思春期男子パーティー
「女子更衣室を覗こうぜ」
男子の中にいる、そーいう好奇心のある者。18歳未満は禁止と言われても、なんのそので踏み込む者達。
「しかし、どうやって?」
「女子更衣室は基本閉め切られている。カーテンもつけられている」
興味あるなしはその子、それぞれではあるが。
今時ならスマホを仕込んで隠し撮りし、それでお金を儲ける……プライバシー0の事を……
「仲とかを気にしない女子なら、そこらの奴が商売しそうだな」
「そーいうこと言うな。夢が壊れる。つーか、犯罪」
「バレなきゃ犯罪じゃないって、もう知ってるお年頃さ」
実現するには、女子の誰かに協力を求めたいものだが。ここはそーいう女子がいない、仮面お淑やか系女子ばっかりだ。少しは男子達のノリが分からないものかね。
そんな思春期男子達に、暇過ぎる神様がひょっこりと現れる。見上げる太陽の眩しさと同じ、白い光を放ちながら
『君達。その願いを叶えてやってもいいぞ』
「な、なんだお前は!?」
『4人の男子か。……ふふふ、もう少し共有する心を持つ人数を揃えれば、もっと凄い力になる。学校の行事で、1人の力ではなく、周りの力と同じ意志の強さは分かっていよう。相互協力型……君達に分かりやすく言えば、協力のみで伝わるか』
「あなたは一体!?神様かなにか!?」
『そうだね。で?1週間限りだが、使ってみるかな?男子のお悩みは、女子にも理解できないものだ』
これは持論だが、女子達よりも男子達の方が結束できると思う。特に理由はない。
それ故、この力は男子達が扱うに相応しいと思うのだ。
あえて言うが、理由がないから協力できると思うのだ。
「!!」
『君達に与えてあげたぞ、”意識結束”の能力。かなり癖のある力を上手く使いこなして、望みを叶えるといい』
「え!?俺達、女子更衣室を覗くためにそこまですんの!?」
◇ ◇
”意識結束”
同じ思考・思想を持つ者達が揃うことで、それに適した現象を数時間単位で引き起こせる。
何が起こるか分からず、いつ発動して、いつ切り替わるのか。どれだけ強い出力が出るかまで、まったく読めない能力である。
共通+大勢+博打+時間 という 非常に厳しい制約で非常に優れた力を出すが、使いこなせる者達はまずいないだろう。
しかし、使い様によっては……
【さー、着替え着替え】
【男子達ー、一緒に着替えよー】
【男子達の身体も見たいなぁ~】
【最近、大人の下着をね………履いてるの】
女子達の思考そのものを変えること、そして、それらにまったく違和感を感じずに行える事も可能という。とんでも能力にも仕上がる。
安全にカメラで見れるとか、透明人間になれるとか、多種多様なニーズにすら答えることもできる。男子がどんどん大人になっていくほど、色んなジャンルに突き進めるだろう。
「おーーーいっ、みんな!!」
彼等はソレをなんとなくではあるが、理解した。もちろん、ルールの意味でだ。
同じ気持ちを持つ男達を集めることで、とんでもない思春期を過ごせると思った。自分達以外に能力を持つ者はいないが、それでも男達は……エロい事には協力してくれる。それにこれは実際にするのではなく、思っておくことだけでいい。緩い縛りだ。
自爆特攻で女子更衣室に潜入しろとか、そんなことはないのだ。
そんな話に乗るように、
「なんか面白いことやってるみたいだ」
「先生達も混ぜなさい」
子供が好きな男子教師達。ならびに、そーいうムフフな事に興味がある、まだ出会っていない大人達もいるものだ。噂が広がるように、もはや始めた4人達でも止められない流れ。
みんなの意識。みんなの気持ちを沢山集めた。そして、
「「「「あ!!これは、来る!!」」」」
4人は、能力が発動する瞬間を感じ取った。
その規模は凄まじく。能力を持っている男子4人以外に通じたものであろう。
◇ ◇
そして、
「おはよー」
女子達はなんの疑問もなく、当たり前に入っていく。
なんと僥倖。なんと危険な。
男子更衣室の中へと、なんの疑問の気持ちもなく入っては、
「今日の体育やばいねぇ。花粉凄い」
「それよりあなた、最近大人びてない?」
「みんな成長期だもんね」
そこで着替えを始めてくれる。普通に男子更衣室で着替えるのである。全ての女子達は。
それほどの世界的な改変が起こったというのだ。
「……なぁ、この力って」
「ああ。……俺達はあまりにも強い力を使ったようだな」
「途中から人数が爆増して、把握しきれなかったもんな」
「なんか思ってたのと違う!!雑念入ってただろ!」
気付いているのは能力を持っている4人だけである。
彼等は”女子更衣室”でそれに気付いている。そして、彼等だけでなく、これに協力してくれた男達もだ。
「女子ってこーいうのが好きなのか」
「この下着はどこに商品なんだ」
「化粧品とか沢山あるなー。オシャレって金がかかるな」
………よーするに。”意識結束”の能力が引き起こした現象は、
全世界の”男子更衣室”と”女子更衣室”を入れ替え、能力者以外はそれに気付かない改変が起こったというものであった。女子更衣室を覗くという目的は確かに叶ったのではある。
「男子ーー!!あんた達の更衣室から女子の化粧品の匂いがするんだけど!!女子の真似事ですか?女子のご機嫌を知ろうってんですか。キモイんですけど!」
「うるさいなー!お前達のところだって男臭いぞ!!なんかやってたんじゃね!?男子連れ込んでたんですか!?」
「してないわよ!!別に!!そーいう妄想!!気持ち悪い妄想、止めてくれません!!女子だってメッチャ汗かいてます!!これから匂いケアとか色々するしー!!つーか、男子の方が女子の荷物ばっかり持ってるの、おかしいって言ってるんですーー!!」
「別におかしくねぇーだろ!!どっかの誰かが持ち込んでたみたいなだけだ!!女っ気のない奴等だなーー!!」
混乱は確かにあれど、口喧嘩だけで収まる始末。事情を知っている唯一の4人は
「やっぱ、結束するなら4人くらいがいいよな?」
「しっぺ返しを食らったみたいだな」
「この力、消え去るよね?余計なことを考えたら、こーいうこと起きそう……」
「大人になっても絶対、これは使いこなせないな」
能力が消えてくれるまで、何も考えないことを考えるのであった。