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真実

 永遠に続くはずだった不死の人類は死を知った。そしてそれが自分たちに存在しないことだと理解し、願った。永遠に続けたかったから死を奪ったのにと創める神は思う。かつて死を与えた世界では不死になりたいと願ったはずだろうと創める神は思う。また救う神はこの願いを叶えた世界設計をすると創める神は思う。

 だから、創める神は願った。ずっと続く世界にしたい。

 奇しくもそれは不死の人類の一握りと同じ願いで。故に救う神は良しとした。

 創める神は同じ願いを持った僅かな人類に創める神の力を託し、やがて自分もその人類の一員になる世界を完成させた。

 救う神を欺いて。終える神を創めずに。


「命の民?」

 皆が言葉を失う中、静かに問う陸玖瀏にリゼスタが応じる。

「続くべきを続けるために終えず創め続ける。創める神の願いそのもの」

「リゼの願い……」

 レイティは全ての始まりを思う。

 創める神が初めて願いを見せたあの時、創める神が初めて嘘を吐いたこの世界。

「ねぇ救う神。あなた、本当に人類を愛していたの?」

 命の民の誰かが突き刺すように吐いた言葉にレイティは密かに肩を震わせることしかできなかった。

 リゼスタが命の創生までできるようにしてしまった人々。そしてリゼスタのために世界を守り続ける人々。創める神と命の民の間に感じたものが自分と人類の間には到底感じられなかった。

 自分は人類のための救う神であるはずなのに。人類を愛しているが故にその願いを知り、それを叶えてきたはずなのに。思えばそのすべては創める神の力でしかなった。

「終える神だった者。なぜ人になってまで終える使命を背負う?」

「この世界が間違っているからだ。世界を正しくするために終える。今までそうしたように、この世界でもそうするだけだ」

 命の民を警戒するように黄金の数人に目を配りながらノエンが応じた。

「……お前らは、命を与えられるのか?」

 次いで問いを零したのはセイドだった。

「それが創生。命を与え、この世界に創める力」

 創める神の力として正しいその答えは、この世界の救世主にとって矛盾していた。

 つまりは。

「お前らは、人を殺せるのか?」

 本当に聞きたいことはそれだった。

 問いに黄金の瞳を総じてリゼスタを注視し、それに促されるように皆がリゼスタを見る。

 胸元で水平にかざした掌から見覚えある黄金が零れ落ちて大地に突き立つ。多くを屠ってきた黄金の刃だ。

「願いは、この世界を続けること。世界のための犠牲は当然でしょう?」


 その言葉は救世主を否定し、救う神を泣き崩し、終える神を呆れさせた。

 気づけば神意は消え、老医師は腕を組み目を閉じていた。


「今までなにをして……」

 世界の事実に、誰かが心境を吐露していた。

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