第2話:涙
「ごめんっ。今日、あたし用事があるんだよねー。」
あいちゃんが言ったその言葉。
…思えば、このときから世界は狂い始めていたのかもしれない…。
「あれ?そうなの?」
「じゃあ今日はこれでお開きだな。」
残念そうにみおちゃんと拓ちゃんが言う。
なぜ残念そうなのか、なぜお開きになってしまうのか。
それは、昔の出来事がきっかけでできた私達の暗黙の了解からだった。
この間、ひろちゃんが用事で居なかったことがあった。
それでも一応放課後残って話していたんだけど、それがとてもつまらなくて。
ひとりでもかけてしまったら、だめなんだ。
「ほんっとにごめんね!じゃぁね!」
「うん、また明日ねー!」
私が手を振ると、あいちゃんも手を振り返してくれた。
「明日は、あいちゃんが来れるといいね。」
「…そうだな。」
私が言うと、ひろちゃんが返事をしてくれた。
…そう…。明日こそは…、きっと。必ず…!
***
「え?今日もなの?」
「ごめんね!ちょっと用事が長続きしちゃって…。」
次の日も、あいちゃんは用事があるらしかった。
その次の日も…。その次の日も……。
***
「おい、藍」
あいちゃんが放課後の談笑に来なくなって一週間。ついに、その『事件』は起きたのだった…。
「最近、すごく来なくなってるよな」
「っ…。え…、ご、ごめん…。」
…拓ちゃん…?
「ど、どうしたの?拓也…。」
みおちゃんが動揺した口調で言う。
言葉には出さないけど、私もひろちゃんも動揺している。
「俺達は、お互いの夢を応援しあうためにいままでやってきたんだろ。」
拓ちゃんがあいちゃんに詰め寄る。
「俺達の輪の中に入れないなら、お前はもう来るんじゃねぇよ!!」
拓ちゃんが…叫んだ。
今までに、拓ちゃんの口から聞いたことのないような激しい言葉が、拓ちゃんの口から飛び出す。
「…たっ、くん…」
あいちゃんの震えた声を聞き、ようやく拓ちゃんが我に返る。
今までの態度が嘘のように、目が泳ぎだす。
「…あ…、ご、ごめ…」
「…もういいよ。」
拓ちゃんの謝罪をあいちゃんがさえぎった。
「…え…?」
「もういいよ!…今まで、ごめんね。もう、あたし抜きでもいいよね!いいんでしょ!?だからそうやって言うんでしょ!?」
そう叫んで、あいちゃんが走り出してしまう。
「あいちゃん!待ってよ!!」
少し強引だけど、私はあいちゃんの腕をつかむ。
「…もう、私のことなんて放っておいてよ!!」
あいちゃんの頬に涙が伝う。
そのまま、あいちゃんは私の腕を強引に振り払い、走り去ってしまった。
「…あいちゃん…」
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