個人企画に参加してみた ①と②それと③ +バンダナコミック01作品
クリームソーダの海に溺れたい
エメラルドグリーンに染まる炭酸の海。わたしはルビー色したチェリーを求めて、バニラアイスクリームの島へと渡ることにした。
泳ぎたい……
溺れたい……
沈みたい……
弾ける炭酸の泡が肌をパチパチと刺激する。
甘ったるいシロップが喉を潤す前に身体中から浸透して来て、刺激を受けた肌をエメラルドに染める。
溶け出すバニラの香り。
白く濁って、べたべたとまとわりつくのも構わず、冷たい雪山にダイブするかのようにわたしは埋もれた。
もう少しで届く……
赤く染まった球体は、少し皺が見えた。
それこそが本物の証。
もいだばかりの新鮮なさくらんぼには、あの赤々とした鮮やかな赤は出せない。
エメラルドグリーンと、バニラホワイトに、シロップ漬けのチェリーほど似合う赤はない。
高級ブランドのチェリーではなく、庶民的な砂糖漬けのチェリーこそ、わたしの輝き。
気取ったところで、わたしはかわらない。
飾ったところで、わたしはわたしだから。
ようやく届く、わたしの輝き。
大切だからこそ、いつもエメラルドの海に沈めてしまう宝物。
さあ‥‥ほんのひと口齧るだけで、痺れそうな、癒しのひと時をわたしにください────
……
……
……
────酸っぱぁぁぁぁぁぁ!?
────塩っぱぁぁぁぁぁぁ!!
「おばあちゃん! またチェリーのかわりに梅干し乗せたでしょ!」
夏休みの日の思い出。駄菓子屋のおばあちゃんに無理を言って作ってもらった擬似クリームソーダ。
デパートで飲んだ味には遠く及ばないけれど、駄々をこねて作ってもらったわたしのクリームソーダ。
おばあちゃん自慢の梅干しは、クリームソーダの炭酸よりも刺激的な懐かしの味────。
グリーンに染まった舌と、酸っぱ塩っぱい優しいおばあちゃんのいたずらの記憶。
昔遊んだことのある公園と、おばあちゃんがお店を経営していた駄菓子屋さん、それに酒屋さんなどは、いまはマンションになっていた。
いまとなっては、いたずらなのか間違いだったのか、もう確認出来ない思い出の味。
酸っぱい時と塩っぱい時があったような気がしたのは、他の記憶が混じったせいかな。
夏バテや熱中症に対する、おばあちゃんの知恵袋のようなものだったのかもしれません。
すっかり飲まなくなったクリームソーダ。飲まないけれど、メニューで見かけたり、食品サンプルやガチャガチャなどで見かけると嬉しくなる。
エメラルドの海の底に沈んだチェリーのように、優しい思い出はそっとしておいて欲しい。
溶け出す流氷のようなアイスクリームのように、身も心も投げ出して溶かしたい。
そんなあなたに、きっとわたしは自分の体験を語りたくておすすめしてしまうだろう。
「クリームソーダはいかが?」 と。
お読みいただきありがとうございます。クリームソーダ祭りの投稿作品となります。