英国国教教会①
年の瀬も押し迫る師走のある日に僧侶は欧州への長旅でございます。
旅行鞄を確かめパスポートと就労ビザ(バウチャー)を持ちでございます。
拙僧はさようならっ日本!
一路欧州諸国に向かいます。
中部国際空港から約13時間フライトでございますね。
フライト先は欧州の玄関フランクフルトでございます。乗り継ぎまして最終の目的地はロンドンはヒースロー空港だとのことです。
「なんでございますか。常滑のセントレアに来ますとわくわくいたします」
これから狭い日本を離れて羽を伸ばしての旅立ち。見知らぬ世界への見聞録の雰囲気が犇々と沸くでございます。
国内の旅はJR東海。駅弁にお茶を買ってパクパクしたいところでございますなあ。
「なんでも機内に座るだけで食事が出るらしいのでございます」
食いしん坊の代表選手。それが拙僧でございますからそれはそれは楽しみなこと。
"食い辛抱"とはよく言ったことですなあ。
食べ放題って噂ですから(笑)
早く飛行機よ西に飛ばないかなあ。食べたい食べたい機内食でございます。あらっお腹がグゥと鳴りました。
空港にて搭乗手続きを済ませます。最後はイミグレーションにて出国のスタンプをポン。おしまいでございますなあ。
「さあさあ飛行機だあ。かわいいエアーアテンダント(スチュワーデス)がいますよぉ。急げ~」
拙僧は機内でクチャクチャ…
あっいやっ!
「食べて飲んでで極楽極楽でございます。お腹いっぱい。食べたなあ。満足でございます」
またでございますね。
エッと
エッと
…でございますね。
拙僧の頬が緩みがちになるでございます。
だらしなく
ニヤニヤッ
エヘヘ~でございます。
「CAさんが。アハハッ一段と美しいのでございます」
拙僧はアテンダントさまに"ヒトメ惚れ"してしまいましたでございます」
エアーアテンダントは機内サービスのために客席に回っている。
「拙僧としても幸せなことでございます。呼ぶと隣に来てくださいますから」
拙僧はガンガン呼びました…でございます。
遠慮なく
呼べばCAは来てくれますでございます!
いくらでも
「酒・ジュース・おつまみ・菓子せんべいちょうだい」
これだけ呼んだ甲斐がございました。拙僧と仲良くなりました。
しかし最後には彼女あんまりいい顔してなかったなあ。
「なぜでございましょうか?ハテハテでございます」
アッ!
しまったなあ
名前とメールアドレス聞くのを忘れた、
でございます。
「あのアテンダントの笑顔とオシリの形は瞼に焼き付いてでございます。それで満足かな。フゥー食べた食べた」
飛行機フライトはセントレアから欧州のフランクフルト経由でロンドンのヒースロー空港に到着。
最初の訪問国が英国になっております。
『キングオブイングランド&ノースアイルランド』
英国の正式な国名でございます。拙僧のバウチャーはそうなっております。
長い名前の国だなあ。
フライトの時間は拙僧は食べてばかりではございません。
暇になりましたら椅子の前にあるゲームでカタカタお遊びしていました。
「このゲームなかなかやり方が難しいから。うんせよっこらせ。アチャア~また負けた」
なんてやりたい放題してましたらすぐに英国到着でございます。
ヒースロー空港に降ります。
「わあっ。あたり一面が外国ダぁ~」
拙僧は単純に驚きました。
ヒースローの中はロビーから全て英語ではありませんか。場内アナウンスから掲示板まで英語ばかりでございます。
カウンターからイミグレ(出入国管理)も英語。右も左もでございます。
挙げ句は拙僧の前も後ろも。
「アチャア~母国語の名古屋弁が使えんガヤァ~」
というわけで拙僧は心して拙い英語を喋ることに致します。
ええい度胸決めて喋べってやれ!
「エクスキューズミー。アイケムフロム曹洞宗だガャだぞ」
ヒースローのイミグレーションはそれでもかなりクリアなクィーンズイングリッシュが聞こえたようでございました。
拙僧の(英語耳の)ヒヤリング能力でなんとか通過でございます。
イミグレは観光目的ならば右から左でビザスタンプポンなんでございますが拙僧は違います。
就労ビザも一番難易度の高いものでございます。
イミグレは入念に拙僧を取り調べいただいたしだいでございます。
袈裟なんか珍しくチラッと中身みせちゃった。(下着)
オッと
拙僧の職業欄は"仏教・僧侶"になっております。
この仏教の肩書きは英国カソリックには大切に感じるものらしいでございます。
拙僧に仏教とはなにかブッダとはなんぞやとイミグレーションは聞いて参りましたから。
世界3大宗教はご存知ですか。
「仏教・キリスト教・イスラム。お釈迦さまは偉大なお方であると改めて実感致します。合掌」
イミグレーションで頭を下げ一拝礼いたしましたらスゥ~と通過でございます。
僧侶=プリーストは格が違いますでございますハイッ。
プライド
威厳
ピカピカ
ヒースロー空港待合室。確か英国国教の待ち合わせの方が拙僧を迎えのはずでございます。
拙僧には相手がわからなくともこの曹洞宗袈裟姿がより一層目立つものでございます。
「早く若きハンサムな拙僧を発見してくれ」
ロビーでウロウロしておりました。
「ハロー」
若い女の声が背後よりかかりました。
やれやれ見つけたか
国教教会の方でございますな。
拙僧はその娘さんについてノコノコでございます。
「しかしなんですなあ。英国国教教会は派手な娘を寄越したもんだ」
ミニスカにタンクトップでございます。
冬だと言うのにオッパイなんか半分露出でございます。
ミニスカはパンティが見えそう~な(チラッチラッ)。
「あちゃあ~しゃがんだら赤いのがチラッでございますよ」
拙僧の荷物が回ってくるのを待ち合わせて車に乗る手筈なんでございます。
先ほどから
おかしいのですね。
若い女の子は早く早くと甘ったれて拙僧の腕を懸命に取る。
いや拙僧は嬉しかったでございます。腕が拙僧の腕がよいしょよいしょとやっている度にオッパイに触ったりアッハハ。
決定的なことがございました。
アラッどったんこの娘さん。
拙僧をジッと見つめて我が手をオッパイの中に誘導するではありませんか。
カモ~ン
ハニー
あん?ハニーだって。なんじゃいな。
これで拙僧ハタッと気がつきました。
「あんたは違う人やあ。国教教会じゃないなあ」
気がつきましたが拙僧はもう少しオッパイをモゾモゾさせました。
だって拙僧は大変に気持ちいいんだもん。
まったく危うく我が身を滅ぼすところでございました。
まったくいけませんなあ英語が不自由ですとなにをやられるかわかったものではありません。
出迎えかお誘いか区別もつきません。
拙僧電話番号控えが手元にあります。「う~ん。ここは男だ日本男児でございます。ひとつ度胸を決めて英語で電話してやるかな」
なんと言えばいいのかな。
いきなりガアガア英語でしゃべって来られたらどういたしましょう。
ドキドキ
不安感が満タン
「ハッハロー」
冷や汗たらたらでございますね。
「お待ちしておりました。長いフライトご苦労さまでございました。英国国教教会でございます」
流暢な"日本語"が聞かれましたでございます。
フゥ~
教会の役員さんに聞けば拙僧が待ち合わせのロビーを東西と間違えたようでございます。
ちゃんと東西と日本語で書いてくれたら間違えなんかしなかったのにアッハハ。
「お疲れ様です和尚さま」
英国国教教会の役員さまは手際よく拙僧の荷物を車に積みます。
日本語のわかるスタッフもいらっして。
さあ教会にレッツゴーでございます。
「和尚さまロンドンはいかがでございますか」
初英の感想を聞かれても。
「ヒースローにはよからぬ悪邪なるヤカラもウロウロしています。もしかして不愉快な思いをされたのではと心配致します」
ムムッ
国教教会はさすがだなあ。目のつけどころが違うなあ。
ロンドン市街に参りますと拙僧は日本大使館に寄せてもらいます。
簡単に申せば身分照会でございます。拙僧は仏教の僧侶でありますよと日本大使館が証明することでございます。
「和尚さま日本大使館でございます。パスポートを提出し英国就労ビザの確認をお願いでございます」
ハイッわかりました。
拙僧は元気に答えたのですが。
大使館員に拙僧の真新しいパスポートを見せ…
うん?
パスポートを
あらっ?
???
「ない!パスポートがない!ヒースローのイミグレーションでスタンプをもらって拙僧は入国でございます」
イミグレでポンッと提出したのは記憶している。
「ちゃんと袈裟のこの中に。確かにこの中に入れたんだ。アッ!あの女だあ」
拙僧一生の不覚でございました。
あのミニスカのお姉ちゃんの仕業でございます。
赤いパンティをじろじろ見ている時にパスポートを摺り取られてしまいました。
アチャアー
もうガックリでございます。
こんなことならパンティ下げてやればよかった。
「とにかく英国は紳士の国だとばかりは言えないのでございます。以後気を付けてください」
日本大使館からお小言をいただきました。情けないない限りの拙僧でございます。
穴があったら入りたいなあ。いやあ恥ずかしながら名古屋に帰ってしまいたい。
日本大使館でパスポートを再発行されましたでございます。
写真はバシッと決まっていい男でございますよ。
ではなく力ない拙僧で情けないことは一目です。
トホホな感じでございますね。
日本大使館に宗教家としての就労ビザ発行の身分証明をしてもらいます。
「さあ済んだことは水に流しました。気を取り直して欧州のプリーストになりましょう。仏教を伝えてやるぞ」
拙僧はいたってカラ元気でございました。
英国国教教会と曹洞宗の繋がりは意外や意外。ないようであるんでございます。
「1981年当時のチャールズ皇太子と故ダイアナ妃が京都の曹洞宗詩仙堂に来ております。この頃はお二人は仲むつまじくアツアツだったようでございました」
そのチャールズ皇太子とダイアナ妃のお子さんがウィリアム王子とヘンリー王子でございます。
「拙僧何を隠しますか。英国ウィリアム王子と同じ年齢ダモン。拙僧は鼻が高いでございますなあ」
英国で王子とお逢いしたらどうしましょうか。
おお王子!
なんだいな和尚!
同級生な仲良しで呼び合いたいでございます。
まあっそれは希望ですけどね。
王子は祖母さまがエリザベス2世女王です。拙僧の祖母は曹洞宗永平寺総本山の娘。ある意味似ています。
「王子にサインもらいたいな」
逆に拙僧の毛筆を進呈したいでございます。
「和尚さま準備はよろしいでしょうか。さっそく曹洞宗ロンドン支部に参りましょうか。支部のスタッフは皆さん日本からの高僧のお着きを首を長くして待っております」
拙僧は高い位の僧でございますか。
どうしましょ
正直申しあげて
大学の学位とお寺の副住職ぐらいしかありません。
ではなぜ拙僧が高い位の僧侶になってしまったかと申しますと。
曹洞宗本山の本部にいる拙僧の同期のやつの仕業でございます。
拙僧の僧位を管主の次、副管主に勝手にしていたからでございます。
拙僧の本山本部での僧位は13番目/18段階でございます。
12番目が同期ですね。
「ケッ悔しいなあ。まだあいつ俺の前にいやがる」
まあっそれはともかく
英国国教教会に提出された拙僧の身分紹介に副管主とクレジットであり2番目/18段階を証明されてございました。
「高いや。いやいや高過ぎる!どうしましょう。知らないぞ簡単に化けの皮は剥がされてしまう。ああ心配だあ」
招かれた席で拙僧着任の挨拶でございます。曹洞宗支部でありますが大半は英国の方ばかりでございました。
「拙僧は気合いを入れて(英語を使い)道元禅師さまの教えを伝えましょう」
片言の英語でこちょこちょやるつもりでした。
が、ちゃんと通訳されておりました。
ああ楽ちん。挨拶状を読み上げておしまい。助かるわあ。
「和尚さま。お疲れでございましょう。早速に宿舎にご案内致します。これこれ。日本からの和尚さまにおつきの者はどなたじゃ」
通訳の方に促されるとかわいらしい娘さんが教会関係者の中からチョコンと現れたのです。
「国教教会附属高校のケイト・ミドルトンです。17歳でございます」
スクールガールのケイトは日本語を理解いたしません。
「ケイトは英国教会の洗礼を受けたばかり。日本に興味があるとのことで和尚さまのお付きに選ばれております」
こんなかわいらしい英国美少女が拙僧に同伴していただける。
言葉の壁があってもかわいらしいお嬢さんは問題なしでございます。
よいしょ
こらしょ
片言の英語をしゃべってなんとかしてケイトとはコミュニケーションを取っていきます。
ケイトは拙僧の案内をしっかりしてくれます。
拙僧の拙ない英語でなんとか理解できてでございます。
拙僧は日常生活には不自由はいたしませんでございます。
「ケイトのお陰で英国生活が楽しめてございます。ありがとうケイト・ミドルトン先生」