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龍ノ旅人(旧題 仮免龍神が行く!)  作者: まなしし
第3章 人間の国と勇者編
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15話 収納の勇者

お久しぶりです!やっと投稿出来ました……

「いくぞオラァァ!!!」


ハルバードを一振りすると、トラ男が猛スピードで突撃してくる。あんな巨大な武器を振り回しながらも、その重さを全く感じさせない身体運び。大口を叩くだけあってかなりの鍛錬を積んでいるようだ。


「ボサッとしてんじゃねぇよ!」


おっと、動きを眺めていたらあっという間に接近されてしまった。地面にめり込むほど踏み込み、身体の回転と慣性を上乗せして繰り出された超重量の兜割りを龍神の剣で受け止める。


ドゴォォォオオオオオオオオオン!!!!!


金属同士が衝突したとは到底思えない破砕音と衝撃が大気を震わせ地面を陥没させる。こんなもの受け止めたら折れるんじゃないかと少しヒヤっとしたが杞憂だったようだ。さすが神の剣は伊達じゃない。


「これを正面から受け止めた奴は初めてだ!!見かけによらずパワータイプだな。いいぞいいぞ!ここまで来た甲斐があったってもんだぜぇ!!」


獰猛に笑いながら武器を押し込んでくるトラ男。身体強化をしていないのに気を抜けば“龍気"を纏っているこちらが押し負けそうになる……流石の身体能力だ。


鍔迫り合いをしていると、奥の方で詠唱している魔法使いを視界に捉えた。エルフも弓を下ろして集中している。仲間ごと俺を狙うのだろうか?何にせよこのままでは身動きが取れないのでここは一旦こいつを引き離す。


「ぬぉ⁉︎」


突如両腕ごとハルバードを弾かれて奇声を上げるトラ男。龍神の剣を起点に風魔法を増幅ブーストさせ小爆発を起こしたのだ。すかさず一歩下がり全身に纏っていた“龍気"を足に集中させ、丸見えになっているシマシマボディに後ろ回し蹴りを叩き込こむ。


「グハァァ!!!」


モロに食らったトラ男は身体をくの字にして吹き飛び、自分が飛び出してきた岩に逆戻りして突っ込んだ。まるで分厚い鉄板を蹴ったようだ。常人なら骨が砕ける威力なのだが、ダメージはほとんど通っていないだろう。だが結果を気にする暇も無く、今度は奥の方で急激に膨れ上がった魔力に意識を切り替える。


「…………我が刃となり敵を切り裂け『アイスブレード』‼︎」


案の定完成した魔法は俺狙いのようだ。

『アイスブレード』は直線上の敵を切り裂き氷結させる魔法。ここは大きく横に回避を選択。しかし放たれた8本の氷の剣は蛇のように軌道を変えて俺に迫る。


「……ッ!精霊魔法か!!」


エルフの追撃を警戒していたがそう来たか。これは逃げ回っても埒があかなそうなので相殺しようと剣を構えたその時、突如地面から飛び出した鋭い岩が攻撃を防ぐ。


「リリーシェ、サンキューな」


「うむ、奴らは我が相手をしてやろう」


そう言いながら隣に進み出るリリーシェ。今の魔法を見て少し相手に興味が湧いたのだろうか、心なしか嬉しそうだ。一緒に出てきたソフィアがお返しとばかりに飛び出た岩を次々と蹴り飛ばす。魔法で強度が上がっている岩は拳大の大きさとなって次々とエルフ達を襲う。


しかし、射線上に躍り出た熊男がハンマーを横薙ぎしそれら全てを粉砕した。


「むぅ〜!では熊さんは私が!!」


少し悔しそうに口を尖らせながらも熊男目掛けて突撃していくソフィア。こいつらに手助けは必要なさそうなのでここは任せることにする。となると残りは……


「ノブヤ、GO」


「えぇ……ここはレイクルさんがパパッと片付ける流れだと思ってたのですが」


「俺が戦ってどうすんだよ、せっかくの対人戦だ。ここを出る前に試したいことがあればやっといた方が良いぞ」


「試したいことって……そんな練習台みたいな言い方出来る相手なんですかね、アレ」


周囲の岩を吹き飛ばして起き上がりながら何か叫んでいるトラ男に視線を移す。


「実際そうだったんだろ?」


ノブヤの態度から余裕を感じ、再び視線を戻して問いかける。


「まぁレベル自体は僕より低いですけど……人っぽいとやりにくいなぁ……分かりました、行ってきますよ」


乗り気でない態度とは裏腹に、武器を構えると、流れるように魔力で身体強化するノブヤ。とても数日前まで武器を持ってヒーヒー騒いでた奴とは思えない。


吹き荒れる魔力は瞬く間に収束し、体全体から湧き出るような淡い光に変化した。魔力操作で自身の力を制御出来ている証拠だ。まだ所々にムラがあるが、リリーシェの特訓がちゃんと力になっているようだ。大きく息を吐くと、トンッという軽やかなステップからは想像もできない加速度で敵に接近し斬りつける。


「あぁ?なんだお前は。俺はあの青髪に用があんだ、どきやがれ!」


突然向かってきたノブヤに反応し、ハルバードの柄で攻撃を受け止めながらトラ男が叫ぶ。


「……はぁ!!!」


それには応えずノブヤは大剣を瞬時に収納し懐へ潜り込むと、取り出したショートソードを一閃。完璧に意表を突いた一撃だったが野生の勘というやつだろうか。トラ男が咄嗟に体を捻って回避したため浅く斬りつけるだけに終わる。


「うぉっ!危ねえ危ねえ。魔法か?面白え事するじゃねぇか。こりゃあ大将の所まで行くのは骨が折れそうだぜ」


「レイクルさんの所には行かせませんよ。言葉通り骨を折って沈めます」


いくらファンタジーな世界でも、武器を構えた以上は命のやり取り。先程の態度は鳴りを潜め、挑発しながらもつぶさに相手を観察するノブヤ。


「はっ!抜かせ!!」


再び衝突する両者。トラ男が強力な攻撃を次々と繰り出しているが、ノブヤも負けずに冷静に攻撃を見極めて立ち回っている。しかし刃を重ねるごとにノブヤの盾は凹み砕け、武器は折れ曲がり、装備の交換を余儀なくされている。


「くそっ……流石に硬過ぎじゃないですかね」


「はっはっは!!当たり前よぉ!俺とグリムの武器は動く要塞、グランドタートルの甲羅から削り出してるからな。お前さんの手品見てぇな魔法には驚いたが、そこら辺の武器なんかじゃ相手にならねぇんだよぉ!!!!」


やたら頑丈だと思ったらそんなもので作っていたのか。グランドタートルは数千年の時を生き、陸の守り神と呼ばれている山のように巨大な亀型の魔物だ。普段は甲羅に草木を生やして土の中に潜っているため滅多に遭遇出来ない点と、素材の加工難度の高さも相まって非常に希少価値の高い素材だ。一般兵仕様の武装では太刀打ち出来るわけがない。


「相手の武器も鑑定しとけば良かった。ならば……」


しかしこの迷宮を戦い抜いてきたノブヤだって負けてはいない。通常装備が役に立たないのは日常茶飯事、対策は万全だ。トラ男の攻撃を掻い潜りながらボロボロの武器を収納すると、今度は人の腕ほどの長さの赤い物体を取り出し一撃を受け止めた。


「ん?お前、それはまさか……」


鍔迫り合いの中それの正体に気付いたトラ男の表情が驚きに変わる。


「ここの80層辺りで戦ったセイバージャガーとかいうモンスターの牙さ。ソフィアちゃんの一撃を食らっても傷一つ付いてなかったから試してみたけど……いけるね!」


そう、ノブヤは俺たちのパーティーのポーターを務めているため当然今まで迷宮内で獲得したものは全て保管している。まぁ今ドヤ顔で使っている牙を含む下層の強敵はほとんどソフィアとリリーシェが倒したものだが、俺もあいつらも必要ないため、ノブヤの戦闘力を補うために活用している。


もちろんその全てが凶悪な代物なので最初は触るだけでも精一杯だったが、鑑定能力を用いて素材の特性を研究し、今はある程度の素材なら使いこなせるようになっている。


「うおおおお!!!」


武器の耐久を気にする必要がなくなり、より勢いを増すノブヤ。サーベルジャガーの牙による身体能力上昇の恩恵も受け、剣速はさらに加速する。


赤い光を引く剣撃がまるで降り注ぐ流星のような連撃に変わる頃、その刃はついにトラ男へ届いた。


「グウッ!!……あぁ?」


しかし脇腹へ直撃した牙は、ゴスっという鈍い音を出して弾かれる。呆れるくらい虎人族の防刃性能が高いというのもあるが、これはノブヤの純粋な技術不足だ。


コイツは他の勇者と違い、収納術しかない為、技術の成長補正がほぼない。魔術は現象に対しての理解によって大きく進歩することは可能だが、いくらレベルが上がっても、剣術などの武術は一朝一夕では身に付く訳がない。この数日死ぬ気で訓練させて動きはなんとかなって来たが……所詮は伝説の剣をゴリラが振り回してる状態に過ぎないのが現状だ。それでも十分強力なのだが、技術のぶつかり合いに於いてはあまりにも無力。


兼ねてから指摘されている対人戦での問題点に歯噛みしながらも、それに思考を囚われることなく、教えた通りカウンターを警戒して素早く相手の間合いから距離を取るノブヤ。


「ハッ!武器は立派だが、扱う技量は大したことがねぇな!もう終わりだ、青髪のところへ行かせてもらうぜ!!」


しかし相手も歴戦の戦士。今の一撃で未熟さを見抜くと勝ち誇ったようにそう叫び、今まで使わなかった魔力を爆発的に活性化させる。するとそれに反応して次々と身体中に赤い幾何学的な模様が浮かび上がった。続いて体毛も白くなり、体格、爪や牙の長さも倍ほどの大きさに次々と変化する。


十数秒後、そこには全身に薄く発光する紋様を纏った白銀の戦士が佇んでいた。


「……なるほど。固有技能が灰色になっていてよく分からなかったけど、今なら見えます。これが“獣化”という奴ですか」


「よく知ってるじゃねぇか。これは誰でもなれる訳じゃねぇ。獣人族の中でも限られた奴が数多くの戦いの中でやっと会得出来る技……もうこうして話してるのも限界だ……ミンチになっても恨むなよ」


俺も神界で知識としては学んでいる。獣化は獣人族が日頃潜在的に貯めている魔力でリミッターを解除し、戦闘力を極限まで高める秘儀だ。本能も全面に押し出されるため理性が吹き飛んだり、“龍気"と同じで長くは使えないというデメリットはあるものの、戦士としての完成形に近づくこの状態はまさに一騎当千。


トラ男は獣のような咆哮をすると、ノブヤめがけて飛びかかる。先程までの繊細な動きは皆無。しかし、速い。勢いのまま力任せにハルバードが振り下ろされる。


まともに受け止めるのはマズイと直感的に判断し、相手の武器の上から被せるように攻撃を受け流すノブヤ。叩きつけられたハルバードが地面を大きく陥没させ大爆発を起こす。あまりの衝撃に態勢を崩すノブヤ。その隙を狙い、トラ男は抑えつけられた武器を手放すと、今度はすかさず素手で殴りかかった。


間一髪直撃は回避したノブヤだったが、鉤爪のように巨大化した爪が胸当てに引っかかり、大きく吹き飛ばされる。


「ノブヤ!!!」


これはヤバイと思い俺が介入しようと身構えたが、空中で体を捻り体勢を整えると、武器を地面に突き刺し、慣性を殺しながら見事に着地した。


「大丈夫です!レベルを見て慢心してはいけないってあれほど言われてたのに……」


武器を構えながら俺にそう答えると、ノブヤは大きく息を吐いて身体に纏う魔力をさらに活性化させる。すると右手の甲が光り輝き始め、紋章が現れた。む、あれは……


「お、これで条件を満たしたのか!よし、こっちも全力で行きますよ……限界突破リミットブレイク!!!」


ノブヤがそう叫ぶと、活性化した魔力と手の甲の光が胸に吸い込まれる。そして次の瞬間、先程より強力な光と魔力がノブヤから噴き出し、光の柱が立ち上がる。


限界突破リミットブレイク 。それは自身がピンチの時、一時的にノーリスクで力を跳ね上げる勇者の秘儀。自分の経験上、何回も死に目に合わせれば身につく技だと思っていたが正しかったようだ。これからのコイツに必要な力だ。迷宮を出る前にと考えていたので間に合って良かった。


光が収まると、そこには魔力も何も纏っていない素の状態に見えるノブヤが立っていた。

しかしそれは外見だけだ。ひと回りふた回りも増した存在感、放たれるプレッシャーが、彼がかなり強化されていることを証明している。自身の力を確かめる為か、牙を一閃し近くにある岩を真っ二つにすると、何かを確信したような笑みを浮かべてトラ男に向き直る。


「ガアァァ!!」


突然の変化に様子を見ていたトラ男だが、ついに痺れを切らして襲いかかる。猛スピードで加速すると今度は大きく跳躍。空中で錐揉み回転すると、勢いのままノブヤにハルバードを叩きつけた。


ーーーーーカアァァァァン……………


しかしノブヤはそれを難なく牙で受け止めた。さっきまで必死に避けていた攻撃をあんな簡単に……いや待てよ、それにしては不自然だ。地面が爆散するほどの威力を受け止めたにしては音も衝撃も小さすぎる。


トラ男も手応えのなさに違和感を感じたのだろう。少し首を傾げつつも再び襲いかかる。倍以上の体格差から繰り出される凄まじい威力の攻撃。しかしそれらをまるで子供の相手をするように、ノブヤは容易に受け止めていく。


打ち合いが10を越えたあたりだろうか。お互いの得物が触れ合ったその時、突如強力な衝撃が発生し、トラ男のハルバードが吹き飛ばされた。唖然としているトラ男に対し、ノブヤはまるで狙っていたかのような躊躇いのない動きでトラ男に足払いをかけて転倒させると、空間から取り出した円柱型の巨大な物体を叩きつけた。


「うーん、もう容量オーバーかぁ。初めてだからこんなものなのかな……」


突き立てた円柱に飛び乗りブツブツと自問自答し始めるノブヤ。下敷きになっているトラ男が必死で脱出しようとしているが、円柱の先から飛び出た4本爪にガッチリとホールドされているためビクともしない。あ、これはアイツの腕じゃないか。


「グッ……がっ、ナ、なんダこレは……動けナ……」


獣化のリミットが迫っているのだろう。徐々に理性を取り戻し始めたトラ男の声にノブヤが気付く。


「あ、これですか?70層辺りで戦ったシーデストロイヤーとか言う蟹みたいな魔物の腕です。コイツはこうやって硬い殻を持つ獲物を爪で挟んで」


そう言いながら円柱に魔力を注ぐと、柱の上部が変形して黒いラグビーボール状の物体が中から姿を現わす。


「この黒い槌骨をぶつけて殻を割り捕食するらしいです。まぁ天然のパイルバンカーってやつですか。レイクルさんが速攻で本体から切り離しちゃったので実際に使っているところは見てないですけど」


語っているところすまないが、それはお前が捕まってミンチになる前に助けたんだからな。


「ナるほど……自分の実力ジャ俺は斬り裂けないからそれでブッ潰すってカ?だが甘ぇな。ソンなお前がいくらその骨叩きつけたって……俺に効きはしネェよ」


身動きが取れなくなってもそう言って不敵に笑うトラ男。たしかに奴の言う通りだ。既に腕は死骸のため槌骨は手動でぶつけないといけない。


しかしノブヤは俺の方をチラリと見て笑うと、悠々とトラ男に話し始めた。


「確かに僕の技量では幾ら武器が良くても貴方に傷をつけられないでしょう。正直、獣化された時はもう攻撃が通用しないと思いました。レイクルさんの蹴りを受け止めた時お腹が白くなっていたのは無意識的に一部を獣化していたんですね」


「へっ、まぁナ。それでお前は勝てナいと思って珍妙な魔法デ俺様ノ攻撃を封じたのカ? 全く手応えが無かったから一瞬自分がイカれたと思ったゾ」


「……封じた?いえいえ、貴方の攻撃は最初から凄まじい威力でしたよ。ぶっつけ本番でしたけど上手く行って良かったです」


「……どういうことダ?」


ノブヤの余裕な態度と自分が何か見当違いをしていることに気付き、トラ男は声に警戒心を滲ませる。


「僕の異能は異空間収納術。限界突破リミットブレイクによって拡張されたこの力は物体にとどまらずエネルギーの収納も可能になりました。レイクルさんは半分冗談で言ってましたけど、力学をイメージしたら簡単に出来ました。魔法ってなんでもアリですね」


……どうやら俺はこういう奴を世に輩出しない為に此処へ来たのに、ノリノリでチート勇者を生み出してしまったようだ。役目を終えたら早急に帰って貰おう。


俺が一人反省していると、トラ男が必死で脱出を試みていた。まぁ言ってることは理解出来なかっただろうが、本能で危険を感じているのだろう。しかし獣人ごときでは海の破壊者からは逃れられない。


「戦ってくれて感謝します。色々収穫があって、僕も更に成長出来そうです。それではさようなら」


ノブヤはそっと槌骨の頂点に手を添えると、全てを終わらせる一言を呟いた。


解放リリース


次の瞬間。ノブヤの手のひらから今までで最大級の衝撃波が発生した。発射された槌骨はブォン!という凶悪な音を立てて地面目掛け加速し、大爆発を起こす。


自壊したアームの破片や砂埃が吹き荒れる中、爆心地の近くにいた俺が辛うじて確認出来たのは、白目を剥きながら力なく空に舞うトラ男と…………


















「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


悲鳴を上げながら空高く打ち上がるノブヤだった。


3ヶ月近く投稿しなかったのに野郎ばかりですいません!次はあの子達が暴れますのでご期待下さい!!

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