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邂逅と冷声

 子供のように泣いていた来栖が穏やかに眠った。その姿も表情までも泣き疲れて寝てしまう幼子そのものだった。

「ごめん千賀。その子はもう使えないね」

 リゼスタの言葉の意味を陸玖瀏は察した。

「記憶を消したか」

 来栖の表情が明らかに別人となっているのを見て導き出した答えだった。

「うん。それが今のレイティにできる唯一の救済」

「唯一で、完璧。さあ、お爺さんも」

「だめだよレイティ。千賀はこの世界の救済に必要だから」

「……そう。ごめんね。ほんとうは私がやらないといけないのに」

 光を纏うようにさえ見えたレイティに少し影が落ちた。

「なあ。ようわからんが儂に何がさせたい。セイドと小僧は放っておいていいのか? 説明もなく助手をこんな風にしてお前さんら、何が目的じゃ」

 つまるところ陸玖瀏は何も知らなかった。

 そして、それは彼の救世主も同じだった。


「神様に近い人類ね……それも団体で。そんな奴らが居て、今更出てきたと」

 怒りでも不信感でもなく、愚痴のようなものだった。

「人の身になって不憫なんだ。時間がかかったとこは多めに見てほしいよ」

「俺だって救世主なんてものになって不憫だよ」

「だから、その救世主も世界ごと治そうって言うんだよ。あとは君の未来視で僕に間違いがないか見てもらうだけでいい」

 セイドの前に立って手を差し伸べる姿はノエンの方が救世主らしかった。

 しかし、そう簡単に救世主にはなれないと言うようにセイドは一度だけノエンの目を見て告げた。

「そいつは残念だ。俺にはもう未来視なんてない……所詮ただの人殺しだ」

 手を伸ばしたまま瞬きをして、言外に信じられないと言うノエンに。


「そーいう詰めの甘さがこんな世界にしちゃったんじゃない?」

 

 空気を裂いて踊るような声があった。

「やれやれ、格好つけて別れたはずがこうも早く再会か」

 次いで老人の愚痴があり。

「ひさしぶりだね、ノエン」

 最後に天使の挨拶があった。

「リゼスタ、レイティ……」

 声を聞いて振り返ったノエンの先に居たのは別れたばかりの老医師と自身と同じく神意に属する二人だった。

「手伝いに来てあげたんだから、感謝してよ?」

「世界ごと救うから」

 意を共にする二人の言葉。

 けれどノエンはそれに手を伸ばしはしなかった。

「君たちに何ができる。僕をここまで堕としておいて、取り返しがつかないと知って頼りに来たか」

 悪戯に茶化す声でなく、希望を語る声でもない。

 冷え切ったノエンの声が響いた。

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