに彼氏を殴るほどだ。

私は仕方なくイヤホンをはめた。勿論、物凄く綺麗に拭いたあとでだ。

そして、いざはめると、不思議なことが起きた。

音楽ではなく、声が聞こえてくるのだ。


「美智代は元気にしてるだろうか」

「美智代も今年で21か」

「美智代はどこに就くのだろう」

「そろそろ、彼氏とか連れてくるころか……」


美智代、美智代、美智代……すべてが私に関することだった。

素直に意外だった。パチンコのことしか頭にないと思っていた父親がこれほど私のことを想っているとは………変わったのは私の方かもしれない。

父親がパチンコ好きなのは昔からだ。それでも、昔の私はそんな父親をカッコ良く思えた。

今の私はどうなんだろう。

今日はまた、素直になっていいかもしれない。


「ただいま」

「おかえり、お前か」

「パパ、これ」

「あぁ、そうそう、やっぱりお前が持ってたか」

「パパ……あのね、私ーー」





「あぁ良かった……これ、川口から借りたやつだからな」

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