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勇者ご令嬢(女神ディスティニア)(世界識別名称レムリア)

勇者ご令嬢 ニオの物語

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2025/10/13




 弱虫で臆病で泣き虫。

 ニオという少女はそんな人間だ。


 気が付いたら王宮という名のーー国の中で重要な場所で育っていたその少女は、一人の王子の遊び相手になった。


 王子の名はエルランド。


 優しく穏やかな性格の少年だった。


 そのためニオは、すぐにエルランドを信頼し、好きになった。


 そんな彼女は、人見知りでもあるため、他の子供達とうまく交流する事ができない。


 エルランドに促されても、出かけた貴族の社交界では、隅っこのほうでじっとしているだけだった。


 そうでない日は、そのエルランドの傍にくっついているだけだ。


 そんな少女に声をかけたのが、とある少年。


 帽子の中にたくさんのお菓子を入れて持ち歩いている少年だ。


 その帽子の少年は、他国の王族で、エルランドの顔見知りだった。


 帽子の少年は、エルランドの「ニオの友達になってやってほしい」という頼みを聞いて、ニオをかまうことにした。


 帽子の少年はニオに対して、ぐいぐい話しかけ、勢いのある喋り方をするものだった。


 そのためニオは、彼の事を最初は苦手に思った。


 しかし、付き合いを続けるうちに、その少年が優しい事が分かったため、ニオは帽子の少年にもエルランドに向けるような信頼を抱いた。


 小さく狭かったニオの世界は、少しずつ広がりを見せ始めた。


 そんな中、エルランドの遊び相手から、護衛になるための訓練が始まった。


 それは、王子から王になる過程で、エルランドの命がねらわれる事が増えたためだ。


 ニオは戦いや争いが苦手であった事から、最初は訓練に積極的ではなかった。


 しかし、エルランドがとある暗殺事件で怪我をしてからは、一生懸命とりくむようになった。


 自分の性格を変えようと、一生懸命強くあろうと努力した。


 その過程で、ニオには特殊な力がある事が判明し、呪いを無効にすることができるようになったのは幸いだった。


 世界には、表世界には出ない「呪いという力」が存在していたため、地位のある人間が命を狙われる際には、ニオの力が護衛として便利だったのだ。


 ニオはエルランドを守れる自分の力を誇りに思っていた。





 それから少しだけ月日が過ぎていく。


 ニオは自分が大した事はできない人間だと知っていたため、多くを掴みとろうとはせず、エルランドだけをしっかりと守ると決めていた。


 だから、親しかった帽子の少年が命を狙われた時でも、エルランドの事だけを守る事にしたのだ。


 別れは突然でニオはとても悲しくなったが、それは仕方のない事だと割り切るしかなかった。


 そんなニオは、エルランドの傍を離れて、王宮から遠くにある騎士学校へ入学する。


 さらに戦う力を身につけるためだ。


 騎士学校での日々は順調で、ニオは良い成績をおさめていく。

 指揮能力もあげて、集団を統率する力も身につけた。


 けれども、そんなニオに近付くものがいた。


 それは呪術師という人物で、世間で指名手配されている犯罪者だった。


 呪術師は呪いを使って人を害する存在であり、裏世界のものたちには有名だ。


 そんな呪術師はニオの力の秘密を教えるといって、王宮の中にあるいくつかの隠し通路を伝えた。


 その隠し通路を使って久しぶりに王宮に戻ったニオは、秘められた場所で自分の力の真実を知った。


 地下空間にあったのは呪術の実験場で、そこで閉じ込められた人たちは、非道な実験に使われていたという事実が明らかになった。


 年代や性別は様々で、主に犯罪者を使っているが、親から引き離した子供を連れてきて、様々な実験を行う事もあった。


 その子供の一人がニオだった。


 ニオを監視していたのか、その場に導いた呪術師が現れて、こう囁く。


「自分を不幸にした王宮や、そんな実験を行わせていた王族が憎くないかと」


 ニオは、首を横に振って否定した。


 どこまでエルランドが知っていて、関与しているか分からないが、自分は守るべき主人が困るようなことはしない、と。


 だから自分はエルランドを狙う刃にはならないと答えた。


 もうじき王となる予定のエルランド。


 そこまで生き延びてきたエルランドは、自分の命ほしさに誰かを不幸にするような人間ではなかった。


 命を狙われた時も、他者を慮り、国を良くしていこうという決意を固めていくような人間だった。


 だからニオはそんなエルランドを信じる事にしたのだ。





 ニオは、これからエルランドの命を狙うであろう呪術師と対峙する。


 その戦いの結末がたとえ敗北になろうとも、敗北しかないと悟る時が来ても、ニオは自分の考えを曲げるつもりは微塵もなかった。


 そこには、かつて臆病だった少女などどこにもいない。



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