ジョナサンとの出会い
新作
とある研究所に、小学生たちが見学に来ていました。
その中の1人がとても好奇心旺盛で、やんちゃな子がいました。
その子は、本の興味本位で薬品に触ってみたいと思いましたが、研究所のおじさんやおばさんたちはそれを許しませんでした。
その子は、どうしても薬品をいじって、科学者の真似をしたいので、大人たちの隙をついて薬品のある研究室へと入っていきました。
そこには1匹のハムスターがいましたが、その子は気にも留めずに薬品を触ろうとしました。
すると、どこからか声がしました。
「ここから出してくれ!」
少年は先ほどのおじさんかおばさんの声なのかと勘違いして慌てて出ていこうとしましたが、よくよく周りを見てみても誰もいません。
いるのは自分とハムスターだけです。
安心したので、再び薬品をいじろうと思った時です。
また声がします。
「俺はここだ! 助けてくれ!」
子供は周りを見回しますが、人は自分だけで誰もいません。
いったい何なのでしょうか?
「俺はここにいるっつってんだろ? 早く助けてくれよ!」
その声がした方を向くと、そこにいたのはハムスターです。
まさかハムスターが話すなんて……と子供は思いましたが、その考えはすぐに消えました。
なんと、そのハムスターが自分に向かって話しかけてくるではありませんか!
「おう! やっと気が付いたか! 頼む俺をここから出してくれ!」
そういうハムスターに子供は驚きのあまり悲鳴を上げようとしましたが、ここで声を上げてしまうと、大人たちに見つかってしますので、なんとか我慢しました。
「ハムスターさん? 君はどうしてしゃべれるの?」
子供はハムスターに質問しました。
ハムスターは手にドングリを持ちながら答えます。
「ここで悪い大人たちに研究されてるからだよ」
ハムスターはそういうと、手にしていたドングリをおいしそうに食べ始めました。
「ねえねえ、ハムスターさん。 ハムスターさんには名前はあるの?」
そう子供が聞きますと、ハムスターは口に含んでいたドングリの一部を吐き出して、大笑いし始めました。
子供はむすっとした顔でハムスターに言いました。
「なんで笑うの? 僕真剣に聞いてるだけなのに!」
そういう子供に対して、ハムスターは笑顔で答えました。
「いや、なんかうれしくてな。普段は検体名001とか番号で呼ばれるからさ、普通に名前聞いてくれるのはお前が初めてだったからな、なんかうれしくなっちゃってな。すまないな」
すると子供はすかさず言います。
「お前じゃなくて、僕の名前は翔だよ」
翔はハムスターに名乗りました。
するとハムスターも名乗りました。
「俺の名前はジョナサンだ。生まれも育ちも北海道だ」
そういうとジョナサンは”友情の印”と称して、小さなひまわりの種をくれました。
翔は”ありがとう”と言って、そのひまわりの種をポケットにしまいました。
「ねえねえ、なんでしゃべれるの?」
そう翔がジョナサンに聞きます。
するとジョナサンは真剣な顔で答えます。
「実はこの場所は世界征服をたくらむ魔王の城で、俺は伝説の勇者を探す使命を負った魔法使いなんだが、敵の幹部に捕まっちまってな、それでどうにか逃げようとしていいるんだが、この檻は魔法の力を封じてしまうんだ、だからショウ! 助けてくれないか?」
「どうすればいいの?」
「この檻の入口を開けてくれれば、どうにか逃げ出すことができるんだ!」
「こうすればいいの?」
そういうと、翔はジョナサンの入った籠の入口を開ける。
その瞬間に、研究所に警報が鳴り響く。
”検体001が脱走しました。至急、職員は研究室に向かって下さい。繰り返します……”
「あれって放送? ねえ、どうすればいいの、ジョナサン?」
「任せろ! 俺がいる限り、お前は何とか逃がしてやるよ!」
そういってジョナサンは檻から飛び出して、翔の肩にのると、何やらぶつぶつと言い始めました。
そして手が光ったと思うと、翔の身体とジョナサンの身体はすけ始めました。
「え? これどうなってるの?」
翔は手を天井にある蛍光灯にかざしながら言いました。
するとジョナサンは、声を静めるように言いました。
何故そうしたのか、翔にはすぐにわかりました。
大人達が大勢ぞろぞろとやってきたからです。
翔は部屋の隅で息をひそめて隠れています。
大人たちは言いました
「くそ! 検体001め! どうやってこの檻を……」
「魔王さまに知られたら大変よ!」
「見つけ次第、始末しろ! いいな?」
「「アイアイ!」」
そういうと大人たちは部屋から出ていきました。
翔はさっきの大人たちの対応で知りました。
ジョナサンは嘘をついていないと言うことを。
この先に訪れる大きな冒険の予感を――――
気が向いたら続き書きます。