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僕は仲人だ

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

湿度温度の話をしておきながら、蚤の市に参加しているのか疑問で出来た話。

多分こうじゃないかな?

「君は此処に良く来るけども、こういうのが好きなのかい?」

芦毛の髪した店主が、蚤の着きそうな物を愛でながらそう言った。指の先には和紙と能面。代表的なお多福の顔が真っ直ぐに彼を見詰めていた。

「好きだよ。……学芸員の資格取るくらいには」

数多の伝から引き寄せられた魑魅魍魎。見る者見たらガラクタ塗れなこの空間。けれども私達にとっては全て、目を引く宝の山だった。

時代のニスを塗った品々も、そこから放たれる古の香りも、全て大好きだった。

「だからこそ、人目に晒したり、増してや蚤の市に持って行く事が、ちょっと疑問なんだよね」

学芸員の資格を得る過程で、嫌と言うほど覚え込まされる概念。温度と湿度は最適な基準で。少しのブレも許されない。もしそれが継続されるなら、この物達の崩壊に繋がる。学んだ内容はほぼ全て忘れてしまったけれども、これだけは鮮明に覚えている。

此処は骨董品店で、博物館と通ずるものがある。勿論、店主は其れを重々承知しており、共に博物館を訪れた時にも、この概念を口にしていた。だから、何故?

彼は私の視線を遮る様に、おかめの面で顔を覆う。そうして其れを被ったまま、口に出す。

「これだから」

「言ってる意味が分からないよ。物にする様に丁寧に説明して」

顔立ちはんなり、声もはんなり。故に自に近い部分が読めないところがままぁある。その上今のような人を食った台詞を良く吐き散らかす。顔と声だけで許されると思ったら大間違いだ。

「博物館の在り方も理解しているよ。その時代に何があったか。どんな役割を果たしたか。其れを十年、百年、千年、其の数多の時代まで繋ぐのが役割だ。でも」

鼻先まで落ちた丸眼鏡の縁を押し上げて、私を射抜く。先程までの飄々とした顔では無い、本来の鋭利な商人の目。

「僕は商人だ。物と人を繋ぐ仲人だ。この子達が幸せだと思う縁を与える為に存在する。

元来、物とは人と共にある。人に役立つ為、人を楽しませる為。だから本来、暗い蔵の中に閉じ込められるのは本望じゃない。この面だって、そうだ。誰かに付けられていた方が生き生きしてる。例え明日、罅が入って使い物にならなくなったとしても……。

其れまでどうにかして、生き長らえさせるのが、人と物の縁を繋ぐのが、僕の役割さね」

そう言って能面を元の袋に戻す。もう外へ出すのは終いだと言うように。

「貴方は学芸員には成れないかもね」

「そりゃ勿論。古美術は大好きだから良く行くし、大好きな場所さ。皮肉だと常常思っているけれど」

昨日から疑問に思っていたんですよ。

博物館に訪れたときに、温度と湿度の話をして、煙管も嫌がるから吸わない。

でも、温度と湿度の設定が不可能な蚤の市に何故参戦するのか。


多分こうだと思うんですよ。

物は使われてなんぼ。

だから人の手で使われてこそ本来の価値がある。

でも其れまで、本来の主に辿り着くまでは、あらゆる事をして生き長らえさせるのではないかと。


本来の目的として、蚤の市の方が比重は大きいと思います。なんせ商人なので。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仲人! なるほど、たしかに。 [気になる点] 蚤の市はお見合い会場か結婚式場、と。 光も大敵と聞きますから、そう言えば、蚤の市って……。言われるまで、あまり疑問に思ってませんでした^ー^;…
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