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自己肯定感が低い私の聖女生活は  作者: 花咲


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4/4

4.眠れなくなった私に

「さっ、今日こそは、シーツを替えさせて下さい。必要な家具も入るので、たまには日に浴びるのも良いものですよ!」

「いや、隅っこで邪魔にならないように…」


ニッコリ


 私の身の回りのお世話をしてくれているうちの一人、侍女のジャスミンさんの圧に早々に負けた。


「……行ってきます」


 日常の生活は、最初だけ教えてもらえれば一人で大丈夫ですと何度も陛下の部下の人に言ったのに却下され、結局は侍女さんが一人とメイドさんが二人になり、護衛が三人。なかなかの人数である。


そして現在。


「訓練の最中ですね」


 護衛のソレルさんと場内見学をしているんだけど、まぁ、広いのなんのって。


 なによりも皆、若いのよ。


 男女共に滑らかな健康そうな肌にスラリとした綺麗な骨格。そもそも人種が違う。


 いや、私が異質なんだ。


「私のいる場所じゃないなぁ」


 あ、不味い。聞かれたかな。リモートで最低限の聖女という役割はこなしてはいるはず。だがしかし、引きこもりの趣味はゼロの私に対して物凄く心配されて…いや、観察されている気がするのだ。


 代替えはないらしく居なくなられたら困るんだろうな。


「ツバキ様、木陰でお茶でもどうでしょうか」

「…手間でなければ、お願いします」


 借りている屋敷迄すら歩くのが億劫になっていた私は、提案に乗ることにした。



✢〜✢〜✢


「よぉ、聖女さん」


 何故かグラニーさんが木陰に設置された椅子に腰掛け、これまた優雅にお茶を飲んでいる。


「何か約束してましたっけ?」

「ん?今からだよ。椿ちゃん、お茶しよう」

「不敬ですよ」


 軽い返しに、何故か苛立っているのは、私ではなくソレルさんである。


「だいたい貴方は、今日は視察に同行されているはずでは?」


 私の前に出て遠慮なくズケズケと言い放つ姿が、なんだか兄弟みたいな距離感だな。


「あ、失礼しました。彼は伯父なんです」


 ソレルさんが、ハッと我に返ったような表情をして振り返り私に教えてくれた。


うん。

「確かに。濃さが似ていますね」

「え?濃さって何ですか?!顔が似てると言われるより嫌なんですけど!」

「似てねーよ!俺はコイツとみたく筋肉馬鹿じゃない」


ギャーギャー煩い。


「そういう反応からして似てるんです。そして、座っても良いでしょうか?」

「勿論」

「ありが」

「伏せて!!」


 ソレルさんの今までにない大きな声がした瞬間、私は、地面にいた。


 いえ、正確には誰かが私を頭から抱えている。もっと他に考えなくてはいけないはずなのに、私は、状況把握よりもレモングラスに似た香り、香水だろうか。それが気になってしまった。


「ソレル、気配は消えたようだが」

「今、部下に追跡させてます」

「聖女さん、怪我ないか?」

「あ、すみません!」


 グラニーさんに抱きしめられていた事にやっと気付き、緩まった腕から慌てて抜け出し謝った。


「悪い、つい力任せに倒した」


 軽く頭をポンポンされて。…なんか恥ずかしい。


「ツバキ様、申し訳ないのですが、お茶はまたの機会に」

「そう、ですね」


 ソレルさんの、まだ浅いながらも今まで見たことのないビリビリとした雰囲気に私はやっと、事の大きさに気づいた。


✢〜✢〜✢



「今夜も寝不足確定かなぁ」


 あの、襲撃事件から五日目。私は、眠れなくなってしまった。


 いや、少しは寝ている。だだ、全然睡眠時間が足りてない。


「女神様と約束したのに」


 私は、あの襲われかけた日、直ぐに屋敷に戻って聖女様にお願いした。


『刺されたり切られたりは絶対に嫌です!』


 一度は死んでるらしいけど、自覚はないし。殺されたくないし痛いのも嫌だ。


『生命は守る』


 書かれた文字は簡素だった。


「狙われる存在だなんて聞いてないし」


 歓迎してとは言わないけど、女神そのものを嫌悪する集団、神殿に力をつけさせたくない権力者達の二つは存在する事を最初に言って欲しかった。


「まぁ、かといって言われても、やっぱり今の状況になっちゃうよね」


 そう、私は、とても怖いのだ。いつ何処で狙われるか分からない。寝ている時なんで絶好のチャンスだろう。


「護衛を増やしました」

「防御壁をさらに強くしたよ〜」


 騎士さん達や魔塔のバジルではなく、バージルさんも対策をしてくれた。


それなのに。


「昼間のがマシなんだよね。夜がホント無理」


夜が怖いのだ。


「はぁ。とりあえず温かい飲み物でも飲もう」


 そう思い、ベッドから抜け出た時。


コンコン


 遠慮がちなドアのノックに返事をすれば。


「グラニー医師がお会いしたいそうです」


 ジャスミンさんが、こんな時間にと困惑しながら伝えてきた。


「よぉ、聖女さん。いい茶葉が入ったから飲もうぜ」

「昼間でいいじゃないですか」

「手が空くのが夜なんだよ」


 こうして、グラニーさんとは、お酒ではなく紅茶を毎日飲む事になってしまったのだ。




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