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ホルモン
人里離れた山奥の無人駅にそれはある。魂生神社、通称、ホルモン神社。
人々には多くのホルモンが分泌されているが、よく知られているのは、男性ホルモンと女性ホルモンである。
男性ホルモンが多ければ髭がよく生え、毛深くなり、女性ホルモンが多ければ胸が大きく丸みを帯びるなどだ。
しかし、それらはときに性と不一致することが多々ある。また、幼いときであればその身体と心情のズレに窮してしまう。
そのような人々を救うために造られたのが、魂生神社である。
神社の境内にある宿木の御手に手を合わせると、男性ホルモンが多ければ緑に、女性ホルモンが多ければ黄に変色する。どちらも中性色だ。
思春期の誰にも言えない悩みを神が啓示する。
男でいいんだ、女でいいんだ、と。
まったく、ホルモンはホレンモンだ。