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龍ノ旅人(旧題 仮免龍神が行く!)  作者: まなしし
第1章 神界編
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5話 エルマ先生の楽しい世界講座

説明回です。

アスラとトートに勇者としてのプライドを粉々にされ、メソメソしながら泉へと戻ってきたクソ雑魚勇者君。泉に浸かると、優しい光が僕の劣等感や無力感を徐々に薄れさせていく。先輩は傷だけでなく、負の感情も癒してくれるのだ。


「最後は旅神エルマかぁ……内容的にプライドをズタズタにされることはなさそうだな。頑張ろう」


負の感情が消え、前向きな思考を取り戻したところで、エルマの元へ転移と念じた。



景色が変わるとそこは、壁に様々な楽器が飾られ、箱に入った丸めた地図、宝箱、ハンモック、望遠鏡などなどがオシャレな雑さで配置されたなんとも異国趣味溢れる部屋だった。


「やあやあ、お待ちしていたよ」


部屋の主は、真ん中に配置されたゴージャスなソファに足を組んで座っていて、大きめのテーブルを挟んだ向かいのソファを僕に勧めてくる。


「素敵な部屋ですね」

「そうだろうそうだろう!生前に出会った宝物達がどうしても忘れられなくてね。顕現させてあれこれ集めちゃった」


そう言って楽しそうに笑うエルフの青年。心から旅、思い出を大切にする姿勢は、まさに旅の神様であった。


「キミには文化や言語を主に伝えるんだけれど、龍神にお願いされているからね。まずはこの世界の神、そして大陸と種族について教えるよ」


そう言って足を組み直すと、エルマ先生の講座が緩やかに始まった。



「まずはこの世界の神様からだね。この世界は創造神が創ったんだけれども、他に人神、魔神、龍神も創造したんだ。では他の神様は何で出来ていると思うかい?」


何で出来ているか。日本にいた頃の神様のイメージだと……


「信仰……ですかね?」

「信仰……近いね!まぁ信仰もあると思うけれど、正解は管理する世界の思いで出来ているのさ」

「思い……ということは、上級とか下級とか別れているのって」

「そう!思いの数、強さで別れるのさ!愛とか武術とか魔法とか、キミが出会っている上級神は大雑把に言えば、生きたい。誰かと恋をしたい。強くなりたいという生物の根源的な思いが力になっている。だから其々の神様はその思いに忠実なのさ、上級、下級と別れていても上下関係はなくてみんな仲良しなんだよ」


確かに納得出来る……アスラもトートもあんなに力を持っているのに一切妥協していなかった。


「他の神様も紹介したいのだけれども、沢山いるからねぇ……それは置いといて、最高神の役割とキミが後継になる理由をお話ししよう」


おお、割と気になっていたことを教えてくれるようだ。


「創造神は生と再生、死と崩壊、そしてそれらの調和を守るように、人神、魔神、そして龍神を創造したと言われているんだ。人神が魂を導き、新たな生を与える。魔神が死者をの魂を裁き、罪の程度によっては破壊する。2柱の神は生物だけではなく、この世界全ての再生と破壊を管理し、それを他の神様が手伝う。そして全てが正しくあるように龍神が見守り、調和を保つ。これがこの世界の大まかなシステムなのさ」


なるほど、作りすぎず壊しすぎずを保つのが龍神の役割なのね。まぁそこら辺はしっかりしようとするとキリがないし、あれくらい適当な性格してないと務まらないんだろうなぁ。


「龍神は調和を保つ。つまり、神が暴れたり、何かしらの影響で世界の環境が大きく変わりそうになった時、原因を探り、緊急時には討伐や封印を行うことが役目。簡単に言うと世界の警察だね」


龍神のお仕事は治安維持活動らしい。


「そういうことだったのですね。でも僕って後継者なのですよね?今の龍神はどうなるのですか?」


神にも隠居とかあるのかな……


「君の疑問は当然だね、神様は基本その世界が滅びるまでずっと存在して見守っていく。しかしなぜ龍神に後継者が必要なのか、そしてなぜ外の世界の存在を後継者に選ぶのか」


話が段々核心に迫っていく。


「後継者を探しに行く時に龍神が他の神様に説明してくれたんだけどね、もうすぐ創造神が新しい世界を創るらしいんだ。もうすぐと言っても神様感覚だから1000年か2000年は先だと思うけど。システムはこの世界と同じようにするらしく、破壊と再生の神は簡単に作ることが出来るけど……」

「調整する存在を創るのが難しいと……」

「そう、あのお方が創る世界全てが上手くいくとは限らないらしくてね。この世界は貴重な成功例なんだって。そこで、この世界も大分安定しているし、新しい世界を創るに当たって……」

「ノウハウのある龍神を新しい世界に送ると」


ヘッドハンティングか、やるじゃん龍神。


「そして後継者の話になるんだけれど、さっきの龍神は世界の警察と言ったよね?世界の安定を維持するためには、豊富な知識と圧倒的な力。この2つが必要不可欠。知識は問題ない神様は沢山いるんだけれど、力の方に問題があってね。世界というのは、その管理者を脅かすような存在は産み出さないんだ。まぁ自分で創り出した存在に壊されたらたまったものじゃないからね。つまり、もしもの時に最高神を止められるような存在がいないんだ」

「だからルール外の外側から持ってくると」

「そういうことだね。龍神も大変だったと思うよ、自分に届きうる存在を探さなきゃいけないからね。例え見つけたとしても性格に問題があるのは危険だし……本当、この道を選んでくれてありがとう」


そう言ってエルマは頭を下げた。


「いやいや、僕はそんな大それた存在じゃないですって!中途半端で終わるところに手を差し伸べてくれて、こっちが感謝したいくらいですから!」

「ははは、やっぱり龍神は君を選んで正解だったようだね。その気持ちを何時までも持ち続けておくれ……あぁ!なんだかしんみりしてしまったね!ささ、次は大陸と種族の話をしよう」


そう言うとエルマは立ち上がり、部屋の隅に置いてある箱から地図を取り出し、テーブルの上に広げた。地図には台形を逆さにしたような形の大陸が描かれており、丁度南北を分けるかのように山脈が走っている。山脈の中央から南下するように大森林が広がり、さらにその大森林の中央には巨大な木が描かれていた。


「海の方には海洋諸島があったり他にも大陸があるんだけれどね。この地図に描かれている大陸が、多様な種族が集まって暮らしている世界一巨大な大陸。ユースティス大陸なんだ」

「ユースティス大陸……」

「うん。まずこの大陸は北、南西、南東の3つに大きく分けることができるんだ。まず北は魔国領、ほとんどが寒く荒涼とした大地なんだけれど、鉱山資源が豊富で強力な魔物が多いんだ。ここには主に魔族が暮らしていて、魔王を筆頭に統治国家を築いてるんだよ」

「人間と戦争したりはしていないんですか?」

「うん?あぁ、君が勇者をやってた所は争っていたんだったね。でもこの大陸はご覧の通り南北は山脈に阻まれているし、北と南は峡谷でしか繋がっていないから、最低限の貿易はするけど、あんまり干渉はしていないのさ」


なるほど、地形のおかげでいい感じのバランスが保たれているんだな。干渉しなきゃ争いも起こらないだろうし。


「そして南西には人間の国々が広がっている。ここは小競り合いがちょくちょく起きているけどまぁ概ね平和だね。南東は獣王国、獣人という獣の外見を一部引き継いだ高い身体能力をもつ亜人種が暮らしている。自然が豊かでとてもいい所さ」

「大森林には何かいるんですか?」

「大森林にはエルフが住んでいる。長寿で魔法への造詣が深く、精霊魔法という特殊魔法を扱う一族だよ。彼らは大森林と世界樹を管理、維持することを生業としていて、滅多に森からは出てこないんだ」


ま、僕みたいに外に出たがるエルフも稀にいるんだけれどね。そう言って笑うエルマ。


「世界樹と言うのは?」

「世界樹は世界の支えにしてこの大陸で、いやこの世界で最も重要な巨木なんだ。高さは周りの木より少し高いくらいなんだけれど、幹の大きさがとてもつなく太く地中奥深くまで埋まっているんだ。様々な木々と結びついて世界中に根を伸ばし、伸びた根は魔力を土地に浸透させて世界中に魔力を供給している。海と並ぶ重要な魔力供給装置なんだ。この世界の生物にとって魔力は必要な存在だからね」

「そんなに巨大なんですか、想像ができませんね」

「まぁそうだろうね。世界樹の場所まで行けるのはエルフかエルフと懇意にしている個人くらいだし。巨大過ぎて幹の中が迷宮になってるんだよ」

「それはまたなんというか……もしかして山脈にも何かいたりするんじゃないですか?」


そう僕が尋ねると、ご明察とばかりにエルマがニヤッと笑って口を開いた。


「実はいるんだよ。そしてその種族こそが君に最も関係のある存在なのさ」

「関係のある存在……?」

「そう、その名は天龍族。空を監視し調和を保つ龍の眷属さ」


なんか凄そうな奴キターー!


「それが山脈に住んでいるんですか」

「そう、この山脈は霊峰と呼ばれていてね。とても標高が高くて上の方は雲に隠れて見えないくらいなんだ。彼らはその雲に隠れた所に住んでいるんだよ」


……マチュピチュかな?


「数は少ないんだけれど皆とても高い身体能力を持っていてね。僅かながら潜在的に龍気も扱えるんだ。見た目は人族と変わらないけれど、天龍族は青空のような髪の色と龍気を使う際に綺麗な翠色の角が顕在化するのが大きな特徴だね。滅多に霊峰から降りず、普段はのんびり集落で過ごしているんだよ」

「へぇ〜、山脈にそんな存在が……ん?天龍族はってことは他にも?」

「大地を監視しているのが地龍族。やや浅黒い肌に茶髪や黒髪で、力を使うと黒い捻れた角が現れる。この種族は大陸に散らばってそれぞれ過ごしていている。海を監視しているのは海龍族。紺色の髪や白髪で、力を使うと角ではなく頬に蒼の龍燐が現れる。海洋諸国を中心にこの種族もあちこちの島へ散らばっているんだ。この3種族は龍人種と呼ばれていて、離れていても巫女を中心に念話で情報共有しているんだよ」

「巫女?」

「龍神からお告げを受けたり、世界の様子を伝えたりする存在だね。各種族に1人ずついるよ。いくら龍神だって世界の隅々まで常に気を配っていられないし、最高神がなんども下界に降りるのも頂けないだろう?だから基本的には彼らに任せて、彼らにもどうしようもないって時は、巫女のお願いを受けて対処に向かうのさ」


凄い世界だ……なるべくしてそうなったのだろうけれど、神様とこんな簡単に交信できるなんて……ん、待てよ?


「龍神って下界する時どうしているんですか?神様って精神体ですし活動できないですよね?」

「そりゃあ自分の肉体を下界に置いているに決まっているじゃないか。確か龍神の身体は、霊峰の奥地に時間氷結という結界魔法を施して保存されていたはずだよ。君もここでの修行が終わったら肉体を得るため下界する予定でしょ?」

「え、下界⁉︎初耳なんですけれど!というか肉体を得るってどうやって⁉︎」

「あれれ?誰からも聞いてないのかい?……まぁ皆んなスパルタだから修行の事しか話してなかったのかなぁ。龍神は創造神に肉体を与えて貰ったらしいけれど、君の場合は転生という手順で新しい生命に宿り、1からのスタートになると思うよ」


トップになるんだから自分の管理する世界くらい1度は自分で見て回らないとね。そう言って笑うエルマ。その後も様々な話を聞いて、とても濃密な6時間が過ぎ去っていくのであった。


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