日記1
五月十五日(木)・はれ・丈井佳純
今日は学校でケンカをしてしまいました。
イヤなことがあった時は、いつもヒトがあまりいない『あなへび公園』に行きます。
すべり台に登ると、わたしはそこでナニカに出会いました。
このすべり台のてっぺんは、周りに壁があって、外側からは見えません。だから、登るまでそこにナニカがいることに気が着きませんでした。
ナニカは、わたしと同じくらいの年の女の子でした。
赤いランドセルをしょっていて、真っ黒で、ひざくらいまでのワンピースがよく似合った女の子でした。
だけど、ナニカは。
人間ではありませんでした。
ナニカは少し恥ずかしそうに「アソボ」と言うと、首をかしげて「ネッ?」と笑いかけてきました。
夕方だからでしょうか? それともナニカの前髪がすごく長いせいでしょうか? ずっと影になっていて、顔はよく見えませんでした。
でも、誰かといっしょにいると、なんだか元気になれる気がして。わたしは「うん」と答えて、ふたりで一緒に遊びました。
普通の女の子みたいに、一緒に遊びました。
いっぱいお話を聞いてもらいました。
それでもナニカは人間ではありませんでした。
だって、ナニカの胸には。
大きな穴が空いていたから。




