第5話:写真
「写真…?」
「…うん。あたしの…、あたし達の、思い出の写真。」
藍ちゃんはそう、ぽつりと言った。
その藍の表情は、とても満ち足りていて、どこかうれしそうな様子がうかがえる。
その写真に写っているのは、五人の子供。
皆、楽しそうに笑っている写真だった。
「あ…、これ、私だ…」
私がその事実に気付き、その写真の一人の少女を指差して言う。
「私だけじゃない…、藍ちゃんも、みーちゃんもいる…。拓也もいるし、弘斗もいるよ…。藍ちゃん、これ、いつの写真なの?」
「…あたしが、引っ越してきて一週間がたったくらいのときのだよ…。一年生の…」
写真に写っているのは、今の仲良し五人組の小さな姿。
「あのとき、引っ越してきたばかりで、友達が居なかったあたしを…友達にしてくれたのは…。みんなだったよね。」
そう…あの時…。あの時、藍ちゃんの友達になったのは…
***
私達が一年生のとき。
あいちゃんが、転入してきた。
あの時のあいちゃんは、友達がひとりも居なかった。だから、私達は…
「ねぇねぇ。わたしたちと、ともだちにならない?」
そしてあいちゃんはあっという間に私達の大切な存在となっていった。
それから、いろいろあった。
喧嘩したり、協力しあったり、笑いあったり…。
春には、同じクラスだとかそうじゃないとかで盛り上がったね。
五人そろって同じクラスだったときには、感動してずっと喜びあったよね。
そういえば、夏休みの宿題と称して夜中にみんなで星を見に行ったっけ。
あのときの星は、とても綺麗に輝いていたよね。
たしか秋には、風に舞う落ち葉を追いかけて遊んだね。
そしたら必ず一人が転んで大騒ぎになっちゃったよね。
冬には、雪だるまとかまくらをつくったね。
みんなと協力してつくったのに、かまくらは結局ひとりくらいしか入れなかったね。
…楽しかったなぁ、あの日々は。
私は、今でもあんなふうに楽しい日々を過ごしたいよ。
みんなも、きっとそうだと思う。
あの、楽しかった日々を、取り戻したいと願っているに違いない。
その証拠に、
あいちゃんは、その頃の写真を今でも持っているし、
みおちゃんは、懐かしそうだけど、少し寂しそうにその写真を見ているし、
拓ちゃんは、あいちゃんと喧嘩したのをとても後悔しているような表情をしているし、
ひろちゃんは、少し寂しそうにその様子を見ていた。
何とか更新することができました。
これも、この小説を読んでくださっている方々のおかげです。
これからも、よろしくお願いします。