2.多少の選択肢はあるよね?
「聖女さん、気を失って更に半日も寝過ぎだぞ」
グラニーさんというイケオジ医師が心底呆れたというように肩をすくめてベッドに半身を起こした私を見下ろしている。
「動揺して暴れるよりマシじゃないですか?」
急に自分があの世行きになった事が、まだ現実味がない。というか納得いかないのもあり、つい喧嘩腰になるも、華麗にスルーされた。うん、イケオジのが人生経験が上なだけある。
「そんな君にコレな。まずは読んでくれ」
嫌味ダメージゼロの彼からB5サイズの薄い冊子を受け取った。
「えっ」
私が何に驚いたか。冊子に触れた瞬間、表紙に文字が現れたのだ。
「聖女説明書」
なんだか品物についてくる取り扱い説明書に似ている。
「その本は、聖女さんの国の言語で書かれているらしい。また時間差はあるが空白に聞きたい事を書き入れると数日後に女神から返事がくるらしい」
らしいとは、随分と曖昧である。
「我々には全てが白紙に見えるのさ。今なんて聖女さんに渡したから触れる事すら不可能さ。イテッ」
バチッ
と彼が紙に触れようとすれば静電気の強力バージョンのような音が鳴った。彼は、ほらなと手を擦っている。
「書く物、ありますか?」
とりあえず読まないことには進まなさそうなので、ペンを要望したのだった。
「随分と書いてるな」
暫く何処かへ消えたと思ったら、彼は湯気の立つスープと丸いパンが乗ったトレーを片手に持っており、どうやら私の食事らしい。
何か毒とか入っていたらと警戒したが、先程、女神様とやから返信があったので、私は悩みながらも手を伸ばした。
「美味しい」
見た目を裏切る事なくクラムチャウダーで、しかも煮込んであるのか旨味が最高である。
「これは、果汁ジュースな。で、多少は落ち着いたのか?」
「どうも」
イケオジからグラスを受け取り、私は飲み干して答えた。
「とりあえず、リモートワークにします」
「りもと…わーく?」
イケオジならぬグラニー先生と助手は、不思議そうな顔をした。




