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面に映るは心模様

この話は『五話:そして気付く』の前に起こった出来事を描いています。

 とある昼下がりの学校。

 昼飯を食い終えたあと、午後の授業が始まるまで時間があったので、ココアでも買いに行こうと購買部に向かっていた、すると少し前を歩く女子生徒が黒薔薇であることに気が付いた、学校で声をかけて仲睦まじく会話をするような間柄じゃない(というか声なんてかけても何を喋ったら良いのかも分からない)ので、声をかけずにいた。少し歩いていると一人の男子生徒が黒薔薇に話かけに来た、身長は高く顔も整っている、と思う。程よく焼けた肌を見るに運動部だろうか。なんかこいつ……リア充オーラが半端ねぇ……。やっぱリア充の周りにはリア充が集まってくるんだな。これが『類は友を呼ぶ』ってやつか、ことわざってすげぇな! ん、でもあれ、おかしいぞ……俺の周りには自然に集まってくる友達が全くいないんだが……。やっぱことわざ何かあてになんないわ。

 前の二人に目をやると、何の話題か知らんが談笑している。それこそ仲睦まじく。

 行き先は同じだったみたいで、俺も黒薔薇たちも購買部に着いた。なんとなく今、黒薔薇と顔を合わせたくなかったのでさっさとココアを買って帰ろうとしたのだが、運動部っぽいリア充男と目が合った。

「あれ、あの子ってもしかしてこの間の……」

 男が黒薔薇に話しかけていた。この間? 俺はこの男の顔すら見覚えがないのだが。

「あっ……、居たんですね」。

 黒薔薇とも目が合う。『あっ』ってなんだよ、何とか製薬かよ。

「まあな」。

 今思ったけどここまでずっと気づかれてないのって凄くね? 俺ってストーカ――――探偵とかに向いてるのかもな。

「やっぱり君だよねぇ! この前の校門での部活勧誘見てたよー、おもしろかったよー!」

 なんだよこの男。全然おもしろくねぇよ、あんな恥しか晒してない出来事。人生最大の汚点だわ、忘れたかったのにまた上書き保存されちゃったじゃん、どうしてくれんだよ。そもそもお前誰だよ、まずは初めましてして名乗れよ。しかも目立ってた嬢ヶ丘の方を覚えてるなら分かるけどなんで俺を覚えてんだよ、こわいから。

「……どうも」

 はい出ました、俺の特技の『感情はめちゃくちゃ揺れ動いてるけど表面には決して出さないポーカーフェイス』これ意外と難しいんだよな、表情筋が鍛えられてない俺だけの特技ってわけよ。自慢にならんわ。

「僕は『操神(あやがみ) (まこと)』っていうんだぁ、よろしくねぇ~」

 なんか、すんげぇ能天気そうなやつだな。こいつと話してたら知らん間に寝ちまうんじゃないかってぐらいのんびりとした喋り方だ。ゆるくニッコニコ表情も相まって余計に眠気を誘われそうだ。何がそんなに楽しいんだか。

「あ、ああ……『侘来』だ」

「うん、知ってる~」

 は?

「おっとっと、長居してる時間ないんだった。『実くん』、またねぇ」

「少し用事があるのでこれで失礼します。今日は集まる日でしたよね、放課後また喫茶店で」。

 軽く会釈をして、そそくさと去っていく。

 え、なんなの、俺って有名人なの? 嬢ヶ丘の時も名前知られてたし、この操神とかいうやつにも知られてんじゃん。どこかで俺の個人情報流出でもしてるの? はは。……笑えないんだが。

「ちなみに」

 黒薔薇が立ち止まり、こちらを向く。

「名前を教えたのは私ですよ、何だか落ち着かないようですが、ふふ」。

 何その嘲笑としたり顔。いや、うん、嘲笑の中ではマシな方ではあるんだがな、ムカつくわ。その顔の横に立てた人差し指とか特にムカつくわ。


――――――――


 キンコンと校内に鐘の音が響き渡り、放課後を告げる。

 ふぅ、やっと今日のノルマ達成か。いつもならこのまま帰ってだらだらするんだが、今日はなんとこの後用事があるんだよな、はは、驚いたか? こんな俺にも用事ってものが出来るんだよ。そう、今読んでる漫画の最新刊を買いに行かなければならないという用事があるんだよ。

 ちなみにその後に嬢ヶ丘たちと件の話し合いの為に喫茶店に行かねばならんのだが、正直あれは予定があるようで無いようなもんだからな。何を言ってるのか分からないだろうがそうなんだよ、あの話し合いにはアフォガート食う為に行ってるからな。会話にはつっつく程度にしか参加しないし、そもそも会話の内容が『部活』とかけ離れてるし。これ暇人の俺じゃなかったら絶対行ってなくね?

 帰宅の準備を終え教室から出ようとした時、俺の元に一人の男がやってきた。細身だけどでっけぇ、そして程よく焼けた肌、これは……、顔を見るとさっきの操神とかいうやつだった。

「やぁ~、実くん!」

「……なんか用か」

「ん? 何か警戒されてる? 僕なにかしたかなぁ」

「警戒というかほとんど初対面だしな、多少は気を張るのが普通だと思うが。そっちは以前から俺の事を知ってたみたいだが」。

「あはは、まぁそれもそっかー。ところでさ、ちょっと話したい事があるんだけど、今から時間いいかなぁ?」

 ……なんかこいつの顔を見てると不安になってくる、さっきは話す時間も短くて気づかなかったが、嫌悪感とまではいかないでも、心がざわつくような、例えるとすれば焦燥感のようなものだろうか。少なくとも話していて気分は良くない、だがしかし、そこまで悪いやつにも見えない。なんなんだこの感じは、とにかくあまり関わりたくなかったんで断っておくことにする。

「すまん、今日は用事があるからまたの機会にしてくれ」

「はいはーい! 知ってる知ってる~、黒薔薇さん達と会う予定なんだよね? でもそれまで少し時間あるよね! お願いだよ~」

「……」

 知っとるんかい。黒薔薇のやつ話しやがったな。

 まずいな、嬢ヶ丘や黒薔薇たちとは会ってこいつとは話もしないとか、変な誤解を招きそうだ。

 うーむ……。

 …………。


――――――――


「いやぁ~、一度実くんと話してみたかったんだよね~」

 いやぁ~、まあこうなるわな。今はさっきの操神とかいうやつと一緒に、駅前の書店に向かっている最中である。誤解はしないでほしいが、俺がほいほいとこいつの願いを聞いたわけではないということだ。こいつはあの後こう言った。「それにねー、僕と話してくれたら君に良いことがあると思うなぁ~。嬢ヶ丘さんとかぁ『部活』だっけ? あれの事とかにね~」。

 何故部活の事まで知ってるのかは分からないが、それを聞いちゃ突き放して断るということは出来なかった。別にこいつのことが嫌いというわけではなかったしな、ただ単に話していて気分が良くはなかったというだけで、気分が悪くなったとまではいかない。何にせよあの厄介な部活の件で役に立ちそうというのであるなら、気分が悪かろうとこの話には乗っていただろう。

「そりゃ良かったな。それよりどこであの『部活』のこと知ったんだよ」

「何か怖いんだけど……? まあいいや。ん~とそれはねぇ、喫茶店で話してるのを聞いたからかな~、凄く楽しそうに話してたよね~主に女の子二人がだけど」

 なるほどな、見られててもおかしくねぇわな、貸し切ってるわけでもなく普通の喫茶店だし。

「このまま流れで言っちゃうけど、僕もそれに混ぜて欲しいんだよねぇ」

「お前ってやっぱ頭おかしいやつだったんだな」

「そんなわけないでしょー!」

 自分から面倒事に巻き込まれに行くとか頭おかしいとしか思えんわ。……人の事言えた立場じゃないがな。そりゃ一人手伝ってくれるやつが増えるってのはめちゃくちゃ大きいが、さすがに何らかのメリットや考えがあっての発言であろう。

「じゃあ、混ぜてもらったとしてお前にはどんなメリットがある? それとも何か交換条件でも用意してきたか?」

「いやいや、特に交換条件とかは無いんだけど、僕にメリットかぁ……うーん。特に無いって言ったらどうする?」

「んなわけねぇだろって言う」

「あっはは、だよねぇ。じゃあ話すけど、ただ単純に、凄く面白そうな事やってるなぁって思ったんだよ、だから混ぜて欲しかったんだ。あと、この先君たちがどんな事をやっていくのかとても楽しみな所もある。僕はその"面白そうな事"を出来る限り近くで見たいし一緒にやりたいって思ったんだ、もちろん僕も手伝えることは何でも手伝うよ、ダメかな?」

 ほーん、要するに『楽しそうな事やってんじゃん、一緒にやらせろよ。手伝うから』っていうことね。さっきも言った通りこのままずっと3人でやっていくのには無理があるし、こっちとしては猫の手も借りたい状況ではある。ここでこいつの要望を聞いてもデメリットは無いように思えるし、むしろ人数が増え活動が更に盛り上がるということが期待できるが。

「分かった。その話、乗る」。

「ほんと!? 実くんありがと! 凄く嬉しいよ」

「その前に、お前がほんとの事を話したらだけどな」

「……へ?」

「あのな、嘘吐くの下手すぎ。ポーカーフェイス鍛え直して来い。もうポーカーフェイスがポーカーフェイスじゃなくなるまで練習して来い」。

 しばらく話していて、購買部の時の何とも言えない感情の原因が何か分かった。こいつの顔は『偽り』で塗れてる。会話は出来るがその顔からは、本心を感じない。と言うか本心を読まれまいと表情を偽っているのがまるわかり。だが発する声には違和感の無い抑揚がありそれが気味の悪さであり、原因だったんだろう。

 もちろん、感情が顔に現れる時なんてのは千差万別であり、あまり表情が変わらなかったり、表情の変わり様が特殊な人間なんてのはごまんといるのは百も承知だ。

『初めましてだから多少不自然になるのは不思議じゃない』。ならそもそもそんな信頼関係も何も無い相手にいきなり話を持ち掛けるな。

『それでも一緒に楽しい事をしたかったのでは』。悪いがそんな純粋な考えは俺には出来ない、多少緊張が見られるなら何ら違和感無いが、顔が引き攣るほどに表情を装わなければいけないなんて何か裏があるとまずは疑ってかかってしまう。こんなだから俺は友達が少ないのか……、何かラノベ書けそう。

「なーんだ、バレてたんだ」

 バレた事がそこまで気にならないのか、やけに落ち着いた受け答えだった。

 気づけば書店はもう目の前にあった。足取りを止め、横に並ぶ形になる。静かなのは受け答えだけで、こちらをじっと見据えた目だけは落ち着いているとは言えない様子だった。

 あれだけ言っといてなんだが、俺はこいつの偽りに対して怒りだとか、許せないなどと思っているわけではない、先ほども言った通り猫の手も借りたいのは事実であり、このままこいつの条件を黙って飲むという事もできるが、なんとなくこいつの思惑通りに話が進むのが気に食わないと思っただけだ。

 しばしの沈黙の後、操神が口を開く。

「はぁ……。じゃあ、ほんとの事を話すよ。簡潔に言うと、情報収集のためさ」

「情報収集? 果たして俺らに関わってどんな情報が得られる」

「一番は嬢ヶ丘さんについてかな。…………実くんは嬢ヶ丘さんが今どういった状況に置かれているのかは知ってるのかな」

「なに……? ……どういうことだ」。

「……何も聞いてないんだね、申し訳ないけれど『それ』は僕の口から軽々と話せることじゃないんだ」。

 意味が分からん、こいつは何を言っているんだ、嬢ヶ丘の状況がなんだっていうんだよ。

「ま、とりあえずほんとの事は話したから、これで僕も仲間に入っていいんだよね? そうそう、勘違いされてちゃ困るから言っておくけど、『楽しそうな事してるなって思った』っていうのもほんとの事だからね! 僕も一緒に頑張るし、これからよろしくね実くん」。

「…………」

「実くん?」

「……あ、ああ」

 すぐには返事が出来なかった。

 声は聞こえていた。だが、あまりにもあっけなく放たれた予期せぬ言葉に思考がまともに働かなかった。

『じゃあ、今日のところは僕は帰るよぉ、またね~。何だかボーっとしてるけど気をつけてねぇ――――』

 操神が俺に向けて何かを喋っている、頭の中では響いてるが、ひどく遠くに聞こえる、聞き取れない。


 しばらくの間呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。

[ネタバレを含むため、読了後に読むことをおすすめします]







お久しぶりです(もうツッコまない)、どうも、天です。

最近はようやく暑さも落ち着き、過ごしやすくなってきました。


さて、今回の内容は五話の前に起こっていた出来事です。

新キャラの魅力が伝わっていれば幸いです、悪いところもありますが、まぁ人間誰しも完璧ではないので。是非とも可愛がってあげて下さい!


私事ではありますが、今創作に関してとても刺激を得られる環境にいます。書きたい事が山の様にあって、もう頭がふっとーしちゃうよぉ状態です。

亀より遅い更新頻度ですが、これを見て下さっているあなたがもし、応援してやってもいいというのであれば、どうぞよろしくお願いします。


ご高覧いただきありがとうございました。

それでは、ばいちゃ。


(古いかな……)

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