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10円ギター
当時3才のぼくは迷って見知らぬ街にいた。ブラブラ歩くと楽器がいっぱい置いてある店があった。
「お、ボウズ、ギターに興味あんのか」
「ギター?」
「そうだ、たのしーぞ」
店のおじさんは怖かったが、ギターというものは楽しかった。
「ボウズ、筋がいいな。そのギターやるよ」
「え、いいの? じゃあこれ」
「お、十円玉かいいな、よし、売った」
二十年後
「おい、田崎、音痴のお前にギターなんてもったいない。俺が弾いてやるよ」
「やめろよ、それは大事なもんなんだ」
「何が大事なもんだよ、こんなオンボロ」
「見た目や値段じゃないんだよ」
「生意気なこというんじゃねぇよ、とりあえずこれはもらったからな」
「やめろ、沼田。田崎が困らせるとどうなるかわかってるだろうな」
「ちっ亀井かよ、覚えてろよ田崎」
「田崎、そろそろ僕に譲ってくれよ」
「沼田くん、だからこれは俺の……」
「じゃあ、75万でどうだい?」
「よし、売った」