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神様と人類

 人の願いを叶えることが、神様の意味だった。

 大きな願いを叶えるために世界を終えて、私の救いを元に世界を創めてもらった。

 人の願いだけを聞いて、人の救いだけがある世界を求め続ければ何も壊れてしまうことはなかった。

「もう、創めるのには飽きたよ」

 創める神がそう呟いて私に見せたのは、死に興味を示し始めた不死の人類だった。

「この世界をずっと続けようよ」

 何度も世界を創めてきた神様は疲れたと言う。

「救う神として、たまには私の願いも聞いてよ」

 彼方に広がる世界と私を見比べるようにして、私の心に願いを語った。

 初めて知る神様の願いと、人類の願いが重なっていた。

 彼らさえそれを望むなら、それが最善で最良だった。

「また、人類のためにか……」

 終える神は寂しそうだった。けれど私が促せば神様として全うした。


 そして。

 

 いつも通り救いを伝えて創まったはずの世界が違っていた。

 彼方の世界は何も変わっていなかった。

「ありがとう。これでもう世界は終わらない」

 創める神が嬉しそうに言った。一つ前までの疲労感は欠片もない。

「これは私の願った世界じゃない。救われてない人がいる」

 死を願ったはずの人類が僅かに残されていた。

「救う神の願いとは少し違うかもしれないけれど、これは確かに創める神の創った世界だよ」

 神に人類と同じ身体があったなら、創める神は両手を広げて満面の笑みだったと思う。

「それに、もう世界は変えられない。変えるための終わりが造れないから」

 見渡せば、ここに終える神が居ない。

 その声が彼方の世界から聞こえた。

「時機に私たちも向こうに行けるよ」

 創める神は彼方にある人類の世界へ想い馳せているようだった。

 愛しき人類の生きる世界。私だって、それをどこかで願っていたかもしれない。

「けれど私たちがここから消えてしまったら…………」

 すべてを言う前に、私たちは彼方の世界へ向けて形を変えていた。


 この先誰が人類を救うのだろうという不安と、歪に願いを聞いてしまったことへの後悔が私を襲ってきた。

 救う神として持ち合わせていなかったそういった感情に、人類に成ろうとする自分を感じて恐怖した。

 その恐怖さえ人類の一部であることに気付きもしないままで。

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