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愛と命の民

 愛していた。

 だって、愛されていると知っていたから。


「ありがとう。神様」

 跪いて土を叩いた拳を握ったままの踊り子が声を上げた。

「でも、まだ私たちにできることがあります」

 リゼスタとは違う口調に神意以外の者たちが不審に目を向ける。

 その背に刺さっていたはずの黄金が消えていた。

「リゼスタ……?」

 リゼスタに向けて一歩踏み出す陸玖瀏を黄金の風が止めた。

 神意が現れた時と酷似したその現象は、やはり多くの人影を連れてきていた。

 それは黒を纏い沈黙する神意とは対照にリゼスタ同様の煌びやかな装飾を身に着けた金瞳の者たちだった。

「私たちは創める神を諦めない。終える神に終えられず、救う神に救われない。悲劇の神様は私たちが愛しています」

「何を言って――」

 問い詰めようとするセイドは言葉の途中で未来を視せられた。

 踊り子たちによって変わってしまった未来……ではなかった。

 これから成すはずだった未来のその先。誰も望まない救われない終末。

「何故だ。救う神は取り戻したはずだろ」

 未来を視終え叫ぶセイドにリゼスタとは別の、白い羽で作られた衣装に鮮やかな装飾を施し不格好な金の冠を被った男が応じる。

「救世主に預けたチカラも記憶も確かに今は救う神にある」

 それを知っているだけでセイドにとって驚くべきことだった。

 かつて救済に失敗した神様が一人の人間を頼っていた事実であり救う神が完全でないことの証明。

「救世主が願っても、蘇生の医師が願っても、出来損ないの救う神だけで正しい世界は続かない」

「それが創める神なら違うと?」

 リゼスタを見るノエンに続け、祈るレイティも口を開く。

「私に何が足りていないと言うの?」


 ぷ。


 応えは笑い声だった。

 黄金の誰かが漏らしたそれにつられるように数十人が笑う。

「あなたたちに、命が創れますか?」

 立ち上がっていたリゼスタも控えめな笑みを浮かべつつ言った。

「終える神には到底できない。救う神だって自ら生み出すなんてできない」

「命の創生は、創める神と私たち命の民にしかできません」

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