天使と救う神
突如としてその場に現れた神意二人に交じって陸玖瀏が居たことに安堵したように息を吐いていたセイドだったが天使の如き姿のレイティを見て体を強張らせた。
美しさ神々しさ。そんなものに心奪われたわけではない。
ノエンの言葉の意味を考える余裕も無く、声が漏れた。
「神、様……」
「あなたも、ひさしぶり。もう大丈夫だよ」
っふ。と、軽く跳ねるように一歩踏み出た瞬間幾らかあった距離が無くなって天使の手が救世主の頬に触れた。
「レイティ!!」
叫び、セイドを庇うように割って入ったのはノエンだった。
「お前か。未来視を奪って、こいつを救世主にしたのは」
怒りに満ちたその口調は既に同じノエンなのか疑うほど。
「うばってないよ。わたしは与えたの」
そうだ。それを知っているセイドは、けれど声を出せなかった。天使の姿をした其れが恐ろしいものだと知っていた。
強張りが解けず冷や汗が流れる。助けを求めるように視線だけ動かして陸玖瀏を見るが目が合ったのは褐色の肌をした金瞳の踊り子。
「だって人類は死ななくなった。命のためにあった正義のチカラは要らないって、世界はそう思う」
腰に下げていた黄金の刃物を弄んで見せながらリゼスタが言った。
「世界が思うだって? 僕が終わらせていない世界が、身勝手に再編したって言うのか」
「身勝手じゃないよね。私がこの子になってノエンが人類になってもまだ神様は残ってたし、一番人類が好きな神様がさ」
その言葉にノエンの赤い目がレイティを睨む。
「わたしは救う神だから。終わらなくても、初めてもらえなくても、わたしにだってできるはずだから」
「ああ、そうか…………」
天使の姿をした神の言葉を聞いて、ノエンは悟る。
「レイティにそこまでできるはずがない。人類が気付いたはずがない」
今度は金の瞳を睨みつけて。
「リゼスタ。何を手伝いに来た」
睨まれたリゼスタは刃物を投げつけて応える。
「神様の創生」