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龍ノ旅人(旧題 仮免龍神が行く!)  作者: まなしし
第3章 人間の国と勇者編
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5話 掘り出し物と試験開始

「兄様!そっちに行きましたよ!」


ソフィアが殲滅していたゴブリンの集団から数匹が逃げ出し俺の方へ向かってくる。


「小石を相手の頭部にシュゥゥゥーッ!!」


すかさず俺は、そこら辺で拾った小石をゴブリンの頭部目掛けて次々投げる。

“龍気"で強化した身体から放たれた小石は、衝撃波を放ちながら目標に向けて飛んでいきゴブリンの頭部全てに風穴を開けた。


「超!エキサイティン!!」


「兄様お疲れ様です?」


俺が見事命中した事に喜び震えていると、殲滅を終えたソフィアが不思議そうな顔をして声を掛けてきた……なんか恥ずかしい。


「……まぁ、これで依頼は完了だな」


「はい!これでCランク昇格試験を受ける事が出来ますね兄様!」


討伐証明部位であるゴブリンの右耳を剥ぎ取ると、俺達は森の外へと足を進めた。


この街に来てもうすぐ1ヶ月になる。2日目の騒ぎの後、俺達が天龍族であるという話が何処からか広まり、みんな節度ある付き合いをしてくれるようになった。たまに俺達の事を知らない余所者がソフィアに絡んでボコボコにされていたが、人間関係は概ね良好である。ソフィアも逞しくなったものだ。


毎日の早朝訓練も欠かさず行い、大体1日2回のペースで依頼をこなしていった結果、俺達はあっという間にCランク手前まで上り詰めた。Dランクからはゴブリンという子鬼のような魔物や狼、猪などの害獣退治の依頼も入るようになったが、村で狩りをしていた俺達には何の問題もなかった。


森を抜け、すっかり顔見知りとなった南門の衛兵に挨拶しながら街へ入り、ギルドへ向かう。カウンターに討伐証明部位を乗せて、そのチェックが終わると、受付嬢から渡された俺達のギルドカードの模様が淡く光っていた。


「レイクルさん、ソフィアさん、20件連続依頼達成おめでとうございます!1週間後に行われる昇格試験にギリギリ間に合いますが、手続きを行いますか?」


「お願いする」

「お願いします!」


昇格試験は月1回、月末に行われる。村を出た時ちょうど今回の試験に間に合いそうだったので急いでみたが正解だった。


試験内容や集合時間と場所を説明され手続きを終えると、俺達の会話を聞いていた周囲の冒険者が次々に頑張れと暖かい声を掛けてきた。

最近あまり会ってない自称ベテラン冒険者の人には悪いが、はっきり言ってCランクまで上り詰めるのはそれほど難しいことじゃない。毎日コツコツ依頼をこなせば俺達みたいに1ヶ月で辿り着く事も可能だ。まぁCランクからは依頼の難易度も上がるし、パーティーを組むと貰えるポイントが人数で割られるのでランクアップは難しくなるが。


この街の冒険者は大半がDランクだ。何故なら、強力な魔物は霊峰から下りて来ないためC以上の依頼がほとんど無く、仕事にならないからだ。Cランク以上を目指す人は仕事を求めて中央の方へ向かうので、俺達みたいに昇格するべく頑張っている人は応援してくれる。本当に良い街だ。


声を掛けてくれた冒険者達に挨拶して、俺達はギルドの外へ出る。今日は2人で買い物をする予定だ。


「兄様、ギリギリ間に合って良かったですね!それにしても、試験って護衛依頼なんですね〜」


露店に並ぶ商品を物珍しそうに眺めながらソフィアが俺に話しかける。


「Cランクの昇格試験は、盗賊退治か護衛依頼が一般的だが、この辺りは平和で盗賊なんていないからな……おっ?」


会話しながら何気無く店の奥に目を向けると、こじんまりとしたスペースにそれはあった。


「兄様?どうしたのですか……それは?なんか穴がいっぱい空いてますね」


「あぁ、これはオカリナと言う楽器だ。うわ〜懐かしいなぁ」


置いてあったのはオカリナだった。エルマとは色々な楽器で演奏したが、彼が最も気に入っていたのがこれなのだ。6年振りに見たら無性に演奏したくなり、思わず購入してしまった。値段は銀貨5枚と少し高額だったが、この一ヶ月でそこそこ稼いだので許容範囲だろう。


護衛依頼の行き先が王都なので、これを機に拠点を向こうに移すべく日用品やバッグなど旅に使う道具を買い揃えながら通りを歩く。一通り買い終えたので、中央広場で休憩する事にした。


「兄様!さっき買ったオカリナ?を吹いてください!!」


木の椅子に腰掛け、一曲吹こうと思っていたら、ソフィアがお願いしてきた。


「あぁ、ちょうど吹こうと思ってたところだ。綺麗な音なんだぞ」


俺はそう言うと、穴の位置を確かめてから演奏を始める。オカリナと言ったら緑の勇者がタライとホースなあの曲だろう。うろ覚えな日本の曲をエルマと一緒に復活させたうちの1つで、よく2人で演奏していたものだ。軽やかな音色が昼下がりの広場に響き渡る。久しぶりの演奏だったが、上手くできたと1人満足して顔を上げると、いつの間にか広場にいた人が周りに集まっていた。


「兄様ー!本当にとても綺麗な音ですね!!なんだか聞いてると心が軽くなってきます!ソフィアもやってみたいです!!」


「そうか!良かった。やってみたいなら今度教えてやるよ」


初めて触れる音楽にすっかり感動してしまったソフィア。エルマと2人で一緒に演奏したように、ソフィアと演奏しながら旅をするのも楽しそうだ。集まってきた人達やソフィアにもっと演奏して欲しいと頼まれたので様々な曲を披露していった。穏やかな午後の時間は、そうしてゆっくりと過ぎ去っていくのであった。


そして1週間後、朝食を食べ宿をチェックアウトした俺らは徐々に人で賑わい始めた南門の前にいた。少し歩くと荷馬車が停まっており、商人と思われる人と冒険者数人が話している姿を見つけた。挨拶をして話してみると、この商人が護衛対象で他の冒険者は俺達と同じ受験者のようだ。男2人に女1人。みんなまだ若く、冒険者として名を上げようと生き生きした表情をしている。


「1、2、3……よし、全員いるな。おーい、お前さん達おはようさん!」


みんなで雑談をしていると、ギルドの方から1人の冒険者が声を掛けながら歩いてきた。


「あ、お前は」

「あー!ジェゾさんだ!おはようございます!」


俺とソフィアはその冒険者に声を掛ける。歩いてきたのはここへ来て2日目に会った地龍族のAランク冒険者ジェゾだった。あの日から偶に会っては飯を一緒に食べたりしていて、今ではかなり仲が良い。


「おう、レイクルもソフィちゃんも元気そうだな」


短く会話を交わした後、ジェゾは突然のAランク冒険者出現に固まっている受験者達に向かって話しかけた。


「今回試験官を務めることになったAランク冒険者のジェゾだ。ゆっくり休暇を過ごすつもりだったんだが、折角来てくれたなら帰るついでに試験官やってくれとギルドマスターに頼まれちまってな。この依頼中、俺は基本的に手出しせずお前らを評価するから、各自しっかり働いてくれよ!王都でCランク冒険者として活動出来るよう健闘を祈る」


そう一気に言うと、商人と一言会話して試験開始と出発を宣言した。

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