メリーさんは手段をえらばない
『もしもし、私メリー。今、ゴミ捨て場にいるの。』
突然、携帯に入った非通知電話を受けたとき、俺はキターッ!と歓喜したよ。だってメリーさんだよ?
都市伝説お笑い要員のメリーさんだよ!
どう来るかわかるから、対策だっていくらでも立てられるじゃないか。
自主的に迷ったり、行き過ぎたりするのは…まぁ期待だけはしておくとして、最後に背後に立つことが判っているなら、背後に色々置く事でハメることもできるじゃないか。
楽しくハマってくれたら、ネットにさらしてやろう。可能なら写真つきで。
さて…どうしてやろうか…。
『もしもし、私メリー。今、角のポスト前にいるの。』
ゴミ捨て場から角のポスト…というと、推測するにコンビニの先にあるあそこかな?
さてオチをどうしようかな……水を張った風呂を背にして「びしょ濡れなの。」とでも言わせてやろうか。でもちょっとインパクト弱いよな…。
『もしもし、私メリー。今、コンビニの前にいるの。』
予想通りコンビニまで来たか。そうなると次はアパートの前だな。
それじゃあこっちは迎える準備…っと。
よし!冷蔵庫を背にして「今、冷蔵庫の中なの……寒いの…。」と凍えさせてやろうじゃないか。タイトルは冷凍メリーさんで決定!
楽しみだなぁ。
『もしもし、私メリー。今、マンションの前にいるの。』
え?…マンション?…メリーさんの言い間違いかな?多分そうだろう。
『もしもし、私メリー。今、玄関の前にいるの。』
よしきた!さぁ…次は冷蔵庫の中だぞ…わくわく……。
『もしもし、私メリー。今、あなたの彼女と話しているの。』
へ?
唐突になに?まさか、ユウ子のマンションに行ってた?
…それ以前に、一体なにを話していると?
俺が混乱していると、その彼女であるユウ子から電話が入った。
『ねぇ。メリーって女の子の言った事…ホント?』
え?はいぃ?いったいなんの?
俺が混乱しているうちに電話は切られた。慌てて掛けなおすも既に着信拒否。
……もしかして……メリーさんに彼女との縁…斬られ…た?
『もしもし、私メリー。今、タクシーで移動してるの。』
俺がショックで呆けている間にも、メリーさんからの電話は来る。
『もしもし、私メリー。今、警察の前にいるの。』
『もしもし、私メリー。今、被害届を出したの。』
『もしもし、私メリー。今、パトカーで移動してるの。』
…あぁ……なんか言ってるな………。
『もしもし、私メリー。今、アパートの前にいるの。』
…アパート……はっ!?
俺は今まで何してた?い、いや、メリーさんがアパートの前に来たというのか?
『もしもし、私メリー。今、玄関の前にいるの。』
もう玄関まで来たって?
あぁもう、冷蔵庫の前に移動しなきゃ…と考えていたら、玄関から荒々しいノックの音がした。
「警察だ!ここを開けろ!」
扉の向こうから、恫喝するような怒鳴り声がする。
よくわからないが、慌てて玄関を開けると
「もしもし、私メリー。おまわりさん、コイツなの。」
ユウ子に連れ添われた金髪の幼女が俺を指差し、そう言った。
★☆★
「もしもし、私メリー。金星なの!大金星なの!あの恐怖に歪んだ顔は、私に恐れ戦いた証拠なの!もうお笑い要員なんて言わせないの!」
先日、相談を受けて以来、ちょくちょく家に遊びに来るようになったメリーさん。俺の目の前で、ピョンピョンと飛び跳ねながら大喜びしていた。
察するに、都市伝説としての本分を見事達成できたのだろう。
俺は、マグカップにホット・ミルクとはちみつを入れて彼女に差し出した。
「まあ落ち着いて。これでも飲んで。」
「もしもし、私メリー。どうもありがとうなの。」
彼女を落ち着かせ、どういう事をしたのか聞いてみた。
嬉しそうに語るメリーさんの話を聞くうち、俺は自分の笑顔がどんどん固まっていくことを実感していた。
……犠牲者を社会的に殺すなよ……。
というかそのやり口は間違ってる。
国家権力を利用するなんて、都市伝説のやり口として絶対間違っている。
だけど、ここまで喜んでるメリーさんの姿を見ていると、それはとても口に出来そうになかった。
「もしもし、私メリー。本気出したらみんな恐れるの。これでお姉さんに『ぽぽぽ』って笑われたりしないの。これからもバンバン狩るの。」
「は…はははは……が、がんばってね……。」
結局、俺に言えるのはそれだけだった。
◇
後日、この付近で幼女レイプ犯の逮捕者数が急増したとか、しなかったとか。
前作「メリーさんはお笑いネタから脱却したい」の続きのようなものです。
シリーズ化とかするつもりはありませんでしたが、『社会的に殺しにかかるメリーさん』というフレーズを思い付き、書いてしまいました。




