第3話:空
…それからというもの、放課後の教室はまるで誰も居ないかのような静けさを持っていた。
私達が、居るというのに。
拓ちゃんは何か思いつめたような表情で考え事をし、
みおちゃんは椅子に座り、うつむいたままで、
ひろちゃんはベランダで空を仰ぎ、
私は…それをずっと見ていることしかできなくて。
こんな悲しい光景、見ていられなくて。
あやうく、目をそらしそうになる。
その時。
「私っ。やっぱり藍ちゃんのところに行ってくるっ!」
ガタリと音をたてて席を立つ、みおちゃん。
そして、自分の荷物を持って走り出す。
「みおちゃんっ!?」
私も慌ててみおちゃんを追いかけようとするけれど。
「未来」
ひろちゃんの、私を呼ぶ言葉を聞き、立ち止まる。
「何…?ひろちゃん…。」
「今は、美緒に任せておこう。」
「でっ、でも!!」
ひろちゃんを見る。
ひろちゃんは、私をじっと見つめていた。
その、力強い眼差しに、ぞくりとする。
…何なんだろう。この感じ。
彼の有無を言わせないような眼差しに、私はこう言うしかなかった。
「…分かった」
しばらくして、私はひろちゃんがいるベランダに行った。
「ひろちゃん…。」
「…何?」
ひろちゃんは、空を仰いだ状態のまま、返事をした。
私はひろちゃんの隣に行き、同じように空を仰ぐ。
「…どうしてだろうね」
「え?」
空は、どこまでも、青く澄んでいた。
「…どうして、こんなことになっちゃったんだろうね…。」
雲一つない、青い、青い空。
「あの、楽しかった日々は…どこに行っちゃったんだろうね…」
楽しかった日々。
「みんなで過ごした日々は…」
思い出してみると、色々あったことに気付く。
「どこに、行っちゃったんだろうね…?」
みんなで一緒に笑った。
みんなで一緒に泣いた。
みんなで一緒に過ごした、日々。
それは、忘れられない、大切な思い出。
「取り戻したい」
取り戻したい。私達の、幸せな日々を。
読んでくださってありがとうございます。
感想、誤字などありましたらお願いします。




