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『迷い人』の意味

切り株が予想以上に大きく、歩いて20分位かかりました。大人なら10分くらいかな?ドアの側でパウルが待っていました。


「遅いよー!!長老様にはもう喋ったからね!!」


「ごめんなさい」


「パウルは放っといて中に入りましょう」


「……みんなで入ろうよ」


「そうだ、そうだ長老様はみんなで来なさいって言ってたよ!」


「じゃあ、早く入りましょう」


そうして、ドアの前でひと騒ぎした後4人と一匹で建物の中に入りました。ワクワクするなぁ。


中に入ると、かなり明るく大きい木を輪切りにした様なテーブルとその周りを囲む感じで椅子がいくつも置いてある。


テーブルの奥にそう背丈が変わらないお爺さんが座っていた。髭もたっぷりたくわえていて、なんか「お爺さん」のイメージそのまんまって感じ。


「フォ、フォ、フォ、どうやら皆揃って着いたようじゃな。パウル、ペーター、ポルンご苦労じゃったな」

「『迷い人』さん、どうやらだいぶ疲れておるようじゃな。今夜ももう遅い。もしよければ今晩はここで休まれてはいかがかな?」


そういわれれば、なんだか眠くなってくるなあ。


「では、申し訳ありませんがお言葉に甘えます」


グウゥゥウーーー


は、腹の虫ぃぃぃぃぃ!!


「フォ、フォ、フォ、何も知らない場所で不用意に飲み食いはできんからのう。なにか簡単な物を用意させよう。3人とも頼むぞい」


「「「はーい」」」


「重ね重ね、すみません……」


は…恥ずかしいよ〜穴があったら入りたい……


「一応、食堂があるのでな、そちらに案内しよう。」


と言われて、食堂に案内された。5〜60人位入りそうな感じで、木のテーブルと椅子が幾つも置いてある。奥にカウンターがあって、そこから受け取るみたい。


カウンターにいくと、3人が作業していた。す、すごい料理できるんだ……


「今日はお客様だからね、座って待っててよ」


自分は近くのテーブルに座り、リツはすぐ側で丸くなった。


「お待たせしましたー!」


目の前に置かれたのは、パンとスープにサラダだった。えっまだ10分位しかたってないよ!?


「……僕たちが作ったんじゃないよ。パンとスープを温めて、サラダはさっき外にでて野菜とってちぎっただけだから」


「そ、それでも十分すごいよ!?3人とも有り難う!」


「「「どういたしましてー!!」」」


「3人ともありがとさん、冷めないうちにお食べなさい、その間に軽くこの世界について話しておこうかのう」


「有り難うございます。それじゃあいただきます」


まずは、スープからいこうかね。……おいし〜い♪お芋や人参とか色々入っていて鶏肉かな?その出汁がきいてて塩味だけでも十分だね。パンは丸い形でちぎって食べるとバターロールみたいです。サラダは柑橘系のドレッシングがかかっててさっぱりして美味です。喉につまらせたくないし、味わうためにゆっくり食べよう。


「気に入ってもらえてなによりじゃ。そのままお食べ。色々疑問もあるじゃろうがとりあえず儂らのこと、名前を聞かなかったことを話そうかの。」

「そこは僕たちも気になってました。長老様、教えていただけませんか?」


3人とも、いつの間にか木製のコップをもって同じテーブルに座っていた。リツがいる方を見ると、お皿に入ったミルクっぽい液体を飲んでた。


「リツの分もありがとう」


「いえいえ、出したのはポルンですから」


さ、さすができる子。ポルンにお礼をいい、改めて長老の方を向いた。


「それでは、儂らについて話そうかの。もう聞いたかと思うが、儂らは『緑の妖精』と呼ばれる種族じゃ」


そういえば、さっき聞いたような気がする。『緑』だから、森の中に住んでいるのかな?


「村で作物をつくり、それを元手に各地で行商をする者。お金をもらい、人々の手伝いをする者など色々な者がおる。そのせいか、人の間では『商い妖精』『お手伝い妖精』とも呼ばれるのう」


「まあ、だいたいが気楽に自分の好きなように生きておるよ。あとは種族名そのまま『緑』ひいては、『森』に関する魔法が得意じゃな」

なるほどーやってることは、よく本やゲームにでてくる人たちの生活とあんまり変わらないね。ペーターみたいなのもいるし、商魂たくましい人?もいそう。

『森』に関する魔法って木を育てたりとかかな?見てみたいなあ。ファンタジーだよね!……フキの葉持たないかな?


「それで名前についてなんじゃが……『迷い人』はともかく『記憶持ち』の説明がないと思うので、まずこっちから説明するぞい」


あ、オネガイします。


「『記憶持ち』は前世の記憶を持つ者を指す。この世界を生きた記憶を持つ者や異世界の記憶を持つ者たちじゃな。はっきりと別の人生を生きた記憶を持つ者はそうおらん。だいたいが、見たことが無いものを知っている気がする、今の名前とは別の名前があった程度のもんじゃ。記憶が多い者は強い未練や後悔、欲にまみれている場合があるので気を付けるんじゃぞ」


記憶がある人は、漫画やゲームでよくいう『転生者』で世界を変えたりとかじゃないんだね。


「それで名前を聞かなかったのは……『迷い人』や『記憶持ち』を守るためなんじゃ」


「『迷い人』と『記憶持ち』には強い力を持つ者や未知の技術や知識を持つ者が多い。個人や国が有益だと思われる人物の名前を使って存在を縛った。条件を満たす者の命令に背くと激痛が走り、最後には死に至る呪いじゃ。この呪いのせいで多くの『迷い人』と『記憶持ち』が利用されたのじゃよ……とはいっても『迷い人』は『記憶持ち』より少なく、術者より強い者も多かったので『記憶持ち』よりも被害は少ないぞい」

そうか……名前が知られれば命が危なくなる可能性が高くなるから名前を聞かないようにしたんだね。

3人とも顔色が悪くなっていた。気分が良い話じゃないからね……


「今ではその呪いについて知る者はおらん。じゃが、念には念を入れて『迷い人』や『記憶持ち』には別の名前を使うようにアドバイスしておるのじゃよ。そのまま自分の名前を使う者もおるが、お前さんはどうする?」



……私は、どうしよう。



「いきなり言われても決まらないじゃろ。食事も終わったようじゃし、部屋に案内しようかの。3人とも食器を片付けたら、帰って休みなさい」


「はい…パウル、ペーター、ポルン、今日は本当にありがとう。……お休みなさい。リツ、おいで?」


「「「おやすみ」」なさい」


リツを抱っこして長老様についていく。食堂をでて直ぐに階段があった。階段を上がると、ドアが何個かついている。


「お前さんの部屋は一番右じゃ。ぐっすりお休み。」「長老様……ありがとうございます。」


「なに、礼には及ばんよ。『迷い人』と『記憶持ち』以外にも行商や道に迷った旅人が来ることもあるからの。難しいことは明日考えればよいさ」


「はい、お休みなさい」


長老様が階段を降りるのを見送った後、リツを降ろし、許可がでた部屋のドアを開けた。

部屋はシンプルでベッドと机、椅子が置いてあった。丸い窓から月の光が差し込んでくる。


今日は色々ありすぎたよ…異世界に来て、リツに会った。その後、狼に襲われて暫くしたらパウルたちに会って今ここにいるんだもんなあ。


名前もだけど、元の世界に帰る方法や今後の身の振り方を考えないといけない。けど、さすがに疲れたよ。寝て、スッキリしてから考えよう。


「リ〜ツ、一緒に寝よ〜」


「わふぅ」


ベッドに入ってリツをぎゅっとする。モフモフ〜気持ちいい。ベッドもフカフカだ♪


……フワァ、もうだめだぁ、ねふい、おやしゅみなさ〜い。

長老様による説明回でした。主人公の名前もそろそろ出てくるかと思います。

次回、決意表明(!?)です。

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