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メリーさんは手段をえらばない

作者: 名井和尚
掲載日:2015/06/05

『もしもし、私メリー。今、ゴミ捨て場にいるの。』


 突然、携帯に入った非通知電話を受けたとき、俺はキターッ!と歓喜したよ。だってメリーさんだよ?

 都市伝説お笑い要員のメリーさんだよ!

 どう来るかわかるから、対策だっていくらでも立てられるじゃないか。

 自主的に迷ったり、行き過ぎたりするのは…まぁ期待だけはしておくとして、最後に背後に立つことが判っているなら、背後に色々置く事でハメることもできるじゃないか。

 楽しくハマってくれたら、ネットにさらしてやろう。可能なら写真つきで。


 さて…どうしてやろうか…。


『もしもし、私メリー。今、角のポスト前にいるの。』


 ゴミ捨て場から角のポスト…というと、推測するにコンビニの先にあるあそこかな?

 さてオチをどうしようかな……水を張った風呂を背にして「びしょ濡れなの。」とでも言わせてやろうか。でもちょっとインパクト弱いよな…。


『もしもし、私メリー。今、コンビニの前にいるの。』


 予想通りコンビニまで来たか。そうなると次はアパートの前だな。

 それじゃあこっちは迎える準備…っと。

 よし!冷蔵庫を背にして「今、冷蔵庫の中なの……寒いの…。」と凍えさせてやろうじゃないか。タイトルは冷凍メリーさんで決定!

 楽しみだなぁ。


『もしもし、私メリー。今、マンションの前にいるの。』


 え?…マンション?…メリーさんの言い間違いかな?多分そうだろう。


『もしもし、私メリー。今、玄関の前にいるの。』


 よしきた!さぁ…次は冷蔵庫の中だぞ…わくわく……。


『もしもし、私メリー。今、あなたの彼女と話しているの。』


 へ?

 唐突になに?まさか、ユウ子のマンションに行ってた?

 …それ以前に、一体なにを話していると?

 俺が混乱していると、その彼女であるユウ子から電話が入った。


『ねぇ。メリーって女の子の言った事…ホント?』


 え?はいぃ?いったいなんの?

 俺が混乱しているうちに電話は切られた。慌てて掛けなおすも既に着信拒否。

 ……もしかして……メリーさんに彼女との縁…斬られ…た?


『もしもし、私メリー。今、タクシーで移動してるの。』


 俺がショックで呆けている間にも、メリーさんからの電話は来る。


『もしもし、私メリー。今、警察の前にいるの。』

『もしもし、私メリー。今、被害届を出したの。』

『もしもし、私メリー。今、パトカーで移動してるの。』


 …あぁ……なんか言ってるな………。


『もしもし、私メリー。今、アパートの前にいるの。』


 …アパート……はっ!?

 俺は今まで何してた?い、いや、メリーさんがアパートの前に来たというのか?


『もしもし、私メリー。今、玄関の前にいるの。』


 もう玄関まで来たって?

 あぁもう、冷蔵庫の前に移動しなきゃ…と考えていたら、玄関から荒々しいノックの音がした。


「警察だ!ここを開けろ!」


 扉の向こうから、恫喝するような怒鳴り声がする。

 よくわからないが、慌てて玄関を開けると


「もしもし、私メリー。おまわりさん、コイツなの。」


 ユウ子に連れ添われた金髪の幼女が俺を指差し、そう言った。


 ★☆★


「もしもし、私メリー。金星なの!大金星なの!あの恐怖に歪んだ顔は、私に恐れ戦いた証拠なの!もうお笑い要員なんて言わせないの!」


 先日、相談を受けて以来、ちょくちょく家に遊びに来るようになったメリーさん。俺の目の前で、ピョンピョンと飛び跳ねながら大喜びしていた。

 察するに、都市伝説としての本分を見事達成できたのだろう。

 俺は、マグカップにホット・ミルクとはちみつを入れて彼女に差し出した。


「まあ落ち着いて。これでも飲んで。」

「もしもし、私メリー。どうもありがとうなの。」


 彼女を落ち着かせ、どういう事をしたのか聞いてみた。

 嬉しそうに語るメリーさんの話を聞くうち、俺は自分の笑顔がどんどん固まっていくことを実感していた。


 ……犠牲者を社会的に殺すなよ……。


 というかそのやり口は間違ってる。

 国家権力を利用するなんて、都市伝説のやり口として絶対間違っている。

 だけど、ここまで喜んでるメリーさんの姿を見ていると、それはとても口に出来そうになかった。


「もしもし、私メリー。本気出したらみんな恐れるの。これでお姉さんに『ぽぽぽ』って笑われたりしないの。これからもバンバン狩るの。」

「は…はははは……が、がんばってね……。」


 結局、俺に言えるのはそれだけだった。


  ◇


 後日、この付近で幼女レイプ犯の逮捕者数が急増したとか、しなかったとか。

前作「メリーさんはお笑いネタから脱却したい」の続きのようなものです。

シリーズ化とかするつもりはありませんでしたが、『社会的に殺しにかかるメリーさん』というフレーズを思い付き、書いてしまいました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そうきましたか! 社会的に抹殺ですか! 予想外の展開にハラワタよじれ切っています。 面白かったです。 どんなことをしてもやっぱりメリーさんはお笑い要員でしかないことが、今回でさらに証明されま…
2015/06/05 21:51 退会済み
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