誕生
彼は両手を広げて立っていた。
今日は雲一つない快晴だった。
自分がどんなに動こうとしても動けない。
彼の周りにはで犬といしょに走る子供たちがいた。
彼はその子供たちといしょに遊んでいる犬がとても羨ましかった。
自分もその子供たちみたいに足があれば子供達と共に遊べるのではないかと
見ているうちについこんなこと思うほどだった。
彼は、願った。
「私に足を下さいと」
けれども、それは叶うことなく無常に時は過ぎていく1000年、2000年、時は過ぎて行った。
時には豪雨や豪風が吹いき倒れそうなこともあった。
時には自分の前で泣き弱る人もいた。
時には地面が大きく揺れ自分の足が千切れ痛い思いもした。
もう自分が生まれて何年経つだろうかだいぶたったのかもしれない。
彼の周りには、しめ縄を付けられ御神体となていた。
それでも彼の願いはかわらなかった。
彼は
願いが届かないことを
もう残り少ない命だと分かっていた。
思えば自分はいつも同じことを考えていたような気がする。
動こうとすれば根が張り動けなくなる。
最初の一歩もふみ出せなかった。
でもこれで良かったのかも知れない。
自分らしく生きられたのでないか。
そう思いながらいつも眺めている空を見上げた。
何も変わらない。