1話 地獄行き
「雷神さん。全力で倒しに行ってください。サポートは僕がします」
少しだけ僕の方を見ながら言う。
「言っとくが、まだ貴様は信用してないぞ」
「分かってます」
風神が荒れている風の中、鼻につくような笑みを浮かべる。
「そうかそうか......お前はそっちにつくんだな。雷神はさっき思いっきり私に殴られた、しかもそんなにボロボロで、そんな勝てる確証のない方につく......と。なぜだ?」
「......ただの、勘です」
「もう少し良い答えを期待していたんだが」
風神は手に風を集め、大量の斬撃を放ってきた。
雷神は僕を手を引き遠くに逃げる。
「全く......これではただの足枷じゃないか」
そう呟いていると、後ろから気配がした。
『影嵐』
突如上から岩の塊が降ってきた。
こんな近くにいつの間に?まさか「影」は気配を消すってことか?
色々な疑問が頭の中で飛び交う中、咄嗟に腕が動く。
「はあぁッ!」
なぜか僕は岩を砕いていた。
その隙に、雷神を連れて逃げる。
そういえば、ずっと戦闘をしてて気づかなかったけど、金色の長い髪に腕輪、そして透き通るような肌。
雷神ってだいぶ綺麗な女性だなぁ。そもそも性別なんてあるのかって話だけど。
「......私は貴様をみくびっていたようだ。......すまない」
「いいですよ別に......。それより、こんな防戦一方じゃ勝てないですよ?」
「私はあいつと戦う前からずっと力を溜めていた。ここにな」
腕をまくって指をさすと、青白い光を放っている金色の腕輪が見えた。
「ここに、ずっと?」
「そうだ。だから、これを確実に当てれる隙を作ってくれ」
色々と攻撃を見てきたけど、全部絶対に音速は超えてる。攻撃を溜めて撃つとすると、普通の10倍はいく。近づいて放つのを二秒とすると、いや、全部仮定なんだ。確実なんてできない。他に何かないか?速度を求める方法、もしくは数秒時間稼ぎをする方法......
「何をぶつぶつ言っているんだ?」
「聞こえてたんですか。まあ隙を作るっていうと何秒かかかると思いますし」
食い気味に答える。
「そんなことはない。別にここから当てることだってできる。ただ、万が一外してしまうと、もう一回貯めるのにとてつもない時間がかかるってことだ」
やっぱ考えすぎだったか......。まあそれなら、何かの発言をすれば足りるかな。
「僕が何か大声で言いますから、それでいいですか?」
「......合図は?」
「地獄行きだー!とか?」
「分かった」
嵐の音がする。風神が来た。
「もう手加減はしないぞ」
「……お前!こんなにこの地を荒らしていいと思っているのか?」
「急にどうした……お前はそんな感情的にならないやつだと思ってたが」
「絶対に許さない!お前は地獄行きだーー!」
その瞬間、風神の背後に腕輪の電気が迫る。
だが、息をするように防いできた。
「え……?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやろう」
『盗朧』
一瞬目の前が真っ暗になったと思ったら、いつの間にか水平線が見える血の海の上に居た。