第3話
ちょっと訂正をしました。申し訳ない(_ _)
エディの部屋から出て数分後。ルディは広い講堂の隅にいるにも関わらず、多くの視線に晒されていた。それは黒髪はもちろんのこと、本人のその麗しい美貌も理由の1つであろう。
髪色と同じ、鋭く感情の読めない漆黒の瞳。女性が羨むほどのキメの細かい白い肌。薄い唇。全てのパーツが整った甘い端正な顔立ちはどこか陰りがあり、それがまた魅惑的。180センチ近くはあるだろう身長に、捲られた袖から見える肌は程よく引き締まっていた。
ルディの彫刻のような神秘的な美しさを前に、黒髪や魔力など過半数の人々にとって珍しくどうでもいいことだった。遠目から彼を見つめる少女たちからは物憂げなため息が溢れる。幼い少年からは憧れの眼差しを向けられていた。
彼はそれについてはあまり気にせず周りの人の多さに驚きながら、背中を壁に付けて人間を観察する。
ルディは強力な魔力はみな教師ばかりで、生徒で気になる者が多くないことに少しがっかりしていた。純血でないにしろ魔族はいないだろうかと探すが、やはり彼だけであった。他の種族はどうかと探すがこんなに多くの人がいるにも関わらず、50人もいない。
それにしても、と高い天井を見上げる。
さすがは世界有数の学び舎、アクウィナス学園高等部。生徒は高等部の新入生だけで300人は超えるだろう。それに加えて幼稚園と初等部、中等部の新入生、保護者もちらほらと見えるから、この空間にいるのは1000人は超えているのではなかろうか。しかし会場はかなり余裕があるというから、ルディは驚きを通り越して呆れた。
この世界は全国共通で16〜18歳は義務教育となっており、高等部に入学することが求められている。もちろん、例外は存在する。
一つ目は鍛治や料理などの職人を志望する者。料理はそこまでではないが、鍛治と治癒は高度な専門知識が必要だ。専門知識を身につけても、職人になるまでには何年か弟子入りをしなければならない。たかが3年であるが本職として働けるまでには時間がかかるため、高等部は免除されている。
二つ目は滅多にいないが秘境に暮らす者。秘境に住む、ということはその場所を長くは離れられない理由があるはずだ。例えば祠の守り神など。役職を怠って何かの封印が解かれたら元も子もない。
三つ目は孤児院やスラム育ちの相当金銭的に余裕がない者。一つ目と二つ目はともかく、三つ目は国によって少々違ってくる。ここマーフィー王国は、大きな街で週に何回か青空教室が行われている。オルブライトはできるだけ国の方で奨学金制度を取り入れ、金銭的な援助を行っている。とはいえ、オルブライトの権力者たちの多くは国民の幸せを願っており善政を努めているので、そもそもスラム育ちなんてほとんどいないに等しい。そんな国も珍しい。
先程も述べたように、エディが理事長を務める世界有数のマーフィー王国学園都市アクウィナスで1番大きなの学び舎、アクウィナス学園は幼稚園、初等部、中等部、高等部、大学と別れている。
その中でも高等部はなかなか特殊。マーフィー王国民だけでなく、ルディのような国外の人間や種族も入学を希望する。…とはいえ、人間は今でも他種族に対して差別意識を持っているから希望するのはほんの一部である。
その特殊とは。
イベントが少々派手なこと。ルディは詳しくは知らないが、サバイバルや体育祭なんてものをする。
それから希望すれば、料理や鍛治の実習がある。
あとクラス分けはS組から成績順に分けられていること。だからといってルディが入るG組は馬鹿というわけではない。
G組は特別科。通称”落ちこぼれ”。ここは、珍しいことに入学試験なんてものがある。なぜなら入学希望者が多いからだ。試験内容は潜在能力の測定であり、筆記、魔力測定、実技、討論、面接などがある。試験は学科を分けずに行う。つまり、特別科というものは最初からあるわけではなく、合格者の中で”普通ではない者を集めた学科”が特別科なのである。差別されるような者を守るために設置されたらしい。この学科があるのはどこを探しても、この学園だけであろう。
ルディが特別科である理由は黒髪であるし、それ以前に混血だからだ。
さて、試験有りということで落ちたらどうなるか。絶望する必要はない。ここは学園都市。他にもアクウィナス学園以外の試験を必要としない学校がある。そこに入れば良いのだ。そもそも高等部入学は義務であるし。裏口入学はあり得ない。そんなことをしたら有罪である。
ルディの周りにはいくつかグループができている。それを見て、徐に目蓋を閉じる。少し、初等部に入りたての時を思い出す。7歳の頃である。
ルディの家族はみなフレンドリーな性格で国民との関係は良かったが、王族故か友人たちにはどこか一線を引かれていた。また、彼は少々異色であった。魔力が歴代の王たちよりも多く、魔法陣に関して言えば天才だったからだ。実際に世間からは神童と謳われるほど、さまざまな魔法陣を開発していた。しかし子供の割には何事にも冷めており、今思えば取っ付きにくい性格だったのだろう。学年が一つ上がる頃には、周りは誰もいなかった。
それでも寂しさを感じなかったのは2人の親友のおかげであろう。
(今は何してんだか…)
1人は近く、もう1人は遠くの地にいる。ルディはそんな2人に思いを馳せた。
訂正
2015/12/06
2016/01/12
2016/05/27